402 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。第4部《新たなる神話》
34話 わたしとケダモノ
しおりを挟む
出来れば何かカッコイイ技名を付けたかったのですが、そんな余裕もなくわたしの『名も無き一振り』が振り下ろされたのです。
あ!
『名も無き一振り』ってなかなかカッコ良くないですか?
まぁ、兎に角わたしの攻撃は魔神セルジュを叩き斬ったのです。
黒い深淵属性の魔力に晒されたセルジュは屈辱と恐怖と怒りと悲しみとあと少しの寂しさを混ぜた様な顔で消滅して行きました。
そして、セルジュが消滅したせいか、わたしを貫いていた棘も綺麗サッパリ消滅しました。
そうなると、どうなるのか…………
簡単です。
まるで、水道を捻ったかの様に大量の血が滴りわたしの足元に一瞬で血溜まりを作ります。
ああ、せめて夜天のローブの前を閉めていれば……あるいは……
よく分からない事を考えながらわたしは崩れ落ちました。
わたしは弁慶では有りませんからね。
致命傷を受ければ倒れるのは、物の道理と言うものです。
===========================
ユウの戦斧による一撃は邪神の神殿一部ごとセルジュを消し飛ばした。
神殿の壁が消滅した事で空が見えている。
いつの間にか雨は止んでいた様だ。
俺は側にいるユウに視線を移す。
「 ⁉︎ 」
彼女の足元にはその小さな身体に収まっていたなんて信じられ無い程の血が、血溜まりとなっていた。
俺があまりの出血に驚くと、ユウはどさりと崩れ落ちた。
「ユウ!」
俺は直ぐに駆け寄り血溜まりからユウの身体を抱き起す。
あれ程の戦斧を振り回すユウの身体は驚くほど軽かった。
「ユウ!ユウ!おい、目を開けろ!」
ユウの身体を支え、声を掛けるがユウはぐったりと力無く、目を開ける事も無い。
必死で呼びかける俺の肩をポンと叩く手があった。
振り返ると大賢者と呼ばれるイナミと言う男がゆっくりとクビを左右に振った。
それを見た俺は『諦めろ』と言うイナミの意思を理解する。
「そんな…………くそぉ!ユウぅう!!」
ばちん
「うるさいですよ!疲れているのにさっきからギャアギャアと!」
「へ?」
俺はじんじんと痛む頬を抑えながら怒っているユウを見る。
「だから、『そっとして置け』と伝えたのに……」
イナミが呆れた様に呟く。
いや、アレはどう見ても『諦めろ』だったじゃん!
「ってそれより傷は!傷は大丈夫なのか⁉︎」
「え、ちょ、きゃ!」
俺は慌ててユウの服に空いた穴を広げ傷を確認する。
しかし、血で汚れてはいるが、ユウの胸には傷1つ存在しなかった。
「き、傷がない……なんで……」
そう尋ねようとユウの顔を見ると、ユウは顔を真っ赤に染めていた。
俺はその理由を考察する。
仮説1 魔神セルジュの呪いや何かの病気説。
仮説2 逆立ちなどの物理的な理由で頭に血が上った説。
仮説3 俺に惚れた説。
仮説4 羞恥心と怒り説。
ふむ、仮説1のセルジュの呪いや病気の可能性は少ない。
セルジュは既に消滅しているし、ユウに持病が有るとは聞いていない。
次に仮説2も無いな。
ユウの行動は頭に血がのぼる様な物では無かった。
仮説3、今の所これの可能性はかなり高い。
窮地の時に涙を浮かべて身を案じた訳だからな。
それに、共に死線を潜り抜けた男女は結ばれやすいと聞く。
第1候補だ。
さて、正直目を逸らしていたかったが、最後に仮説4について検証しなければならない。
まず、現在の状況を客観的に見てみよう。
小柄な少女(ユウ)を押し倒し、服を破り胸をガン見する男(俺)……
傷を確認する為ならば医療行為だが、ユウの胸には傷1つ無い。
ささやかな膨らみと…………その……小さな蕾が有るだけだった。
俺は状況を打開する方法を求めてイナミの方に視線を移す。
叡智の限りを極めた大賢者は思いっきり視線を逸らしていた。
仕方なく俺はユウの胸に視線を戻す。
せっかくなのでしっかりと拝見しておこう。
毒を食らわば皿までってやつだ。
「この、ケダモノ!!!」
グーパンだった。
この戦いで1番のダメージだった。
あ!
『名も無き一振り』ってなかなかカッコ良くないですか?
まぁ、兎に角わたしの攻撃は魔神セルジュを叩き斬ったのです。
黒い深淵属性の魔力に晒されたセルジュは屈辱と恐怖と怒りと悲しみとあと少しの寂しさを混ぜた様な顔で消滅して行きました。
そして、セルジュが消滅したせいか、わたしを貫いていた棘も綺麗サッパリ消滅しました。
そうなると、どうなるのか…………
簡単です。
まるで、水道を捻ったかの様に大量の血が滴りわたしの足元に一瞬で血溜まりを作ります。
ああ、せめて夜天のローブの前を閉めていれば……あるいは……
よく分からない事を考えながらわたしは崩れ落ちました。
わたしは弁慶では有りませんからね。
致命傷を受ければ倒れるのは、物の道理と言うものです。
===========================
ユウの戦斧による一撃は邪神の神殿一部ごとセルジュを消し飛ばした。
神殿の壁が消滅した事で空が見えている。
いつの間にか雨は止んでいた様だ。
俺は側にいるユウに視線を移す。
「 ⁉︎ 」
彼女の足元にはその小さな身体に収まっていたなんて信じられ無い程の血が、血溜まりとなっていた。
俺があまりの出血に驚くと、ユウはどさりと崩れ落ちた。
「ユウ!」
俺は直ぐに駆け寄り血溜まりからユウの身体を抱き起す。
あれ程の戦斧を振り回すユウの身体は驚くほど軽かった。
「ユウ!ユウ!おい、目を開けろ!」
ユウの身体を支え、声を掛けるがユウはぐったりと力無く、目を開ける事も無い。
必死で呼びかける俺の肩をポンと叩く手があった。
振り返ると大賢者と呼ばれるイナミと言う男がゆっくりとクビを左右に振った。
それを見た俺は『諦めろ』と言うイナミの意思を理解する。
「そんな…………くそぉ!ユウぅう!!」
ばちん
「うるさいですよ!疲れているのにさっきからギャアギャアと!」
「へ?」
俺はじんじんと痛む頬を抑えながら怒っているユウを見る。
「だから、『そっとして置け』と伝えたのに……」
イナミが呆れた様に呟く。
いや、アレはどう見ても『諦めろ』だったじゃん!
「ってそれより傷は!傷は大丈夫なのか⁉︎」
「え、ちょ、きゃ!」
俺は慌ててユウの服に空いた穴を広げ傷を確認する。
しかし、血で汚れてはいるが、ユウの胸には傷1つ存在しなかった。
「き、傷がない……なんで……」
そう尋ねようとユウの顔を見ると、ユウは顔を真っ赤に染めていた。
俺はその理由を考察する。
仮説1 魔神セルジュの呪いや何かの病気説。
仮説2 逆立ちなどの物理的な理由で頭に血が上った説。
仮説3 俺に惚れた説。
仮説4 羞恥心と怒り説。
ふむ、仮説1のセルジュの呪いや病気の可能性は少ない。
セルジュは既に消滅しているし、ユウに持病が有るとは聞いていない。
次に仮説2も無いな。
ユウの行動は頭に血がのぼる様な物では無かった。
仮説3、今の所これの可能性はかなり高い。
窮地の時に涙を浮かべて身を案じた訳だからな。
それに、共に死線を潜り抜けた男女は結ばれやすいと聞く。
第1候補だ。
さて、正直目を逸らしていたかったが、最後に仮説4について検証しなければならない。
まず、現在の状況を客観的に見てみよう。
小柄な少女(ユウ)を押し倒し、服を破り胸をガン見する男(俺)……
傷を確認する為ならば医療行為だが、ユウの胸には傷1つ無い。
ささやかな膨らみと…………その……小さな蕾が有るだけだった。
俺は状況を打開する方法を求めてイナミの方に視線を移す。
叡智の限りを極めた大賢者は思いっきり視線を逸らしていた。
仕方なく俺はユウの胸に視線を戻す。
せっかくなのでしっかりと拝見しておこう。
毒を食らわば皿までってやつだ。
「この、ケダモノ!!!」
グーパンだった。
この戦いで1番のダメージだった。
0
お気に入りに追加
2,354
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
最悪から始まった新たな生活。運命は時に悪戯をするようだ。
久遠 れんり
ファンタジー
男主人公。
勤務中体調が悪くなり、家へと帰る。
すると同棲相手の彼女は、知らない男達と。
全員追い出した後、頭痛はひどくなり意識を失うように眠りに落ちる。
目を覚ますとそこは、異世界のような現実が始まっていた。
そこから始まる出会いと、変わっていく人々の生活。
そんな、よくある話。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜
サメ狐
ファンタジー
———力を手にした少年は女性達を救い、最強の組織を作ります!
魔力———それは全ての種族に宿り、魔法という最強の力を手に出来る力
魔力が高ければ高い程、魔法の威力も上がる
そして、この世界には強さを示すSSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fの9つのランクが存在する
全世界総人口1000万人の中でSSSランクはたったの5人
そんな彼らを世界は”選ばれし者”と名付けた
何故、SSSランクの5人は頂きに上り詰めることが出来たのか?
それは、魔力の最高峰クラス
———可視化できる魔力———を唯一持つ者だからである
最強無敗の力を秘め、各国の最終戦力とまで称されている5人の魔法、魔力
SSランクやSランクが束になろうとたった一人のSSSランクに敵わない
絶対的な力と象徴こそがSSSランクの所以。故に選ばれし者と何千年も呼ばれ、代変わりをしてきた
———そんな魔法が存在する世界に生まれた少年———レオン
彼はどこにでもいる普通の少年だった‥‥
しかし、レオンの両親が目の前で亡き者にされ、彼の人生が大きく変わり‥‥
憎悪と憎しみで彼の中に眠っていた”ある魔力”が現れる
復讐に明け暮れる日々を過ごし、数年経った頃
レオンは再び宿敵と遭遇し、レオンの”最強の魔法”で両親の敵を討つ
そこで囚われていた”ある少女”と出会い、レオンは決心する事になる
『もう誰も悲しまない世界を‥‥俺のような者を創らない世界を‥‥』
そしてレオンは少女を最初の仲間に加え、ある組織と対立する為に自らの組織を結成する
その組織とは、数年後に世界の大罪人と呼ばれ、世界から軍から追われる最悪の組織へと名を轟かせる
大切な人を守ろうとすればする程に、人々から恨まれ憎まれる負の連鎖
最強の力を手に入れたレオンは正体を隠し、最強の配下達を連れて世界の裏で暗躍する
誰も悲しまない世界を夢見て‥‥‥レオンは世界を相手にその力を奮うのだった。
恐縮ながら少しでも観てもらえると嬉しいです
なろう様カクヨム様にも投稿していますのでよろしくお願いします
アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。《サイドストーリー》
はぐれメタボ
ファンタジー
《番外編》
神々の間では異世界転移がブームらしいです。の番外編です。
《マーリンさんの学業奮闘記》
大賢者イナミの弟子、マーリンは師匠の命令でミルミット王国の学院に入学する事になった。
マーリンは、そこで出会った友人達と事件に巻き込まれて行く。
《迷宮都市の盾使い》
ミルミット王国最大の迷宮都市ダイダロスで迷宮に挑む冒険者達と全身鎧を身に付けた謎の冒険者の物語り。
《炎の継承者》
田舎に暮らす少年、カートは憧れの父親の背中を追って成長して行く。
《盃を満たすは神の酒》
エルフのジンとドワーフのバッカスは2人組の冒険者である。
彼等は神が醸造したと言われる伝説の酒を探して旅を続けていた。
そんな彼等が居た帝国の街に、とてつもない数の魔物が迫っていた。
《1人と1振り》
冒険者のヴァインはある日、奇抜な冒険者アークと出会う。
やがて共に旅をする様になった2人はミルミット王国のある街でとある依頼を受ける事になった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる