上 下
312 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

117話 名無しのダンジョン

しおりを挟む
「普通の洞窟だな」

「そうね」

  ダンジョンの内部はごく普通の洞窟と変わらない様に思える。
  以前、エレインさんと一緒に行った虚無の洞窟とあまり変わらない。
  しかし、ダンジョンの方が虚無の洞窟よりも広く、入り口は狭かったが奥に行くと俺達3人が余裕を持って歩けるくらいの広さと成っていた。

「ダンジョンはどこもこんな感じなのか?」

「そうですね。
  やはり洞窟型が多いですが、中にはキチンと石畳が敷かれて松明が設置された通路がある事も有ります」

「…………誰が松明なんて用意するんだ?」

  俺は疑問にソフィアは首を振り答えた。

「さぁ、昔からダンジョンの研究者が調べている様ですが、ハッキリした事は分からないそうですよ。
  松明や宝箱、それに罠などは生物タイプのダンジョンにしか有りませんから『おそらくダンジョンが用意しているのだろう』と言うのが定説です」

「生物タイプ?」

「はい、ダンジョンには生物タイプと無生物タイプが有ります」

「ああ、師匠に聞いた事があるわ。
  確か古代の遺跡などに魔物が住み着いたりしてダンジョンと呼ばれる様になる物が無生物タイプで、生物タイプは確かダンジョン自体が魔物で冒険者を誘い込んで殺し食らっているって聞いたわ」

「はい、生物タイプのダンジョンは内部が時折変化したり階層が増えたりします。
  更には特殊な階層を生成する事もあるそうです」

  マーリンはダンジョンについて少し知っているらしい。
  しかし、今気になる言葉が有った。

「なんだ、特殊な階層って」

「私が知っている物だと砂漠や森林などです。
  ダンジョンの砂漠で太陽を見た時には流石に驚きました」

  ソフィア少し遠い目をしながらそう言った。

「地下に太陽か……」

「最早何でも有りね」

  不思議だ。
  そもそも地下に砂漠や森林がある程の広大な空間などあるはずがない。

「このダンジョンはどっちだと思う?」

「多分生物タイプです」

「何故だ?」

「下層に行くと罠が多いらしいですからね」

「でも古代の遺跡でも罠が仕掛けられている場合があるって聞いたわよ?」

「はい、確かにその通りですが、ギルドの情報に有ったダンジョン内に出現する魔物のリストには、ゴブリン、オーク、コボルト、ヒュージウルフ、ワーム、クレイゴーレムなど多くの種類が載っていました。
  無生物タイプのダンジョンに生息する魔物はせいぜい7~9種類、複数の種類の魔物が生息する場合は生物タイプの可能性が高いです」

「生物タイプか……つまり俺達は今、魔物の腹の中に居るって事か」

「嫌な事言わないでよ。
  さっさと探して早く出ましょう」

「「 ⁉︎ 」」

    俺達は魔物の気配を感じてすぐさま武器を抜く。

「ゴゴゴゴゴ」

  洞窟の角から全長2メートルくらいの人形の土塊が現れた。

「クレイゴーレムです!」

「剣では効果が薄い、ソフィア退がって!」

  素早く後ろに下がるソフィアと入れ替わる。

「深淵より出でし闇よ 彷徨い 移ろえ アビススフィア」

  マーリンが放った深淵属性魔法がクレイゴーレムの体に3つの穴を開ける。
  その内のどれが核を破壊したのだろう。
  クレイゴーレムは崩れ去った。

「コレ何か使えるのか?」

「確かとても栄養価の高い良い土らしいわよ。
  農家が高く買い取ってくれるらしいわ」

「…………いらねぇか」

  クレイゴーレムを倒した俺達(と言うかマーリンだが)は土塊を避けて更に奥へと潜って行くのだった。
  

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...