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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

25話 極光のザジ

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「こんなところで強盗の真似事ですか?
  それがハンターの仕事だと?」

ガッ!

「いいや、違う。
  俺はハンターを引退したんだよ。
  今は魔王の1人、シルバリエ様に仕えている」

「魔王に……」

「まぁ、危険なハンター業より安定しているからな。
  俺には守らなくてはいけない家族がいる」

ギギギーン!

「そうでしたか…………家族と言えば例の妹さんはどうなりましたか?」

ガッ!   ギン!

「リリアナの奴ならお前が調合してくれた薬のお陰ですっかり良くなった。
  感謝している」

「そうですか、それは良かった。
  ならば恩返しとして、そろそろ一撃くらい受けてくれても良いのでは有りませんか?」
  
「無茶を言うなよ。
  一撃食らったら即死だろうが」

「ザジさんはケチですね。
  甲斐性の無い男性はモテませんよ?
  アイスフィールド」

ピキキキィ!

「ちっ!」

  地面ごと足を凍らせて動きを止めたところに水龍の戦斧を叩き込みます。
  剣でガードされたので、大したダメージはないでしょう。 
  案の定、軽く埃を払いながら戻って来ます。

「魔装『鱗戦斧』」

「魔技『極光剣』」

  わたしとザジさんはお互いに魔力を凝縮させた武器を構えます。

「ことろで、変装出来るのなら何故わざわざ仮面なんてつけていたのですか?」

「ああ、アレは変身メタモルフォーゼって魔法なんだが、効果が個人の適正に左右されるんだ。
  適正がある奴なら3年以上姿を変える事が出来るらしいが、俺は適正が無くてな、30分くらいが限界なのさ」

「なるほど、ではそろそろ真っ二つになって下さい」

「お断りだ」


  


  輝く戦斧と剣が打ち合う度に衝撃波が周囲を破壊して行きます。
  修理費はザジさんに請求して欲しい物です。
  会場の観客は戦士団の指示に従って避難していますが、まだまだ多くの人が残っています。
  巻き込まないように気をつけなければいけませんね。
  いく度目かの打ち合いの末、わたしとザジさんは距離をとり向かい合います。
  次で決めますよ!

「はぁぁあ!」

  ありったけの魔力を掻き集め、戦斧に込め、大きく振りかぶりました。

「甘いぞ、そんな大振りの攻撃で……」

  甘いのはザジさんの方です!
  試合では使わなかった最後の切り札を使います!

「威圧の魔眼!」

「ぐっ⁉︎」

  威圧の魔眼を受け、ザジさんの動きがほんの少し止まります。
  それは1秒にも満たない時間でしたが、強者同士の戦いにおいてそれは致命的な隙となります。

「遍断ち!」

ガッ!

「な⁉︎」

  必殺の一撃の筈だった戦斧は、わたしとザジさんの間に割り込んで来た少女によって受け止められてしまいました。
  少女はすでに変身メタモルフォーゼを解いているようで魔族の姿になっている。
  しかし、魔族とは言え、わたしの戦斧の刃を掴み止めるとは……
  侮れませんね。
  てっきりサポート要員だと思っていましたが、コレは不味いですね。

「極光、いつまで遊んでいるつもりなんだ。
  そろそろ、この国の戦士団が態勢を立て直すころだ。
  包囲される前に撤退するぞ。
  私が時間を稼ぐ、スクロールを用意しろ」

「あいよ」

  ザジさんは剣を鞘に収めると地面に大きめのスクロールを広げ始めます。

「逃すと思いますか!」

「静かにしておけ、小娘」

「誰が小娘ですか!」
  
  超身体強化を使い、少女の手から戦斧を取り戻そうとした時でした。

「あまり世話を掛けるな」

「なぁ⁉︎」

  衝撃的な出来事が起こりました。
  わたしの愛用の戦斧、水龍の戦斧が少女の小さな手によって砕かれたのです!

「この程度で動揺するとは、二流だな」

「くっ⁉︎」

  ショックを受けた一瞬の隙を突き、少女がわたしの懐へと潜り込んで来ました。
  その距離はほぼゼロです。

「魔拳」

「ごぉは!」

  少女の拳がボディに突き刺さり、わたしは女子力の低い叫びを上げ吹き飛ばされました。
  観客席の下、壁に叩きつけられ、崩れ落ちます。
  壁にはまるで、某テニス風バトル漫画の様な跡が残っています。
  まさか少女の拳がこれ程の威力を持つとは…………
  あばらが数本折れていますし、腕にもひびが入っていますね。

「ぐうぅ!」

  ポーションを口にしながら立ち上がります。

「ほう、私の……この魔王リセルシアの拳を受けて立ち上がるか。
  …………危険だな、ここで始末しておくべきか」

  さらっとトンデモない事を言われました!
  まさか、噂の魔王とは……
  コレはマジでヤバイかも知れません。
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