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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

98話 辺境の薬師

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  魔王コルダールの襲撃を受けた俺達はカートの犠牲に寄って何とかミルミット王国に逃げ延びる事が出来た。
  しかし、俺はコルダールから強力な呪いを受けてしまった。
  その呪いは魔力を使おうとすると魂に傷を受けて激痛が走ると言う恐ろしい物だった。
  王宮医師によると、これ以上魂に傷がつけば自我が崩壊し廃人になるか、魔力を暴走させて死ぬと言われてしまった。
  呪いを解く事は難しいが辺境に居ると言うマーリンやレオに戦い方や薬草の知識を教えた薬師ならば魂の傷を治癒出来る可能性があるらしい。
  その薬師に会う為、俺達は王家の所有するワゴンに乗ってワイバーンに運ばれている所だ。
  因みにザネリとはミルミット王国の王都で別れた。
  彼女には悪い事をしたと思っているが本人は呪いが解けて感謝していると言っていた。
  お世辞かも知れないが助かって良かった。
  俺達は、カートの死を無駄にしない為、何としてもコルダールを倒さなければならない。
  その為にはやはり解呪と治療が必須だろう。

「その薬師は本当に魂の傷を治癒する事が出来るのでしょうか?」
 
  ソフィアのつぶやく様な疑問にレオの婚約者でシア(そう呼んでくれと言われた)が答えた。

「確証は有りません。
  ですが、私達が知る限りユウ先生はこの大陸最高の薬師ですわ」

「ああ、はっきり言ってユウさんの薬術は王宮薬師より上だ」

「そ、そうなのか」

  王宮薬師よりも上とは驚いた。
  てっきり解呪薬の専門家だとかの特化した薬師だと思っていた。

「ん?その薬師の名前はユウと言うのですか?」

  ソフィアが何かに気が付いた様に声を上げた。

「そうですよ?」

「もしかしてAランク冒険者の漆黒のユウ殿の事ですか?」

「ああ、そうだぞ。
  知っているのか?」

「はい、前に1度盗賊と戦っている時に加勢して貰った事があるんです」

「そうなのか?」

  驚いて問いかけた俺にソフィアは頷き返した。

「はい、その時にポーションを貰ったのですが、かなり高品質な品でした。
  確かその時に辺境で薬屋を開くと言っていましたね」

  マーリン達の恩師とソフィアが面識があった事に驚きながら辺境を目指すのだった。



  数日の旅で辺境の街、ガストに到着した。
  ワゴンから降りるとこの辺境の街を収める領主、フレイド・フォン・ガスト辺境伯様とマーリン達のクラスメイトだと言うアルベルト・フォン・ガスト様の2人と多くの騎士達が待っていた。
  簡単な手紙を持たせた鳥を飛ばしたので、ここで待っていてくれたのだろう。

「久しいなフレイド卿、アル」

「お久しぶりでございます殿下」

「お久しぶりです」

  2人の貴族とレオが挨拶を交わすのを待つ。

「それで殿下、本日は一体どう言った御用でしょうか?
  随分と急な来訪ですが」

  レオとシアが事情を説明する。
  俺が勇者であると説明された2人はとても驚いていたがすぐにユウさんの店に行く為に馬車を手配してくれた。
  領主であるフレイド様は政務の為に領主邸に戻るがアルベルト様が案内の為に同行してくれる事になった。
  
「ユウさんのお店はここからすぐだ。
  彼女ならきっと治してくれるさ」

「ありがとうございます、アルベルト様」

「はは、僕のことはアルで良いよ。
  レオもシアも愛称で呼んでるんだろう?」

「あ、ありがとう、アル」

「ねぇアル、ユウ先生は今はガストにいるの?」

  マーリンは薬師のユウさんが仕事でガストに居ない可能性を考えていたようだ。
  確かにAランク冒険者ならば大陸中を飛び回っていてもおかしくは無い。

「それなら大丈夫だよ。
  ユウさんは最近は辺境の周辺での仕事を中心に受けているらしいからね。
  なんでも修行や研究を重ねているみたいでね」

「修行か……必要か?」

「レオ様、前にお話したではないですか」

「ああ、魔王リセルシアだったか」

  旅の途中で聞いた話だがユウさんも魔王の1人と戦って敗北したらしい。
  その為、修行して力を付けて居るのだろう。
  
「あっ見えてきた、あの店だよ」
 
  アルが指差したのはこじんまりとした小さな店だった。
  
「雷鳥の止まり木か……」

  俺達はオープンの看板が掛けられた扉を開き店の中に足を踏み入れた。
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