上 下
244 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

49話 クズ共の噂とレジスタンス

しおりを挟む
  ガヤガヤと冒険者達のざわめきで満たされた酒場にやって来ました。
果実水で満たされた盃を酒場のマスターから受け取ったわたしは端っこの席に腰を下ろします。
  
「ふぅ、なんだかとても疲れました」

「まったくだ、なんであんな事に……」

  わたしの前に座ったガラッドさんが肩を落としながら呟きました。

「何を言っているのですか、そもそも貴方が絡んで来たのが原因でしょう」

「うっ、そ、そうだな。
  悪かった、少し呑み過ぎていたみてぇだ」

  ガラッドさんは素直に頭を下げてくれました。

「それで、なんでお前さんみてぇな奴が冒険者ギルドに?」

「冒険者ですからね」

「………………嘘だろ」

「本当ですよ」

  ギルドカードを取り出しガラッドさんに見せます。
  わたしのギルドカードを見たガラッドさんは顔色がみるみる内に青くなって行きました。

「…………え、Aランク……マジで?」

「マジです」

「…………俺はあのバカに感謝するべきだったかも知れん」

「わたしとしてはどっちを殴っても大して変わらないのですが、ガラッドさんを殴り倒した方が面倒が少なかったですね」

  更に青くなって行くガラッドさんを無視しつつ果実水を味わいます。
  美味しいです。
  ついでにガラッドさんからこの辺りの情報を教えて貰います。
  ……いえ、脅してなんかいませんよ?
  わたしの卓越した交渉術によって、彼は喜んで喋ってくれています。

「兎に角、今この国は治安が最悪なんだ」

「確かにこの街に来るまで沢山の盗賊を殺しましたね?」

「……そ、そうか。
  本来なら盗賊どもに対処するべき領主は盗賊どもから賄賂を受け取り奴らを野放ししてんだよ。
  だから街道は盗賊どもで溢れ、多くの商人が犠牲になっている。
  村々を回る商人が減ったせいで、村では物資が不足し、困窮した村人が野盗になって更に治安が悪化している」

「悪循環ですね。
  国の上層部はなんでそんな状況を放置しているのですか?
  賄賂を受け取り盗賊を放置している貴族を処罰するべきではないですか?」

「その処罰する王族も領主どもから賄賂を受け取ってんだよ。
  そもそも、諸悪の根源は王族だ。
  現国王のリアは、民を実験台にして怪しげな実験を繰り返しるって噂だし、王妃のコーディリアは国費で宝石を買い漁っているバカ。
  第1王子のゴリネルは逃げ惑う平民を弓で射るのが趣味のクズ、第2王子のダンカンは気に入らない奴を犯罪者にでっち上げて拷問して殺すクズ、第3王子のマクベスは街に出ては気に入った女を問答無用で連れ帰り飽きたら放り出すクズだ」

「なんですかそれは⁉︎
  そんな奴らが国のトップなんですか⁉︎」

「そうだ、この街なんてまだ平和な方だ。
  王都なんて明日の命も分からない程危険らしい」

「誰も王族を止めようとしないのですか?」

「本来、王族の暴走を止める筈の国の上位者は軒並み腐ってやがるんだ」

  そこで言葉を切ったガラッドさんはこちらに身を乗り出すと、声を小さくして話します。

「ここだけの話だが、近々レジスタンスが反乱を起こすって噂なんだ」

  おお、歴史小説みたいな展開ですね。
  わたしも小声で尋ね返しました。

「レジスタンスなんて居るのですか?」

「あくまで噂だがな。
  流れの冒険者を雇ったり、武器や情報を集めたりしているらしい」

  成る程、現在は『逃○まどう民』、『弾圧さ○る民』、『団結するレジ○タンス』の3枚のカードが場にある状態なんですね。
  あとはトラップカードをオープンして『大○命』を発動すれば相手の手札もフィールドも一掃できる訳です。
  分かります。

「まぁ、そんな訳だからこの国に用が無いならさっさと出た方がいいぞ」

「ご忠告ありがとうございます。
  もともとリーブン王国に用があるのでこの国は通過するだけのつもりなんですよ。
  何だか面倒なことになりそうなので早めに出る事にします」

  ガラッドさんにお礼を言ってエールを一杯奢った後、ギルドを出ると近場の宿に泊まり朝一で街を出たわたしは盗賊を血祭りに上げる事数日、ガラッドさんの忠告通りそうそうにヤナバル王国を抜けてリーブン王国に入るのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...