神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。第4部《新たなる神話》

11話 わたしと卑怯者

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  走り寄るわたし達に、神殿の前にたむろしていた魔物達が反応して襲いかかって来ました。

「くっ!」

「エリオさん!」

  剣を抜こうとしていたエリオさんを止めます。
  こんな序盤で勇者に消耗されては困ります。
  わたし達が建てた作戦は、邪魔者を援軍に来た者が相手をして、なるべく無傷の勇者パーティを邪神の下に送り込む……名付けて『ここは俺に任せて先に行け!作戦』です。
  最初はわたしもこれだけ粒の揃った戦力が有るのだから、邪神の神殿を包囲して少しずつ敵の戦力を削り、補給線を絶った後、弱った所で殲滅する『数の暴力作戦』を立案したのですがシルバリエさんに反対されました。
  何でも、邪神は封印が解除されてもすぐに100%の力を取り戻す訳では無いそうです。
  封印が解除されてからゆっくりオーブの魔力を吸収して行くらしく、今なら弱った邪神と戦える為、なるべく早く戦いたいのです。
  
ドガッ!
  
  エリオさんに迫った魔物を突入班の冒険者が食い止めます。
  ここは彼に任せてわたし達は神殿に向かいましょう。
  その後も魔物を冒険者や騎士、傭兵などの援軍の皆さんが戦いを引き受けてくれます。
  そしてわたし達は、人数を半分くらいに減らしながら邪神の神殿へと到達しました。

「誰か、殿を!」

  わたしが叫ぶと、数人の人影が飛び出し、神殿の入り口に陣取りました。

「ユウちゃん、ここはあたし達に任せてちょうだい!」

「あたし達がいる限り、魔物は1匹足りとも通しはしないわ!」

「さぁ、ユウちゃんも勇者くんも急いで!」

「アイゼンさん、ドミニクさん、トロンさん…………お任せします!」

  わたしは《無垢なる愛》の3人の野太い声を背に受けて進みます。
  危うく彼ら……彼女らに『無理をしないでください』と言いそうになりました。
  それを口に出す事は覚悟を決めた漢……オネェさん達への侮辱です。
  薄暗く、調度品なども無い廊下を進むと廊下が左右に分かれている場所に出ました。
  RPGならどちらかに宝箱がある様な分岐です。
  しかし、わたし達は既にルートを知っています。
  分岐で立ち止まったわたし達は、当初の予定通り二手に分かれました。
  邪神討伐に向かう勇者パーティやクルスさん、リゼさん達、そして、邪神に魔力を供給しているオーブを使った魔方陣を停止させるわたしやザシさん、イナミさん達です。

「へへ、そろそろ俺たちの出番だな!」

「腕がなるわね」

  わたしの後ろから2人の冒険者が声を掛けて来ました。

「スタロンさん、リルマさん……あれ?
  今までいましたったけ?」

「ひでぇ」

「居たわよ、後ろに」

  スレイプニールでの移動中に出会った冒険者でした。
  さっきまで居たような居なかったような……視界に入ってなかったのでしょう。
  存在感の薄い人っていますよね。

「止まって下さい!」

  廊下から少し広くなっている場所に入った所で皆さんを止めます。
  少し先には、1人の魔族が居ます。

「ザシさん、彼は?」

「パウロだ。
  魔王グレースの配下で1番腕が立つ」

「具体的には?」

「俺やユウと同格って所だ」

「準魔王クラスって事ですか」

  パウロはわたし達がヒソヒソと話している間もただ静かにこちらを見ています。

「ははは、ここは俺達に任せてくれ!」

「わたし達に掛かればイチコロよ!」

「あ、待って下さい!」

  わたしが止めるのも間に合わずスタロンさんとリルマさんは飛び出して行ってしまいました。
  まぁ、彼らもAランク冒険者、そんなに簡単に……

スパン!

「ええ!」

  一瞬で首を飛ばされました!
  2人ともです!
  パウロはスタロンさんとリルマさんの死体を一瞥した後、ゆっくりとこちらへと近づいて来ます。
  流石に魔物とは比べ物にならないプレッシャーを感じますね。
  わたし達も武器を構えます。

「 ⁉︎ 」

  しかし、パウロは急に目を見開くとその場を跳びのき距離を取りました。
  そして先程までパウロがいた場所には槍と剣が振り降ろされています。
  それらの武器を手にしているのは……

「ど、どうなっているのですか?」

「なんだ⁉︎アンデッドか?」

  武器を手にしているのは首のないスタロンさんとリルマさんです。
  混乱するわたし達を他所に、パウロは冷静に周囲にを見回していました。
  その頬からは赤い血がだくだくと流れています。
  おかしいですね。
  確かに彼はスタロンさんとリルマさんの死体が振るった槍と剣を避けたはずなのですが?
  パウロは頬の血を拭いながら言います。

「くだらん茶番だ。
  戦士なら堂々と姿を見せたら如何だ、この卑怯者め!」

  何処からともなくパウロの言葉に答える声が聞こえます。

『ははは、卑怯?
  結構な事だ!
  何故ならば、我輩は誇り高い戦士では無く……』

  首の無いスタロンさんの身体が一瞬、霧に包まれました。
  霧が晴れた時にそこに居たのは……

「誇り高き、怪盗なのである!」
  
  怪人108面相へんたいでした。
  
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