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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

51話 カイさんの黒歴史

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  ナミと名乗った女性はリュウガ王国で出会った冒険者、カイさんの妹さんなのだそうです。
  ナミさんと共にリーブン王国の王都に辿り着いたわたしはギルドカードを見せ、王都に入りました。
  リーブン王国の王都は街中を大小様々な水路が縦横無尽に張り巡らされていて、人々は船や水生の生物に騎乗して移動しており、中には泳いでいる人も居ます。
  水路の端にある通路を歩く人も居ますが水路を通る方が便利そうですね。
  オリオンは送還して、リバームールが牽引するナミさんの船に同乗しています。
  大きな水路から入り組んだ細い水路に進み、しばらくすると一軒の家の中に入って行きます。家の下に水路からの入り口があるみたいですね。
  船をロープで繋ぎ、リバームールを柵で囲われたエリアに入れたナミさんは鍵を取り出すと家のドアを開けました。

「入って、大したもてなしも出来ないけど」

「ありがとうございます。お構いなく」

  ドアを抜けナミさんの家にお邪魔します。

「ただいま」

「お邪魔します」

「あら、おかえり、ナミ。
  そちらは……お客さん?」

「ただいま、お母さん。
  帰りに河賊に襲われてね。
  こちらはその時助けてくれた冒険者のユウさん」

「えぇ⁉︎ 大丈夫かい?怪我はない?」

「大丈夫だよ。
  トリトンも一緒だったし」

「そぅ、ユウさんでしたね。
  娘がお世話になりました」

  深々と頭を下げる中年の女性に慌てて頭を上げてもらいます。

「いえいえ、わたしは大した事はしていません。
  ほとんどトリトンが倒してくれましたからね」

「おい、何の騒ぎだ」

  隣の部屋から頭にねじり鉢巻を絞めた中年男性がやって来ました。
  おそらくナミさんのお父さんでしょう。

「あんた、ナミが河賊に襲われたって」

「なに⁉︎ 無事なのか!」

「大丈夫だよ、お父さん」

  ナミさんがお父さんに状況を説明し、わたしは今晩泊めて貰える事になりました。
  そして、夕食の時です。
  ここまでスルーされていたのでこちらからは聞かなかったのですが、意を決したかの様にナミさんが切り出しました。

「そう言えば、ユウさんは兄さんの知り合いらしいよ」

「えぇ⁉︎本当かい?」

「フン、知るかあんな親不孝者のことなんか!」

「ちょっとあんた!
  ごめんなさいねユウさん。
  もし、よかったらカイの事を教えてくれないかい?」

「それはもちろん構いませんが……もしかしてカイさん、皆さんと連絡を取ってはいないのですか?」

「ええ、そうなんですよ。
  たまにトリトンが召喚されているので、兄さんが生きているとは、わかるのですが、どこで何をしているのか?」

「しっかりとしてそうな人でしたけど?」

「フン、どこがしっかりとしてるものか!」

「兄さんは6年前に『俺はこんな小国で終わる男じゃねぇ!』とか『大国に行ってBIGになってやる』と言って飛び出して行ったんです」

  都会に憧れる田舎の少年みたいな理由ですね。
  コレをわたしが知った事がカイさんの耳に入ったらきっと悶え苦しむ事になるでしょう。
  南無。

「どうせ、冒険者かチンピラかわからねぇ感じで、どっかの酒場で落ちぶれてんだろ、ユウさん?」

「いえいえ、若い時はどうだったか分かりませんが、わたしがカイさんに会ったのはリュウガ王国……東方の島国の王都ですが、カイさんは『海斬り』の2つ名を持つAランク冒険者としてミルミット王国の大規模な商船団の護衛を率いる護衛団長をしていましたよ?」

「に、兄さんがAランクで2つ名も⁉︎」

「ほ、本当ですか⁉︎」

「はい、本当ですよ。
  わたしも手合わせした事がありますがとても強かったです」

  その日は、リュウガ王国でのカイさんとの試合の話などをして楽しい夕食でした。
  どうやらこのリーブン王国の料理は濃厚でコクのある出汁に魚や鳥などの団子や練り物などを使った鍋料理の様な物が主流みたいですね。
  そして、肝心なガルフさんのお師匠様の居場所ですがなんと、お父さんに心当たりがあるそうです。
  なんでも王都の東側にある水馬の蹄亭と言う宿に滞在しているドワーフが高名な錬金術師に片っ端から声を掛けていると噂になっているらしいです。
  さっそく明日、訪ねてみるとしましょう。
  
  そして翌日、お世話になったお礼を言ってナミさんやご両親と別れます。
  この国に滞在する間泊まっていいと言ってくれましたが、さすがに遠慮しました。

「では、ユウさん、お気をつけて」

「はい、ありがとうございます」

「ぜひ、またいらして下さい」

「ユウさん、もしあのバカに会ったらいい加減一度帰って来いと伝えてくれ」

「分かりました。
  もし、会う事が会ったら伝えましょう」

  もう1度、握手を交わし、わたしは王都東側を目指したのです。
  
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