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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

86話 悪徳貴族の制圧

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「ばっ!なっ!ば、バカが!
  見て分からんのか、貴様は牢の中だぞ!
  生かすも殺すもこの私が……」

  ギギギィン!

  わたしとアホール男爵を遮っていた檻は、あっさりと切り裂かれます。
  
「すみません、もう1度言って貰えますか?
  たしか、牢がどうとか?」

「ば、ば、バルトロスを呼べ!」

  アホール男爵が急に誰かを連れてくる様に兵士に命じました。

「は、はい!」

  命じられた兵士は転がる様に駆けて行きます。

「くくく、護衛隊長バルトロスは私の配下で最強の男だ!
  過去にはAランク冒険者を倒した事もある猛者、貴様の様な小娘など一捻りだ!」

「…………貴方はバカですか?
  なんでわたしがわざわざそのバルトロスとやらを待たなければ行けないのですか?
  今すぐに貴方を叩きのめしてフレイド様に突き出せば済む話ですよね?」

「な、小娘!
  貴族である私にそんな事をしてタダで済むと思っているのか!」

「ですから、貴方はもう貴族では無いのですよ。
  ここに国王様のサインの入った書状が有るじゃないですか」

「ふん、そんな物知った事か!
  一介の冒険者風情がなぜ国王陛下の書状を持っている!
  どうせ貴様が偽造したのだろう。
  この犯罪者め!」

「もう滅茶苦茶ですね。
  まぁ、良いです。
  それで、そのバルトロスとやらはいつになったら来るのですか?」

  わざわざ待ってあげているのにいつまで待っても現れません。
  やがて、バルトロスとやらを探しに行った兵士が帰ってきました。

「おい!バルトロスはどうしたのだ!」

「はぁ、はぁ、そ、それがバルトロス隊長の姿が何処にも見えないのです!
  屋敷から出た形跡はないのですがここ数日、姿を見たものは居ません!」

「な、なに⁉︎」

  ん?
  たしか……護衛隊長とか言いましたね?

「もしかしてバルトロスと言うのはこいつの事ですか?」

  わたしはアイテムボックスから取り出したバルトロス(仮)の首をアホール男爵に投げつけました。

「くっ! き、貴様!なに……を……投げ……」

  アホール男爵は受け止めたバルトロス(仮)と目が合った様です。

「うぁぁあ!」

「情け無いですね、生首くらいで」

「な、何故バルトロスが!」

  あ、やっぱりあいつがバルトロスだったんですね。

「初日の夜に『俺が味見してやるぜ」とか言いながら襲い掛かって来ましたから殺しました。
  それと、胴体も返しますね」

  アイテムボックスからバルトロスの身体も取り出し、バルトロスの首を目にして唖然としていたバカールに投げつけました。

「ぐへっ!うぅ、う、うぁぁあ!」

  バルトロスの身体はアイテムボックスの中にあったのでまだ死にたてホヤホヤで血もダラダラ出て居ます。
  全身血塗れになったバカールはパニックになっている様です。

「う、く、くそ!」

  踵を返して逃げようとしたアホール男爵の腹にピリオドの柄を叩き込みます。

「ぐがっ!」

  こいつはまだ殺す訳には行きませんからね。
  まぁ、あばらの半分くらいは折れたかも知れませんが死んでなければ大丈夫でしょう。

「ぎぃやぁぁあ!
  おい!
  お前達、何をやっている!
  早く助けろ!
  この女を殺せ!」

  わたしに押さえつけられていたアホール男爵は周りに居た兵士達に命じました。
  近くに居た5人程の兵士は反射的に剣を抜き、わたしに向けます。

「…………抜きましたね?
  聞いての通り、この男は現在、国王様の名において貴族としての権利を剥奪されていて、ガスト辺境伯様によって捕縛命令が出ている犯罪者です。
  その男の命令でわたしに剣を向けるのなら貴方達も犯罪者の仲間として対処しますよ?
  それが嫌なら武器を捨てて投降しなさい」

  わたしの優しい通告に兵士達は戸惑っている様です。

「何をしている!
  こんな小娘の言う事など信じるな!
  こいつを殺した者には金をやる!
  金貨5枚……いや、白金貨2枚だ!
  さぁ、早く私を助けろ!」

  おお、兵士の内の多くがやる気になった様です。
  実にバカですね。

「警告はしましたよ?」

  ひゅごっ!
  
  強烈な暴風が狭い地下室を駆け抜けました。
  それはわたしが振るった死の戦斧。
  その名の通り、一瞬で剣を抜いていた5人の兵士の命に終止符ピリオドを打ちました。

「ひっ!」

  あまりの恐怖に兵士の1人が腰を抜かします。
  まだ、魔眼は使ってないのですがね?

「わたしは親切ですからね。
  もう1度だけチャンスをあげましょう。
  大事な事ですからよく考えてから選択して下さい。
  いいですか?
  『武器を捨てて投降しなさい』」
  
  今度は魔眼による恐怖と威圧を加えておきました。
  そして、地下室に剣を捨てる甲高い音が響くのでした。
  
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