上 下
397 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。第4部《新たなる神話》

29話 俺と勇者

しおりを挟む
  激しい剣戟の音が響く。
  時折、マーリンの魔法が邪神の動きを阻害する。

  ブォッ!

「ぐっ!」

  邪神が槍を大きく振り、周囲を薙ぎ払う。
  俺とマーリンも一旦邪神から距離を離す。

「がぁ!」

  しかし、邪神はたった一足で俺の懐に飛び込んで来た。

「シールド!」

パリン
「がっは!」

  邪神の蹴りはマーリンの防御魔法を砕いて俺に吹き飛ばす。
  幸い防御魔法で威力が削がれていた為、大きなダメージは無い。
  数メートル先ではマーリンが邪神の攻撃を必死に凌いでいる。

「アビスチェーン」

  マーリンの周囲に魔方陣が現れ、黒い鎖が邪神を巻き取ろうとするが、振るわれる剣にすぐさま断ち切られる。
  
「 ⁉︎ 」

「はは!」

  邪神が剣を振り上げる。
  不味い、間に合わない!
  邪神の剣は、マーリンを両断する様に脳天を目掛けて落とされる。
  
「マーリン!」

  しかし、邪神の剣はマーリンをそれ、すく側の地面を砕いた。

「マーリン、無事か!」

「ええ、大丈夫よ」

「…………運のいい女だ」

  邪神は苛立ちながら言う。
  だが、マーリンはそれに反論する。
  
「偶然なんかじゃ無いわ。
  あれはあんたが外してくれたのよ」

「………………」

「どう言う事だ?」

「あいつの中には2つの魂があるわ。
  1つは邪神の魂、もう1つは勇者ヒロシの魂。
  そして、魔力とは魂から生まれる物。
  魔力を削って行けば邪神の魂の力が低下する。
  そうなれば勇者ヒロシの魂が体の中での主導権をてにする事が出来るはずよ」

「……………………正解だよ、君の言う通りだ」

  邪神が口を開く。
  しかし、さっきまでとは口調が違う。

「あなたは…………勇者様……」

「ああ、君も勇者だろ?
  悪いな、俺達が邪神を倒し切れなかったせいで君達には迷惑をかける。
  今は弱った邪神の魂を抑えているが長くは持たない。
  身体の自由も完全に奪い取る事が出来ない。
  頼む、君達の力で邪神を…………

  ちっ、余計な真似を」

  
   どうやら魂の主導権が邪神へと戻った様だ。
  しかし、このまま魔力を削れれば邪神の魂を消滅させられるかも知れない。
  
「マーリン……」

「ええ、やるわよ!」

「はっ!」

  俺は速度を重視しし、鋭く剣を突き出す。
  更に挟み込む様にマーリンが魔法を打ち込む。
  そのまま更に数撃、マーリンと連携して攻撃を放つ。
  邪神はそれを躱そうとするが、勇者ヒロシが邪魔をしているのか攻撃はことごとく邪神に当たる。

「アビスチェーン」

 「くっ!」

  咄嗟に拘束魔法を避けようとする邪神だったが、不意に邪神の動きが止まりマーリンの魔法で拘束される。

「勇者様は影からずっとフォローしてくれていたのよ。
  その証拠に私たちの仲間は誰もまだしんでないわ」

  俺は素早く視線を巡らせる。
  仲間達は確かに生きている。
  直ぐに動く事は難しいかも知れないが、みな意識はある。
  ユウさんから貰ったポーションの効果で回復していたのだろう。

「後は邪神の魂にダメージを与え、勇者ヒロシの魂を活性化すればいい。
  エリオ、私たちの精霊の力をあなたに託すわ」
  
  マーリンが、ソフィアが、ジンがバッカスが、ランスが俺に手を翳す。
  そして、俺の身体に今まで感じたことの無い力が流れ込んで来た。

「これが……」

「そう、それが全ての精霊の力、真の勇者のちからだよ」

  邪神を抑えた勇者ヒロシが告げる。

  俺は剣を掲げるとそこに俺とみんなの精霊の力を剣に流し込む。
  6色の光を宿した剣を振りかぶる。

「迷わす振り下ろすんだ!

  ………やめろ!!!」

「はぁぁあ!!」

  邪神は剣の光の中へと消えて行く。

「がぁぁぁぁあ!!!!」

  光が治るとそこには倒れている勇者の身体があるだけだった。

  俺はちらりとマーリンみる。
  すると……

「大丈夫、勇者ヒロシの魂だけが残っているわ」

「邪神の魂はどうなったんだ?」

「もう、この世界に邪神の魂に火を受け入れられる器なんて無いでしょう。
  私たちの勝利よ!」

  俺とマーリンは勇者ヒロシを安全な位置まで運ぶと、まだ動けない仲間達を助けに向かうのだった。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】 (大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話) 雷に打たれた俺は異世界に転移した。 目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。 ──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ? ──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。 細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。 俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。 それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。 高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕! いつも応援やご感想ありがとうございます!! 誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。 更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。 書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。 ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。 イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。 引き続き本作をよろしくお願い致します。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...