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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

65話 伝説の始まり

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  その美しい戦斧を置いた作業台を囲む様に椅子に腰掛けたわたし達4人は、誰もが戦斧を食い入る様に見つめ、何も話さないので、仕方なくわたしが話し始める事にします。

「この戦斧、伝説級ですね……」

「…………だよな! やっぱりそうだよな!」

「そうですよね、そうですよね、私の見間違いでは無いですよね!」

  わたしの呟きにキースさんがやはりかと、追従すると自身の『鑑定』に自信を持ててなかったパーニャさんも声を上げます。

「ふっふっふ、とうとう俺も伝説級の武具を造れる域に達したという事だ」

  アルッキさんは一眠りして元気になった様です。
  わたしが調合した栄養ドリンク(檄にが)も飲ませましたし、大丈夫でしょう。
  そもそも、ドワーフは頑丈な種族ですしね。

「もっとも、嬢ちゃんが用意した素材のお陰でもあるけどな。
  あれ程の素材をふんだんに使って作製する機会なんて初めてだからな」
  
「確かにな、あれ程希少な素材を、それも高品質な物を扱えるなんて滅多に無いからな」

「なんにしてもこれからアルッキさんも忙しくなるんじゃないですか?
  伝説級の武具を作った職人ですし」

「そうだな、だいぶ蓄えも使ってしまったからこれからも稼がねばならんからな、この実績は有り難い」

「ああ、かなり高価なポーションを買いあさっていた様ですからね」

「あーその、ごめんね、お父さん」

  パーニャさんは少しバツが悪そうに頭を掻きました。

「バカ者が、謝ることは何も無い。
  そのお陰でお前は無事だったんだ。
  金など後で稼げば良いだけだからな」

「うん、ありがとお父さん」

「それに今回の仕事で俺はまた一歩鍛治の極みに近づいたからな」

  そう言ってアルッキさんは嬉しそうに笑いました。
  どうやらアルッキさんの未来は明るそうですね。
  さて、気になっていた事も聞いてみましょうか?

「ところで、この戦斧にはまだ名前が無いみたいですが?」

「ああ、昨日は完成させた所で力尽きてしまったからな。
  もし良かったら嬢ちゃんが自分で名前を付けるか?」

「わたしがですか?」

  アルッキさんの説明によると、武器の名前は普通、鍛治職人が完成させた時に固有名を命名する事で決定でするらしいです。
  量産品の普通の剣などはわざわざ名前なんて付けませんがそう言う物はしばらく経つと鉄の剣などの無難なん名前が勝手に付くそうです。
  何だそれは⁉︎
  と言う不思議現象です。
  ちなみにこの名前は後から変化する場合もあるそうです。
  例えばわたしの《雷鳴の鉈》を長い間《鋼の雷》と呼んで使っていると、その内《鋼の雷》と言う名前に変わってしまうのです。
  さて、新しい戦斧の名前ですか…………
  ここはこの戦斧を的確に表して、なおかつセンスの良い名前を付ける必要があります。

「では、《ぴゅんぴゅん丸》と言うのは……」

「やっぱり俺が決めよう!」

  わたしが言い切る前にアルッキさんがそう宣言しました。
  パーニャさんとキースさんも『それが良い』と言っています。
  そうですね。
  この戦斧の歴史はわたしが死んだ後も続き、やがて伝説となるでしょう。
  ならば、この戦斧の名前は、この戦斧を生み出したアルッキさんが付けるべきですね。
  わたしは腕を組み、考え込んでいるアルッキさんを黙って見つめます。

「よし、この戦斧は全ての争いを断ち切り、終結させる。
  この戦斧の名は終結の戦斧ピリオドだ」



  この日、後に数々の英雄達の手によって、いくつもの戦いに終止符を打ち、多くの英雄叙事詩で語られる事になる伝説の戦斧、終結の戦斧ピリオドの伝説が始まった。
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