神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

60話 キメラ兵VSレジスタンス

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「はっ!」

  俺のレイピアが人の形をした歪な獣の喉笛を貫く。
  リア王に寄って魔物と強制的に合成された哀れな同胞を救うには1秒でも早くその命を絶つしかない。
  すでに辺りにはキメラ兵の姿しか無い。
  兵士は俺達に敵わないと見るや我先にと逃げて行った。
  こんな腰抜けどもが国を守る兵士だとは頭が痛くなる。
  そして、兵士が居なくなった頃、現れたのがキメラ兵だ。
  話には聞いていたが反吐が出そうになる。
  人間の様な体型だが狼の顔や獣の足を持った者などはまだましな方だ。
  中には最早原型がわからない様な奴もいたし、醜悪なキメラの背中に年端も行かない少女の顔がある奴もいた。 
  驚いたのはその少女には未だにキチンと自我があった事だ。
  しかし、身体を動かすことは叶わない様で、泣きながら殺して欲しいと願ってきた。
  人生でこれ程激昂する事があるとは、怒りに震える自分を何処か冷静な別の自分が見下ろしている様な奇妙な気分だった。
  なるべく苦しまない様に少女を殺した俺にジュリエットが近づいて来た。

「ハムレット、この辺りのキメラ兵は粗方片付いたわ」

「ああ、このまま城を制圧するぞ」

  俺はレジスタンスの戦闘員を率いてキメラ兵を倒しながら城の奥へと進んで行く。
  
⁉︎

  矢が風を切る音に反応し、横に飛ぶ。
  俺が立っていた場所に矢が突き刺さる。

「ちっ!愚民どもが家畜の分際でご主人様に牙を剥くとは、簡単には殺さんぞ」

  城から中庭に出る通路に2体のキメラ兵を従えた第1王子ゴリネルが不機嫌そうに立っていた。
  
「レジスタンスは周囲の扉を警戒しろ、冒険者は右のキメラ兵を殺れ。
  俺とジュリエットは左のキメラ兵を倒しゴリネルを捕らえる」

  手短に指示を出し、地面を蹴る。
  ジュリエットや冒険者達が後に続くのを確認し、レイピアを突き出す。
  しかし、キメラ兵は俊敏な動きで切っ先を避ける。
  明らかに今までのキメラ兵とは動きが違う。
  こいつがロミオの言っていた能力の高いキメラ兵なのだろう。
  歪な肉の塊の様な不気味なキメラ兵が腕を鞭の様に振り回す。
  質量と言う強力な武器を叩き付けてくるキメラ兵の攻撃をギリギリで避ける。
  すると、俺の身体に隠れて接近していたジュリエットが短槍を突き出し、キメラ兵の喉を抉る。
  
「ふっ!」

 フラついたキメラ兵にレイピアを撃ち込む。
  強靭な生命力を持つキメラ兵と言えど喉を深く抉られ、複数の急所を貫かれてはその命を保つ事は出来ない。

「ぐぁ!」

  もう一体のキメラ兵を相手にしていた3人の冒険者が押されている。
  Eランク冒険者3人では少し荷が重かった様だ。

  ヒュッ! ギンッ!

  至近距離から放たれた矢を切り払う。

「向こうに加勢する。
  ジュリエットはゴリネルを頼む」

「分かったわ」
 
   ゴリネルをジュリエットに任せて苦戦している3人に加勢する。

「うぁぁあ!」

  キメラ兵に狙われていた冒険者を庇い、攻撃を受け流す。
 
「落ち着け! 
  俺が正面に立つ、援護しろ!」

「わ、分かった」

  3人の冒険者の援護を受けながらキメラ兵と対峙する。
  キメラ兵の右腕には剣の様な物が埋め込まれている。
  真っ直ぐ突き出された右腕を身体を回転させながら放った斬撃で切り落とす。
  キメラ兵は左腕を振り上げるが冒険者達の援護に寄って難なく距離を取る。
  キメラ兵は虚しくこちらに左腕を突き出すだけだった。
  突き出されたキメラ兵の手のひらには不自然な穴が空いている。
  その時、ゾクリとする妙な気配を感じ、身を投げ出す様にその場から飛ぶ。
  
ドン!

  俺の後ろにあった銅像が砕け散る。

魔法銃スペルキャスターか…………命をなんだと思っているんだ!」

  キメラ兵の左腕をには魔法銃スペルキャスターが埋め込まれて来た様だ。
  その命を冒涜する所業にレイピアを握る手に力が入る。
  
ズガガガガガァ!

  魔法銃スペルキャスターの連射による薙ぎ払いを身を屈めて避けた俺は、キメラ兵の腕が伸び切った所を狙い素早くレイピアを振るう。
  キメラ兵は飛び下がろうとするが、後ろに回り込んでいた冒険者達が脚に攻撃を集中させ、それを阻む。
  そして、俺のレイピアがキメラ兵を仕留めたのは、ジュリエットの短槍がゴリネルの弓を叩き折り、返す刀で顎を砕き意識を奪うのと同時だった。
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