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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》

3話 名誉兵士長ルドベキア・ブルー

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  トリス王国の前戦士長であるルドベキアは国王が死兵を率いて魔物の足止めに向かう事を知った。
  するとルドベキアはかつて使用していた武具を取り出し身に付けると敬愛する国王であり、自身の親友でもあるサザンカの下に急いだ。

  サザンカと合流したルドベキアは兵達と共に戦場となる街の門へと向かっていた。
  門には防衛の為のバリスタや砲が用意されている。
  それらを使用すれば数で圧倒的に劣る状況でもある程度の足止めが可能だと考えたのだ。
  城を出て門までの道をゾロゾロと歩いて行く。
  城に有った馬車や馬、騎獣などは王命により、全て民の避難の為に使われている。
  その為、国王であるサザンカを含め皆徒歩での移動であるがルドベキアはいい機会だとサザンカと旧交を温めていた。 
  その時、避難を急ぐ民とすれ違いながら門へと向かうルドベキア達の前に複数の人影が飛び出して来た。

「何者だ!」

  ルドベキアは、咄嗟にサザンカの前に出て背中に庇うと飛び出して来た者達に誰何する。
  飛び出して来た者達はルドベキアとサザンカの前にひざまづくとこうべを垂れた。
  そして、先頭でひざまづく老婆が口を開く。

「私はモルドバと申します。
  サザンカ国王陛下、どうか直言する事をお許し下さい」

「な!」

  ルドベキアは腰の愛剣を引き抜いた。
  国王に対して直言するなど、その場で斬り捨てられてもおかしくない不敬である。
  しかし、剣を手にしたルドベキアをサザンカは手を差し出して止めた。

「よい、モルドバよ、許す、申してみよ」

「ありがとうございます。
  サザンカ国王陛下が兵士を率いて魔物の足止めを行うという事を耳に致しました。
  どうか、そこに私どもを加えて頂きたいのです」

「なに⁉︎」

  ルドベキアは驚きの声を上げた。  
  自分達は死兵である。
  どれ程うまく事が運んだとしてもまず間違いなく死ぬ事になる。
  老婆はそこに加えて欲しいと言って来たのだ。
  驚いていたルドベキアだったが、サザンカはいつもの彼らしくなく冷静に問いかける。

「モルドバよ、お主達の家族はどうしたのだ?」

「家族は既に避難させました。
  老いた私どもでは家族の足手まといと成ります。
  ならば、少しでも家族が逃げる時間を作りたいのです」

  モルドバの背後に居る者達を見ると全員が年老いた老人だった。

「ワシはお主らを守る事は出来ぬぞ?」

「我らは既に十分生きました。
  それに、我らは皆元冒険者、決して足手まといには成りません」

「褒美は用意出来ぬぞ?」

  「家族を逃す事が出来れば望む物は有りません。
  陛下と共に戦った栄誉が有れば十分でございます
  この身、盾にでも囮にでもお好きにお使い下さい」

  モルドバの言葉にサザンカは少し考えると頷いた。

「良かろう、ワシと共に来る事を許す。
  共に戦おう」

  サザンカが許可を出すとモルドバ達は喜んで隊列に加わった。
  その後もモルドバの様にやって来た老人を仲間に加えたり、血気盛んな若者を追い返したりしながら門へと到着した。
  門の前の広場に布陣して衛兵の詰所を臨時の司令室として使用する。
  ルドベキアとサザンカが話し合い兵の配置を決めていると1人の兵士が報告にやって来た。

「陛下、所属不明の武装集団が広場へと布陣しております」

「なんじゃと?」

「武装集団……冒険者パーティか?」

「いえ、もっと大規模な集団です。
  人数は100人以上、秤と盾の紋章を掲げております」

「秤と盾か……知らぬ紋章だな」

「広場へ布陣しているという事は友軍だろうか?」

「おそらくは…………陛下、私はその集団と接触して参ります」

「うむ、気をつけるのだぞ」

「はっ」

  司令室を出たルドベキアは報告に来た兵士と共に武装集団の方へ歩いて行く。
  広場の端には10台以上の馬車が有り、武装した者達が忙しそうに陣地を設営している。

「見た所、傭兵の様だな」

  傭兵は様々な依頼を幅広く請け負う冒険者とは違い護衛や防衛などを専門に受ける者達の事だ。
  個人として強さを求められる冒険者とは違い、傭兵は集団としての強さを求められる。
  そんな、傭兵団の1人であろう男に話し掛ける。

「すまぬ、ワシはトリス王国名誉兵士長のルドベキアと申す。
  そなたらが何者なのかを聞きたい」

「え⁉︎、あ~、えっと、す、すいやせん。
  あっしは田舎の生まれでこんな偉い人への口の利き方も知らねぇんでやすが……」

「気にする事はない。
  それで、そなたらは何者なのだ?」

「へい、あっしらは聖銀傭兵団でやす」

「聖銀傭兵団?」

  有名な傭兵団はいくつか知っているが、聖銀傭兵団とは聞いた事がない名前だった。
  
「へへ、最近結成した傭兵団なんで、ダンナが知らねぇのは当然でやす。
  すぐに団長を呼ぶんで後は団長と話してくだせぇ」

  男はそう言うと大きな天幕の方へと駆けて行った。
  しばらく待っていると男は立派な鎧を身に付けた偉丈夫を連れて戻って来た。

「お初にお目に掛かります、兵士長殿。
  陣地の設営の指示の後、ご挨拶に向かうつもりだったのですが、お手を煩わせて申し訳有りません」

  偉丈夫はまるで貴族の様に優雅に頭を下げる。
  とても傭兵団の団長とは思えない紳士たった。

「いえ、こちらこそ突然申し訳ない。
  私は名誉兵士長のルドベキアと申す」

「私は聖銀傭兵団団長、バルバロッサ・ブリッツと申します」
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