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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

46話 皇帝陛下の庇護

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  冒険者ギルドを後にしたわたし達は辻馬車を拾い宮廷へと向かった。

「ローザさんは皇帝陛下とは面識は有るのですが?」

「はい、特別親しい訳では有りませんが何度かご挨拶させて頂いた事が有ります」

「そうですか。
  それなら割とスムーズに進むかも知れませんね」

  今になって思い至りましたが、ローザさんがロザリー教皇猊下だと証明するのが難しいかも知れないと思ったのです。
  なんでも、代々教皇に伝わる錫杖をアンデットとの戦闘で失ってしまったそうです。
  ドジっ子ですね。
  翌日、村人達と探してみましたが見つかりませんでした。
  どうしたものかと思いましたが面識があるなら話は早いです。
  それと無闇にローザさんの顔を晒すのはこちらの目的としてはよろしくないのでフードで顔を隠して貰いましょう。

「到着致しました」

  辻馬車の御者に代金を払い馬車を降りると目の前には大きな宮廷が有ります。
  特に後ろ暗い所もないので、堂々と正面から近づいた行くと門の前に立っていた兵士さん達が少し警戒した顔付きになりました。
  更に近くと2人の兵士さんがこちらへと歩いて来ます。

「お前達、宮廷に何か用があるのか?」

「はい、わたしはこう言う者なんですが……」

  ギルドカードとグリント帝国の紋章が入ったカードを兵士さんに差し出します。

「これは⁉︎
  し、失礼いたしました!」

  帝国の紋章を見た途端2人の兵士さんは直立不動となってしまいました。

「ああ、いえいえ、こちらこそ先触れも出さずに申し訳ありません。
  至急、皇帝陛下に面会したいのです。
  皇帝陛下はご多忙だとは思うのですが『ユウが大事な話があるので会いたい』とお伝え頂けますか?」

「は、はい!」

  慌てて駆け出そうとした兵士さんを呼び止め、言伝を追加しておきましょう。

「あ、それと出来れば面会は非公式の場でお願いします」

「はい!」

  兵士さんは門のところで馬に乗ると宮廷へと駆けて行きました。
  わたし達は門の所で兵士さんが用意してくれた馬車でゆっくりと宮廷に向かいます。
  宮廷に到着するとそこには執事のヤナンさんが待っていてくれました。

「お久しぶりです、ヤナンさん」

「ご無沙汰しております、ユウ様」

「ハイランド陛下とは面会できるでしょうか?」

「陛下はただいま政務を行なっております。
  ユウ様の来訪をお伝えすると時間を作るとお答え頂きました。
  お部屋をご用意致しますので、お連れ様と共にしばしお待ち下さい」

  ヤナンさんに応接室に通されたわたし達はしばらく時間を潰します。
  1時間ほどした時でしょうか?
  皇帝陛下が応接室を訪れました。
  わたし達も立ち上がり礼を取ります。

「久しいな、ユウ殿。
  息災であったか?」

「はい、お陰様で皇帝陛下もお元気…………いえ、少し腰を痛められているようですね。
  後で薬を調合しましょう」

  何となく診断スキルを使うとどうも皇帝陛下は腰痛に悩まされているようです。
  
「はっはっは、それは有難いな。
  さぁ、楽にしてくれ」

  皇帝陛下に促されたわたし達はソファに掛け直し、小さな机を挟んだ向かい側に皇帝陛下が腰を下ろしました。

「さて、緊急の要件だと聞いたが……そちらの女性の件か?」

  皇帝陛下はローザさんに視線をやりながら尋ねて来ました。
  まぁ、気づきますよね。
  皇帝陛下を前にフードで顔を隠しているのですから当然訳ありだと思われたのでしょう。

「はい、その通りです」

「では、要件とは何だ?」

「その前に……」

  わたしは部屋の中にいた侍女さんや護衛の騎士さんに視線をやりました。

「成る程、ヤナン以外は退がれ」

  皇帝陛下の背後に控えたヤナンさん以外の人達が部屋を出て行きました。

「これで良いか?」

「過分な対応、痛み入ります」

  ローザさんが皇帝陛下にお礼を言いながらフードを取りました。

「な、あ、貴女は⁉︎」

  皇帝陛下とヤナンさんが驚愕しています。
  そりゃあ、死んだと思っていた隣国の国家元首が目の前には現れたら驚きます。
  それからわたし達は事情を説明し、2人の保護を求めました。

「成る程、事情は理解した。
  本当ならいろいろと頼みたいところなんだがユウ殿の頼みだからな。
  2人にはローザとレインの名前で市民証明を用意しよう。
  それと貴族街の端の目立たない場所に屋敷を用意させよう」

「ありがとうございます」

「それと、その村にも警備の人員を派遣しよう」

「本当でございますか⁉︎」

「ああ、アンデットを使役していた者の目的が不明だからな。
  兵が居れば逃げる事くらいは可能だろう」

  こうして、ローザさんとレインさん、それとモーリスはしばらくの間、帝都で暮らすことになったのです。
  そして、わたしはようやく本来の目的の為、リーブン王国を目指す事が出来ました。
  随分と長い寄り道でした。
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