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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
29話 王子と国王
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レオンハルト殿下に連れられ、騎士達が設営した天幕に移動した。
「天幕の警護は最低限でよい。
手の空いている者は後始末をしている村人を手伝ってやれ」
「「は!」」
一緒に来ていた騎士達も、レオンハルト殿下の指示で駆けて行った。
天幕の中には簡易的な机と椅子があった。
「まぁ、座るといい」
「は、はい、失礼します」
「し、失礼します」
「…………………」
レオンハルト殿下に促されて椅子に腰を下ろした。
緊張で声が少し上ずっていたが及第点だろうと思いたい。
「マーリン」
「ええ、静寂よ 我らを包め サイレント」
マーリンが魔法を唱えると魔力の波動が周囲に広がり、外の音が聞こえなくなった。
「これで私達の声は外に聞こえる事はないわ」
「そうか、まぁ、なんだ、元気だったか?」
「ええ、レオやシアも変わった事はない?」
「ああ、シアは今はレブリック公爵領に戻っているがいつも通りだ」
魔法で外に声が漏れない様にした後、マーリンはレオンハルト殿下と親しげに話し始めた。
正直おれは驚きを隠せない。
カートが俺の脇腹を肘で突き、小声で聞いて来た。
(おい、マーリンって貴族かなにかだったのか⁉︎)
(知らん!俺だって驚いている)
(じゃあなんで皇太子殿下と気軽に談笑してんだよ!)
(俺に聞くなよ!)
「ん?
おい、マーリン。
お前、連れの2人に俺の事とか説明してないんじゃないか?」
「ああ、そう言えばそうね」
そう言うとマーリンはレオンハルト殿下との関係を説明してくれた。
王都にある学院の同期で、3年間、行動を共にした友人だそうだ。
「それで、レオはなんでこの村に?」
「実は俺達は王都の郊外で演習を行っていたんだ。
そこに、この村の者が助けを求めてやって来たのだ」
「なるほどね。
じゃあ直ぐに王都に戻るの?」
「ああ、すでに救援を頼んであるからな。
俺達はあまり長居できるだけの物資を持ってない。
村の復興は救援に任せて帰還するつもりだ」
「そう、じゃあ私達も一緒に連れて行ってくれない?
荷馬車の隅でいいから」
「構わないぞ」
あれよあれよと言う間に王都まで馬車で送って貰える事になった。
正直、緊張するから歩いて向かいたかった…………
===========================
書類の山を切り崩しながら深く息を吐く。
まったく、面倒としか言えないが、これも王としての責務なので仕方がない。
トントン
ノックの音が飛び込んで来た事で俺の集中が切れる。
「ふぅー」
俺……いや余は気持ちを切り替え入室を許可する。
「入れ」
「失礼致します」
入室して来たのは文官の1人だった。
何の用か尋ねると、文官は少々歯切れが悪そうに口を開く。
「それが……陛下に謁見を申し込みたいと……」
「謁見を?
そんな予定は有ったか?」
「いえ、私も申請をお出しになり、順番をお待ちくださいとお伝えしたのですが、どうしても急ぎ謁見出来ないか陛下にお尋ね頂きたいと……」
「ふむ、一体何者なのだ?」
「はい、パーフェ男爵様です」
「なに!
パーフェ男爵だと!」
俺は驚き、つい立ち上がってしまった。
なんとか平静を取り戻そうとするが、心臓が早鐘の様に鳴って静まらない。
俺……余はカラカラになった喉を震わせ文官に指示を出す。
「直ぐにパーフェ男爵を応接室へ通せ。
この後の予定は全て中止だ」
「え⁉︎
し、しかし……」
「構わん、全て中止だ。
直ぐにパーフェ男爵を通せ。
これは王命だ」
「は、はい!」
パーフェ男爵が領地を離れ王都にやって来たと言う事は、16年前のフリジオの話が現実になった可能性が高い。
彼の地の山奥には次代の勇者を育てている村がある。
そして、精霊の予言によれば勇者が旅立つ時期にその村は魔族の襲撃を受け、壊滅すると言われている。
おそらくパーフェ男爵の要件もその関係だろう。
余は足早に応接室へと向かうのだった。
「天幕の警護は最低限でよい。
手の空いている者は後始末をしている村人を手伝ってやれ」
「「は!」」
一緒に来ていた騎士達も、レオンハルト殿下の指示で駆けて行った。
天幕の中には簡易的な机と椅子があった。
「まぁ、座るといい」
「は、はい、失礼します」
「し、失礼します」
「…………………」
レオンハルト殿下に促されて椅子に腰を下ろした。
緊張で声が少し上ずっていたが及第点だろうと思いたい。
「マーリン」
「ええ、静寂よ 我らを包め サイレント」
マーリンが魔法を唱えると魔力の波動が周囲に広がり、外の音が聞こえなくなった。
「これで私達の声は外に聞こえる事はないわ」
「そうか、まぁ、なんだ、元気だったか?」
「ええ、レオやシアも変わった事はない?」
「ああ、シアは今はレブリック公爵領に戻っているがいつも通りだ」
魔法で外に声が漏れない様にした後、マーリンはレオンハルト殿下と親しげに話し始めた。
正直おれは驚きを隠せない。
カートが俺の脇腹を肘で突き、小声で聞いて来た。
(おい、マーリンって貴族かなにかだったのか⁉︎)
(知らん!俺だって驚いている)
(じゃあなんで皇太子殿下と気軽に談笑してんだよ!)
(俺に聞くなよ!)
「ん?
おい、マーリン。
お前、連れの2人に俺の事とか説明してないんじゃないか?」
「ああ、そう言えばそうね」
そう言うとマーリンはレオンハルト殿下との関係を説明してくれた。
王都にある学院の同期で、3年間、行動を共にした友人だそうだ。
「それで、レオはなんでこの村に?」
「実は俺達は王都の郊外で演習を行っていたんだ。
そこに、この村の者が助けを求めてやって来たのだ」
「なるほどね。
じゃあ直ぐに王都に戻るの?」
「ああ、すでに救援を頼んであるからな。
俺達はあまり長居できるだけの物資を持ってない。
村の復興は救援に任せて帰還するつもりだ」
「そう、じゃあ私達も一緒に連れて行ってくれない?
荷馬車の隅でいいから」
「構わないぞ」
あれよあれよと言う間に王都まで馬車で送って貰える事になった。
正直、緊張するから歩いて向かいたかった…………
===========================
書類の山を切り崩しながら深く息を吐く。
まったく、面倒としか言えないが、これも王としての責務なので仕方がない。
トントン
ノックの音が飛び込んで来た事で俺の集中が切れる。
「ふぅー」
俺……いや余は気持ちを切り替え入室を許可する。
「入れ」
「失礼致します」
入室して来たのは文官の1人だった。
何の用か尋ねると、文官は少々歯切れが悪そうに口を開く。
「それが……陛下に謁見を申し込みたいと……」
「謁見を?
そんな予定は有ったか?」
「いえ、私も申請をお出しになり、順番をお待ちくださいとお伝えしたのですが、どうしても急ぎ謁見出来ないか陛下にお尋ね頂きたいと……」
「ふむ、一体何者なのだ?」
「はい、パーフェ男爵様です」
「なに!
パーフェ男爵だと!」
俺は驚き、つい立ち上がってしまった。
なんとか平静を取り戻そうとするが、心臓が早鐘の様に鳴って静まらない。
俺……余はカラカラになった喉を震わせ文官に指示を出す。
「直ぐにパーフェ男爵を応接室へ通せ。
この後の予定は全て中止だ」
「え⁉︎
し、しかし……」
「構わん、全て中止だ。
直ぐにパーフェ男爵を通せ。
これは王命だ」
「は、はい!」
パーフェ男爵が領地を離れ王都にやって来たと言う事は、16年前のフリジオの話が現実になった可能性が高い。
彼の地の山奥には次代の勇者を育てている村がある。
そして、精霊の予言によれば勇者が旅立つ時期にその村は魔族の襲撃を受け、壊滅すると言われている。
おそらくパーフェ男爵の要件もその関係だろう。
余は足早に応接室へと向かうのだった。
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