神々の間では異世界転移がブームらしいです。

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

96話 命の炎

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  俺は全身に振る注ぐ血の雨に目を見開いていた。
  
「ちっ、邪魔してんじゃねぇよぉ、雑魚がぁ」

  俺の前に仁王立ちしたカートの背中からは、剣の切っ先が生えている。

「か、カート……」

  驚きで言葉が出ない俺を他所に胸に剣を突き立てられたカートは、両手で剣の柄を持つコルダールの手首を掴む。

「と、トリプルバインド!」

  コルダールの手首を掴んだカートは自分ごと拘束魔法で動きを封じた。
  得意の炎だけではなく、土と光の鎖も加えた複合魔法だ。

「何の真似だぁ?
  この程度の魔法、数秒で解除出来るぞ?」

「ごふっ、それだけあれば十分だ。
  ソフィア!
  エリオを連れて逃げろ!」

「カート!」

「エリオ!
  ダメです、退がって!」

「冥府に満ちる煉獄の業火よ」

  ソフィアが飛び出そうとした俺を抑えると、カートが詠唱を始めた。
  今までカートが使っていた魔法とは違う魔法だ。
  
「その魔法は……カートダメよ!何を考えているの⁉︎」

  マーリンはカートが使おうとしている魔法を知っているのか制止の声をあげる。
  
「て、てめぇ、雑魚が!何を考えてやがる⁉︎」

  コルダールもカートの魔法を知っているのか急に慌てだした。

「来たれ この世の全てを焼き尽くす裁きの炎」

「く、離せ!クソ雑魚が!!!」

  コルダールはバインドを解除しようとするが慌てているからか、解除出来ないでいる。

「カート何をする気だ!」

  俺はソフィアに引きづられてマーリンとザネリの居る所まで下げられる。

「くっ!ソフィア!全力でガードして!」

  マーリンが苦虫を噛み潰した様な顔で叫ぶ。

「幾重にも重なる城壁 鉄壁の体現者 神壁の守りをここに 不破の盾アイギスシールド

聖なる盾セイグリットシールド

  マーリンとソフィアが全力の防御をしたのを目の端に捉えたカートは魔法を完成させる。

「我は炎 我は業火 この命を焼き尽くす」

「や、止めろぉぉお!」

  コルダールの叫びを無視してカートは魔法を放つ。

命の炎ライフ・オブ・フレイム

  瞬間、目の前に巨大な炎柱が現れる。
  その膨大な熱量はマーリンとソフィアの防御が有っても俺達の肌を焼くほどの高温だった。

「な、何だこの魔法は……」

  俺の呟きに障壁に魔力を注ぎながらマーリンが教えてくれた。

「あれは『命の炎』……自分の命を魔力に変えて周囲の全てを焼き尽くす禁術よ」

「命を……じ、じゃあ……カートは……」

「……………………」

  やがて、炎は消える。

「はぁ、はぁ、はぁ、ぎ、ギリギリだったわ」

「と、どうなったの?」

  ザネリの問いかけにソフィアが否定したい事実を口にする。

「カートは……命と引き換えにコルダールを……」

「ぐっ!」

「マーリン⁉︎」

  魔力を使い切ったマーリンは倒れこむ。
  ようやく消えた命の炎は、魔法の効果範囲にあった物を全てが灰も残さず消滅させた…………はずだった。

「はっはっは、くだらねぇなぁ」

「「「 ⁉︎ 」」」

  全てが消滅した空間の中心地、そこには無傷のコルダールが立っていた。

「そ、そんな、バカな……」

「嘘でしょ……アレで無傷だなんて……」

「こんな……勝てる筈がない……」

  倒れ込んだマーリンは幸せだったのかも知れない。
  この絶望を知らなくて済んだのだから。
  死を覚悟した俺達だったがコルダールは何故か動かなかった。

「………………はっはっは、『止めろぉぉお!』ってよぉ、どうだ、名演技だったろ?
  …………あ~~~勇者よぉ、今日はこの辺にしといてやるよ」

「な、なに⁉︎」

「はっはっは、なぁに簡単なゲームさ。
  俺はお前の仲間を1人づつ殺して行く。
  お前はその前に俺を殺す。
  どうだ、簡単だろ?
  もっともその呪いを解かない限りお前の仲間は次々に死ぬ事になるけどな。
  はっはっは」

  そう言うとコルダールは懐から転移魔法の魔方陣を取り出すとその場から転移して行った。
  ……コルダールの気が変わらなかったら俺達も全員殺されていただろう。
  いや、俺達が生き延びたのはカートが自分の命を犠牲にしてまで戦ってくれたからなのだろう。
  俺達はその場に崩れ落ちる様に腰を下ろした。
  命の炎の影響で魔物はしばらくここには近づかないだろうが、いまの満身創痍の状態で長居は出来ない。
  俺達は数時間後、意識を取り戻したマーリンによって発動された転移魔方陣で精霊の庭から脱出するのだった。
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