352 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》
8話 リュウガ王国戦士団剣術指南役 ヤナギ
しおりを挟む
黒い少女が魔族を次々と葬って行く姿を視界の端に捉える。
「くっくっく、嬢ちゃんは大暴れしとるのぅ」
その姿にニヤリと口角を上げたのは、鱗の色が濃くなった老いたリザードマン、ヤナギだった。
ヤナギの故郷であるリュウガ王国は最近まで大陸の国家とは正式に国交を結んではいなかった。
しかし、最近ではミルミット王国を中心に各国と細々とした交流を持つ様になっていた。
そこにやって来たのがこの戦争である。
リュウガ王国は地形的に孤立している。
その為、魔族に攻め込まれる可能性は低い。
だが、もし大陸の国家が敗北すれば、リュウガ王国も安全とは言えなくなってくる。
そして、感情的な事を言えば、以前魔王の襲撃を受けた報復をしたいと言う思いもなくは無い。
「死ね、トカゲ野郎!」
魔族の指先からファイヤーボールが放たれ、ヤナギに迫る。
ヤナギはぬらりと腰に佩びた刀を抜く。
まるで水が滴る様な妖艶な光宿した刀でファイヤーボールを斬り裂く。
「獅子戸流、炎刃」
斬り裂かれ、消滅する筈だった炎は新たに刃を作り出しファイヤーボールを放った魔族を焼き尽くす。
「ぬぉぉお!」
大きなウォーハンマーを振り上げた魔族が迫ってくる。
「ふむ、儂の相手はハズレばかりじゃな」
ヤナギは刀を鞘に納め、腰を落とす。
「獅子戸流、疾風」
ウォーハンマーを持った魔族は一瞬にしてヤナギを見失ってします。
つい先程まで目の前に居た筈のリザードマンの掻き消えてしまったのだ。
「な、何処に逃げた!」
「逃げてなどおらんよ」
「な、貴様、いつの間に」
ウォーハンマーを持った魔族はいつの間にか自分の背後に移動していたリザードマンに驚愕する。
するとリザードマンは手にしていた刀を再び鞘に落とす。
すると、魔族に視線も向けずに歩き去ろうとした。
「貴様、何処に行くつもりだ!」
「煩いのぅ、死体が喋るで無いわ」
「へ……」
ウォーハンマーが音を立て地面に落ちる。
魔族が自分の足元に転がる愛用のウォーハンマーを視線を遣る。
そこには苦楽を共にしたウォーハンマーとウォーハンマーを握った自分の右手が転がって居た。
「え……」
ドサッ
更に視線をずらすとすぐ近くに自分の左腕が落ちている。
「あ……」
そして、魔族の身体はバラバラに崩れ落ちて行った。
「う~む、折角の大戦、出来れば儂ももう少し手応えの有る奴と殺りたいんじゃが…………目ぼしい奴は嬢ちゃんに取られてしまったのぅ」
ヤナギはそんな魔族に興味も向けずに次の相手を探し始めた。
ぶぉぉお!!
大きな笛の音が響く。
「なんじゃ、もう撤退か」
既に、2度目の戦いが始まった数時間が経っていた。
辺りはすぐに暗くなる。
此処からは夜襲への備えと休息の時間となる。
日が落ちてしまっては敵も味方も分からなくなってしまう。
魔族の陣地からも笛の音が聞こえると、魔族軍も波が引くように退がって行った。
「もし、嬢ちゃんに会えたら明日は儂にも敵を回す様に頼んでみるかのぅ?」
ヤナギも自らの属するリュウガ王国戦士団の陣地へと戻って行くのだった。
「くっくっく、嬢ちゃんは大暴れしとるのぅ」
その姿にニヤリと口角を上げたのは、鱗の色が濃くなった老いたリザードマン、ヤナギだった。
ヤナギの故郷であるリュウガ王国は最近まで大陸の国家とは正式に国交を結んではいなかった。
しかし、最近ではミルミット王国を中心に各国と細々とした交流を持つ様になっていた。
そこにやって来たのがこの戦争である。
リュウガ王国は地形的に孤立している。
その為、魔族に攻め込まれる可能性は低い。
だが、もし大陸の国家が敗北すれば、リュウガ王国も安全とは言えなくなってくる。
そして、感情的な事を言えば、以前魔王の襲撃を受けた報復をしたいと言う思いもなくは無い。
「死ね、トカゲ野郎!」
魔族の指先からファイヤーボールが放たれ、ヤナギに迫る。
ヤナギはぬらりと腰に佩びた刀を抜く。
まるで水が滴る様な妖艶な光宿した刀でファイヤーボールを斬り裂く。
「獅子戸流、炎刃」
斬り裂かれ、消滅する筈だった炎は新たに刃を作り出しファイヤーボールを放った魔族を焼き尽くす。
「ぬぉぉお!」
大きなウォーハンマーを振り上げた魔族が迫ってくる。
「ふむ、儂の相手はハズレばかりじゃな」
ヤナギは刀を鞘に納め、腰を落とす。
「獅子戸流、疾風」
ウォーハンマーを持った魔族は一瞬にしてヤナギを見失ってします。
つい先程まで目の前に居た筈のリザードマンの掻き消えてしまったのだ。
「な、何処に逃げた!」
「逃げてなどおらんよ」
「な、貴様、いつの間に」
ウォーハンマーを持った魔族はいつの間にか自分の背後に移動していたリザードマンに驚愕する。
するとリザードマンは手にしていた刀を再び鞘に落とす。
すると、魔族に視線も向けずに歩き去ろうとした。
「貴様、何処に行くつもりだ!」
「煩いのぅ、死体が喋るで無いわ」
「へ……」
ウォーハンマーが音を立て地面に落ちる。
魔族が自分の足元に転がる愛用のウォーハンマーを視線を遣る。
そこには苦楽を共にしたウォーハンマーとウォーハンマーを握った自分の右手が転がって居た。
「え……」
ドサッ
更に視線をずらすとすぐ近くに自分の左腕が落ちている。
「あ……」
そして、魔族の身体はバラバラに崩れ落ちて行った。
「う~む、折角の大戦、出来れば儂ももう少し手応えの有る奴と殺りたいんじゃが…………目ぼしい奴は嬢ちゃんに取られてしまったのぅ」
ヤナギはそんな魔族に興味も向けずに次の相手を探し始めた。
ぶぉぉお!!
大きな笛の音が響く。
「なんじゃ、もう撤退か」
既に、2度目の戦いが始まった数時間が経っていた。
辺りはすぐに暗くなる。
此処からは夜襲への備えと休息の時間となる。
日が落ちてしまっては敵も味方も分からなくなってしまう。
魔族の陣地からも笛の音が聞こえると、魔族軍も波が引くように退がって行った。
「もし、嬢ちゃんに会えたら明日は儂にも敵を回す様に頼んでみるかのぅ?」
ヤナギも自らの属するリュウガ王国戦士団の陣地へと戻って行くのだった。
0
お気に入りに追加
2,355
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる