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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

135話 完成した薬

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  リゼさんと別れたわたしは、王宮の調剤室を借りて薬を作りました。
  世界樹の果実とエンシェントドラゴンの血はすでに有る程度の処理を済ませてあります。
  後は王国が用意してくれた素材の処理と調合です。

「おお、こんな希少な素材を高品質で用意するとは驚きました」

「事情が事情ですからね。
  各国に勇者の存在を公表して協力を求めたんですよ」

「各国の協力もあり、素材は直ぐに集まりましたわ」

  レオさんとシアさんが、現在の人間側の情勢を説明してくれます。
  わたしが思っていたよりも、人間の国々は団結しているみたいです。

「勇者の情報と共に、リゼッタ殿からの魔族の情報も伝えてある。
  すでに各国と連合を組むことが決まっていて、今後国民への通知、人類国家連合軍の編成となるでしょう」

「確か、後1年でしたね?」

「はい、時間は有りませんがこの戦争で敗北すれば世界は邪神の物となってしまいますわ」

「そうですね。
  それを防ぐにはエリオさん達の力が必要なんですね」

  準備を終えたわたしは魂の傷を治す治療薬の調合を始めました。





  わたしがミルミット王国に戻って来てから10日程、ようやく薬が完成しました。
  寝かせたり、抽出したりとやたら時間のかかる薬です。

「さぁ、エリオさん、グイッと飲んで下さい」

  グツグツ

  わたしは完成したばかりの薬をエリオさんの前に置きました。

  ポコポコ

「…………あ、あの……ユウさん……なんだかコレ沸騰しているみたいなんですが?」

  エリオさんが薬の入ったカップを見ながら言います。

  ジュルジュル

「熱くは無いですから大丈夫ですよ………………多分」

  フルルル

「ユウ先生、薬の色が紫から赤に変わりましたよ!」

「照れているのですよ」

  ウネウネ

「ユウさん、カップから触手の様な物が⁉︎」

「活きが良いですからね」

「「「「…………………」」」」

「活きが良いですからね」

  大事な事では有りませんが一応2回言いました。

「さぁエリオさん、漢なら覚悟を決めてグイッと!」

「覚悟とか言っちまっとるぞ、薬師殿」

「嬢ちゃん、この薬本当に大丈夫なのか?」

  ジンさんの言葉にわたしは自信を持って答えます。

「大丈夫ですよ。
  この薬を飲めば『予想外に重傷になったささくれ』や『タンスの角にぶつけた足の小指の痛み』から、『魂の傷』までスッキリ治ります」

  わたしは自信満々に胸を張りました。

「効果は保証します!」

「…………味は?」

「…………効果は保証します」

  目?
  反らせましたよ?

「ええい!」

  覚悟を決めたエリオさんは薬で満たされたカップを一気に煽りました。
  漢ですね。
  わたしならあんな気持ちの悪い物は絶対に飲みたく有りません。
  
「ど、どう?」

  マーリンさんが青い顔をしたエリオさんに尋ねます。

「甘くて苦くて酸っぱくて辛い。
  ヌメヌメだけどサラサラしてて時々動く」

「…………不味そうね」

「…………後ほんのりイチゴ味だ」

  この後、検査の結果エリオさんは完全に回復していることがわかると、最後の仲間を探しに直ぐに旅立ってしまいました。
  わたしもリリの待つガストの街に戻るとしましょう。


===========================


「シルバリエ様、ただいま戻りました」

「クルスか、御苦労だったな。
  首尾はどうだ?」

「はっ!例の指輪はリゼッタ殿を介して勇者の手元に渡りました」

「そうか、人間側の動きは?」

「今はまだ民草にまでは戦争の件は伝わっていません。
  しかし、連合が結成されれば、民に周知され、直ぐにでも軍の編成が始まるでしょう」

「わかった、ザジ」

「はっ」

  シルバリエは背後に控えていたザジを呼ぶ。

「レグルスとギザを呼べ」

「畏まりました」

  ザジは1度退室すると2人の魔族を連れて戻って来た。

「お呼びでございますか、シルバリエ様」

  この2人はシルバリエの配下では無い。
  現在、シルバリエは魔族軍の総司令官として神の砦を守るセルジュ以外の魔王を含む全軍の指揮権を持っている。
  勿論、他の魔王はあくまで同格、命令は出来ない……が、要請は可能だ。
  そして、この2人は連絡役としてシルバリエにつけられた他の魔王の配下である。

「レグルス、グレースにゼブルス王国のラーナ渓谷を軽く偵察して欲しいと伝えてくれ。
  攻める必要は無い。
  人間側の注意をラーナ渓谷に集めるのが目的だ」

「はっ!
  しかしシルバリエ様、我らグレース様の配下はほとんどが戦士です。
  偵察などはあまり得意とする者が居ないのですが……」

「分かっている。
  そこでギザ、コルダールの配下をグレースに付けてくれ。
  グレースの指揮でコルダールの配下に偵察を行わせる」

「それならば始めからコルダール様が指揮を執った方が混乱が無いのでは有りませんか?」

  シルバリエはレグルスの質問に気を悪くする事もなく淡々と答える。

「コルダールは先の戦いでの負傷でかなり戦闘力が落ちている。
  ただでさえ、我ら魔族は人間よりも数が少ないのだ。
  万が一にも最大戦力であるコルダールを失う訳には行かない。
  コルダールは、今は治療に専念するべきだ」

「承知致しました。
  直ぐにグレース様へお伝え致します」

「私もコルダール様へ連絡致します」

「うむ、退がってよい」

「「はっ」」

  シルバリエは、2人の魔族が主人との連絡の為、部屋を出くのを静かに見送るのだった。
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