神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

文字の大きさ
上 下
284 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

89話 杖の折れた魔法使いの像

しおりを挟む
  雷鳥の止まり木の応接室のソファに腰掛けたわたしは目の前に座る赤毛の青年と談笑を続けていました。

「なるほど、不正奴隷ですか」

「はい、盗賊と癒着している商人や貴族が居るのでしょう」

  先日の事件について口止めされていない部分を話していました。
  どうせ、商人には情報が伝わるでしょうし問題ありません。

「しかし、あの日冒険者ギルドに登録したユウさんがもうAランクとは、驚きが隠せませんよ」

「ははは、よく言われます」

  カーン、カーン!

  お昼の鐘の音が聞こえて来ました。
  随分と話し込んでいた様です。

「おっと、もうこんな時間ですか。
  すみませんユウさん、僕はこの後商談の約束が有るのでそろそろ失礼させて頂きます」

「ええ、わたしもお昼に辺境伯様に呼ばれているのでこの辺にしておきましょう」

  わたしは立ち上がり部屋を出ようとしているロキさんを呼び止め、数本のガラス瓶を差し出しました。
  ガラス瓶の中は、透き通った液体で満たされている。

「コレは?」

「差し上げますよ、お土産です。
  わたしが作ったお酒なのですが、なかなかの出来ですよ」

「コレがお酒ですか?
  水の様に透明ですよ?」

「リュウガ王国て栽培されている米と言う穀物で作ったお酒です。
  清酒と言ってわたしの故郷ではスタンダードなお酒の1つです」

「ユウさんの故郷と言うと、大和と言う大陸の外の国ですよね。
  その国のお酒ですか」

「はい、口に合えばいいのですが」

「ありがとうございます。
  大切に飲ませて貰います」

  商談に向かうロキさんを見送ったわたしは辺境伯邸に向かいます。 
  今朝、フレイド様の使いの方が来て例の結界を作るマジックアイテムを引き渡す準備が出来たと伝えてくれたのです。

「こんにちは」

「これはユウ殿、どうぞお通り下さい」

「ありがとうございます」

  貴族街の門番さんもすっかり顔馴染みです。
  ガヤガヤとして活気のある平民区とは違い、ゆったりとした空気の流れる貴族街を歩き見慣れた砦の様な辺境伯邸に到着しました。
  辺境伯邸の門番さんに来訪を告げるとシルバさんが出迎えてくれました。
  応接室で少し待ち、フレイド様と面会します。

「ユウ殿、この度は迷惑を掛けたな」

「本当ですよ、全く。
  それで、あのバカはどうなったのですか?」

  別にフレイド様が悪い訳では有りませんがバカな貴族から守る約束ですからね。
  まぁ、今回は明らかに偽物の命令書が面白かったのでわざと捕まったのですがから自己責任と言われれば反論は出来ません。
  でも、少し嫌味を言うくらいはフレイド様も許してくれるでしょう。
 
「アホールは正式に爵位剥奪の上斬首、屋敷に居た使用人30人の内、犯罪に関わっていた者達は26名、15人は犯罪奴隷、5人は鞭打ち刑、2人は国外追放、犯罪に深く関わっていた3人は縛り首と決まった」

「1人足りませんよ?」

「ああ、その1人も犯罪に深く関わっていたんだが…………尋問の最中に事故があってな」

「事故……ですか」

「事故だ」

  拷も……尋問によってショック死してしまったのかも知れませんね。
  今までやって来た事の報いですから同情の余地など有りませんけどね。

「それと、コレがユウ殿に頼まれていた結界のマジックアイテムだ」

  フレイド様はシルバさんから受け取った物を机の上に置きました。
  見た目はただの彫刻ですね。
  折れた杖を手にした魔法使いがデザインされています。

「ありがとうございます。
  これで魔力操作の鍛錬が捗ります」

「それは良かった。
  すまないが今回の件で私はまだ仕事が残っているのでこれで失礼するよ」

「お忙しい時に申し訳ありません」

「気にすることはないさ。
  裏庭でミッシェルがユーリアに魔法を教えているんだ。
  もし良かったらカオを出してやってくれ」

「はい、是非」

  忙しそうに部屋を出て行くフレイド様の背中が見えなくなったのでわたしも魔法の鍛錬をしていると言うユーリア様に会いに行きましょう。
  わたしはシルバさんに案内を頼み、裏庭へとむかうのでした。
  
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

処理中です...