神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

文字の大きさ
上 下
333 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

138話 敵対

しおりを挟む
「な、なんじゃ!」

「外が騒がしいぞ」

  バッカスとジンも目を覚ました様だ。

「何か有ったみたいだ。
  魔物の襲撃かも知れない、外に出よう」

「うむ、急ぐぞ」

  俺達は手早く武装するとあてがわれた宿の部屋から飛び出した。
  すると、時を同じくして2つ向こうの部屋からも2人の人物が飛び出してきた。

「マーリン、ソフィア!」

「あんた達も悲鳴を聞いたのね」

「ああ、何が有ったかはわからないが、急ごう」

  俺達は階段を駆け下りて宿のロビーにでる。
  するとカウンターでは女性と子供を背に庇った宿の主人と従業員の男性が持ち慣れないであろう剣を手にして居た。

「ご主人、何が有ったんだ!」

「お、お客さん!
  な、何が有ったのかは分かりません。
  朝食の用意をして居たら外から悲鳴と叫び声が聞こえて……
  これは只事では無いと思い、妻と子供、従業員を集めたのです」

「そうか、俺達は外を見てくる。
  町に魔物が入り込んだのかも知れない」

「お、お気を付け下さい」

「ああ、ご主人達も気を付けて」

  俺達は宿の入り口から外を伺い、近くに変わったことは無いと確認すると、悲鳴が聞こえてくる方へと走り出した。


  まだ薄暗い町を走る。
  すると目の前の建物の角から男が飛び出して来た。
  反射的に武器を抜いた俺達だったが、その男はどう見ても只の一般人にしか見えなかった。
  そして、その男を追う様に更に2人、角から飛び出して来た。
  追われていた男は背後から剣を突き立てられてその場におたれ込む。
  地面に横たわった身体から赤い血が拡がって行き、大きな血溜まりを作り上げた。
  男を殺した2人は男の背中から剣を引き抜き、こちらに視線を向けて来た。
  俺達は直ぐに武器を構えなおす。
  奴らがこの騒ぎの犯人だろう。
  褐色の肌と額の小さな角、素性や目的を聞くまでも無い。

「ん? 見ろよ、あいつらの右腕」

「おいおい、マジかよ。
  あれが噂の精霊の紋章か?」

  2人の魔族は剣を片手にこちらに近づいて来る。

「あいつらを殺せば俺ら、大手柄じゃね?」

「勇者なんか殺した日には次期魔王だぜ」

  戦闘中にも関わらず、笑いながら談笑する2人の魔族。
  俺達は先制攻撃を仕掛ける。

「エアスラッシュ」

  マーリンの風属性魔法で生み出された巨大な風の刃が魔族の下へと疾る。
  
「「⁉︎」」

  風の刃を避けた魔族は剣を手に向かってくる。
  ジンが放つ矢を斬り払い剣を振り上げる。
  その剣を俺とソフィアが受け止める。
  背後から飛び出したバッカスが、俺と鍔迫り合っていた魔族に戦鎚を振る。

「ぐっ!」

  戦鎚を受けた魔族は、ソフィアと鍔迫り合っていた魔族を巻き込んで隣の建物に叩きつけられる。

「アビスランス」

  詠唱を省略した為か以前見た物よりも小さな黒い槍が魔族に向かう。

「うお!」

「がぁ!」

  マーリンの魔法が魔族の1人を貫いた。
  しかし、1人はギリギリで躱した。

「ちっ!」

  己の不利を悟った魔族は踵を返して走り出した。
  しかし、その足をジンの矢が貫く。

「ぐあ!」

  その場に転がった魔族に剣を振り上げる。

「ま、待て、待ってくれ!
  こ、降参だ、投降する!」

  両手を上げてそう叫ぶ魔族に、俺は剣を止める。

「馬鹿が!」

  魔族は俺を突き飛ばし距離を取ると、手首に仕込んでいた煙玉を使用し、煙に紛れて逃げ出した。
  
「くっ!」

「何やってんのよ!」

「すまん」

  不味い、取り逃がしてしまった。

「魔族は奴らだけでは無いみたいだぜ」

  ジンの言葉に周囲の様子を見ると、彼方此方から悲鳴や怒号が聞こえてくる。
 
「とにかく、近くから行きましょう!」

「ああ、虱潰しに魔族を叩くぞ!」

  俺達は騒がしい方へと走り出した。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...