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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》
22話 内通者 リゼッタ・A・ドラゴン
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ギンッ!
ギンッ!
ギギンッ!!
夜の帳が下り、周囲に布陣していた兵士達が自陣へと戻った後、戦場の中心ではリゼッタとグレースの戦いが今だに続いていた。
「はっはっは、至高の冒険者よ、これならばどうだ!」
グレースは鋭く剣を振る。
その攻撃を僅かに身を引いて避けたリゼッタだったが、胸の鎧を切り裂かれてしまう。
リゼッタは、もはや本来の目的を果たせなくなった鎧を引き千切る様に投げ捨てる。
「面白い事をするわね」
グレースは、剣に込めていた魔力を操作して一瞬の間だけ魔力の刃を作り出した。
これにより、グレースの剣は擬似的に刀身が伸び、躱した筈のリゼッタの鎧を斬り裂いたのだ。
「ふふふ、これからが本番さ」
「はぁ、私はそろそろ帰って休みたいんだけどね。
夜更かしはお肌に悪いのよ?」
「そいつは申し訳ない。
だが、今日の所は俺に付き合って……な、なんだ⁉︎」
言葉の途中、グレースの足元に魔方陣が現れる。
「どうなっているんだ⁉︎」
戸惑うグレースだったが、足元の魔方陣は御構い無しに発光する。
ひときわ強い光を放った後、其処にはリゼッタ1人が取り残されていた。
「………………」
リゼッタはしばらく剣を構えていたが、特に何も起こらない事を確認すると剣を納めた。
「今のが例のスクロールによる強制転移かしら?
という事はこの戦争も大詰めね」
小さく呟くとリゼッタは連合軍の陣地へと戻って行った。
翌朝、リゼッタの下に各国の指揮官がやって来た。
「おはようございます、リゼッタ殿。
何やら今朝は妙な雰囲気ですな」
「しかり、昨日ならばもう敵軍も布陣して、攻め入る姿勢を見せていた時間、こうも静かだと、逆に不気味に思いますな」
「…………そうね」
日が昇っても魔族軍が攻め入る様子がない事を不思議に思う指揮官達におざなりな返事を返したリゼッタだったが、この隙に攻め込むべきだと言う指揮官の意見を却下する。
「相手に動きが見えない内は無理に攻め込むのは危険よ。
防衛の陣を敷いて待機してちょうだい。
敵が攻めて来たら防御、それ以外は待機よ」
「リゼッタ殿はどうされるのです?」
「私はミノス砦に向かうわ、いくつか報告をしなければならないし」
そう言うとリゼッタは、指揮官の1人に緊急時の前線の指揮を預け、数人のお供を引き連れて後方にあるミノス砦へと向かって行った。
ミノス砦に到着するとリゼッタは国王達に面会を要請した。
すぐに許可が出た為、リゼッタと副官のクルス、そして、共について来たエルフの魔法使いと獣人の戦士の4人がミノス砦の廊下を進む。
「おや、リゼさんではないですか」
前方から歩いて来た黒髪の少女が親しげに近寄って来た。
「あら、ユウちゃんも砦にきていたのね」
「はい、クルスさんも無事で良かったです」
「ははは、僕はリゼッタさんの指示で雑用をこなす係ですからね。
あまり危険な仕事のしないのですよ」
クルスも数日ぶりに会った恩師と会話を交わす。
「ユウ先生もこれから面会ですか?」
「はい、何やら今朝から魔族の様子がおかしいですからね。
一応、雇い主に報告をと思いまして」
「そう、なら私達と一緒に行きましょ」
「はい」
リゼッタ達はユウと連れ立って謁見の間……そう呼ぶには少々無骨な広間に足を踏み入れる。
其処には半円状に並べられた席に各国の代表が座り、リゼッタ達を出迎えた。
「リゼッタよ。
此度の活躍、大義である。
して、今日はどの様な要件で来たのだ?」
半円の中心に座る連合の盟主であるグリント帝国の皇帝ハイランドが尋ねる。
すると、リゼッタは1歩前に踏み出すと、まるでそれが格式高い正式な所作であるかの様に優雅に剣を引き抜いた。
「はい、本日は…………この戦争を終わらせに参りました」
輝く美しい剣を手にしたSランク冒険者は楽しそうに、ニヤリと笑った。
ギンッ!
ギギンッ!!
夜の帳が下り、周囲に布陣していた兵士達が自陣へと戻った後、戦場の中心ではリゼッタとグレースの戦いが今だに続いていた。
「はっはっは、至高の冒険者よ、これならばどうだ!」
グレースは鋭く剣を振る。
その攻撃を僅かに身を引いて避けたリゼッタだったが、胸の鎧を切り裂かれてしまう。
リゼッタは、もはや本来の目的を果たせなくなった鎧を引き千切る様に投げ捨てる。
「面白い事をするわね」
グレースは、剣に込めていた魔力を操作して一瞬の間だけ魔力の刃を作り出した。
これにより、グレースの剣は擬似的に刀身が伸び、躱した筈のリゼッタの鎧を斬り裂いたのだ。
「ふふふ、これからが本番さ」
「はぁ、私はそろそろ帰って休みたいんだけどね。
夜更かしはお肌に悪いのよ?」
「そいつは申し訳ない。
だが、今日の所は俺に付き合って……な、なんだ⁉︎」
言葉の途中、グレースの足元に魔方陣が現れる。
「どうなっているんだ⁉︎」
戸惑うグレースだったが、足元の魔方陣は御構い無しに発光する。
ひときわ強い光を放った後、其処にはリゼッタ1人が取り残されていた。
「………………」
リゼッタはしばらく剣を構えていたが、特に何も起こらない事を確認すると剣を納めた。
「今のが例のスクロールによる強制転移かしら?
という事はこの戦争も大詰めね」
小さく呟くとリゼッタは連合軍の陣地へと戻って行った。
翌朝、リゼッタの下に各国の指揮官がやって来た。
「おはようございます、リゼッタ殿。
何やら今朝は妙な雰囲気ですな」
「しかり、昨日ならばもう敵軍も布陣して、攻め入る姿勢を見せていた時間、こうも静かだと、逆に不気味に思いますな」
「…………そうね」
日が昇っても魔族軍が攻め入る様子がない事を不思議に思う指揮官達におざなりな返事を返したリゼッタだったが、この隙に攻め込むべきだと言う指揮官の意見を却下する。
「相手に動きが見えない内は無理に攻め込むのは危険よ。
防衛の陣を敷いて待機してちょうだい。
敵が攻めて来たら防御、それ以外は待機よ」
「リゼッタ殿はどうされるのです?」
「私はミノス砦に向かうわ、いくつか報告をしなければならないし」
そう言うとリゼッタは、指揮官の1人に緊急時の前線の指揮を預け、数人のお供を引き連れて後方にあるミノス砦へと向かって行った。
ミノス砦に到着するとリゼッタは国王達に面会を要請した。
すぐに許可が出た為、リゼッタと副官のクルス、そして、共について来たエルフの魔法使いと獣人の戦士の4人がミノス砦の廊下を進む。
「おや、リゼさんではないですか」
前方から歩いて来た黒髪の少女が親しげに近寄って来た。
「あら、ユウちゃんも砦にきていたのね」
「はい、クルスさんも無事で良かったです」
「ははは、僕はリゼッタさんの指示で雑用をこなす係ですからね。
あまり危険な仕事のしないのですよ」
クルスも数日ぶりに会った恩師と会話を交わす。
「ユウ先生もこれから面会ですか?」
「はい、何やら今朝から魔族の様子がおかしいですからね。
一応、雇い主に報告をと思いまして」
「そう、なら私達と一緒に行きましょ」
「はい」
リゼッタ達はユウと連れ立って謁見の間……そう呼ぶには少々無骨な広間に足を踏み入れる。
其処には半円状に並べられた席に各国の代表が座り、リゼッタ達を出迎えた。
「リゼッタよ。
此度の活躍、大義である。
して、今日はどの様な要件で来たのだ?」
半円の中心に座る連合の盟主であるグリント帝国の皇帝ハイランドが尋ねる。
すると、リゼッタは1歩前に踏み出すと、まるでそれが格式高い正式な所作であるかの様に優雅に剣を引き抜いた。
「はい、本日は…………この戦争を終わらせに参りました」
輝く美しい剣を手にしたSランク冒険者は楽しそうに、ニヤリと笑った。
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