186 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》
176話 メダルとわたし
しおりを挟む
国王様との歓談を終えるとわたしとフレイド様は帰りの馬車まで歩きます。
所々にさり気なく飾られている壺や絵画はなかなかセンスが良いです。
「ユウ殿、時空箱はどうやって持って帰るつもりだ?
オリオンに運ばせるなら木箱か何か用意させるし、陸路を運ばせるなら私が人を出そう」
「そうですね。
オリオンに運んでもらおうと思います」
「そうか、では木箱を用意しよう」
「ありがとうございます」
そうなのです。
わたしが時空箱がハズレだと思うもう1つの理由がコレです。
空間魔法が施された常時起動型のマジックアイテムはマジックバックにしまう事が出来ないのです。
常時起動型とはマジックアイテムの分類の1つです。
マジックアイテムは常時起動型と魔力起動型に分けられます。
常時起動型は空気中の魔力を自動で吸収し、常に起動している物です。
マジックバックなどが常時起動型です。
魔力起動型は魔力を込める事で効果が発動するマジックアイテムでわたしが持っている物だと導きの焔や金剛の剣などですね。
空間魔法が常に起動しているので干渉し合い、マジックバックをマジックバックにしまうことが出来ないのです。
なのでわたしは時空箱を自力で持ち帰らなければいけないのです。
コレがダンジョンで見つけた物などならアイテムボックスに入れてこっそりと運べるのでこんな事をしなくても良いのですが……
「おっと、すまないユウ殿、少し用事を思い出した。
先に馬車まで行ってくれ。
直ぐに戻る」
「分かりました」
何か用事を思い出したらしいフレイド様は、小走りで来た道を引き返して行きました。
直ぐに戻ると言っていたのでわたしは馬車に戻りましょう。
そう思い、王宮の廊下を1人歩いていた時です。
「ん?
おい! なぜ王宮にお前のような平民がいるんだ!」
「わたしは国王様に呼ばれたからですよ。
ランスロットさんこそなんで王宮に?」
「ふん、俺は子爵家の後継だからな。
父上の仕事を手伝っている。
貴様のような下賎な冒険者とはちがうのだよ」
「はぁ、そうですか。
では、わたしはこれで」
「まて」
ん?
前にもこんな事があった気がします。
「貴様はたしか冒険者としてはそこそこの実力があるらしいな」
「まぁ、そう言えなくも無いですね」
「よし、この俺の専属として雇ってやろう。
光栄に思え」
「いえ、結構です」
「な、なんだと!」
面倒ですね。
大体わたしはもう教員じゃないですし、プチっとやっちゃっても…………流石に王宮でそれは不味いですね。
「貴様! この俺はサマール子爵家の後継ランスロット・フォン・サマールだぞ!
貴様のような下賎な冒険者ごときがそのような口を聞いてタダで済むと思っているのか!」
『目には目を』ですね。
ここは権力に頼りましょう。
「わたしを雇いたいならココを通して下さい」
わたしはランスロットさんに見えるように辺境伯家の紋章が入ったメダルを掲げます。
今までわたしの所に来た貴族はこれでイチコロでした。
まさに印籠です。
「フン! なんだ! こんな物!」
バシ
「あっ!」
うぉーい
まさかの展開です。
権力を振りかざすランスロットさんは権力の象徴である貴族家の紋章をはたき落としました。
リィーン
流石辺境伯家の紋章が刻まれたメダルです。
澄んだいい音がします。
ランスロットさんにはたき落とされたメダルは大理石の床をコロコロと転がり、綺麗に磨かれた靴に当たって止まります。
靴の持ち主は腰を折りメダルを拾い上げるとこちらへゆっくり歩いて来ます。
「落としたぞ、ユウ殿」
「ありがとうございます。
早かったですね、フレイド様」
「ああ、大した用ではなかったからな」
フレイド様が拾ったメダルをわたしに手渡してくれます。
「さて、貴殿はたしか…………サマール子爵家の嫡男だったな」
「え、お、あ、はい」
フレイド様、怒ってますね。
貴族オーラ全開です。
「私はフレイド・フォン・ガスト辺境伯である」
「へ、辺きっ……」
「貴殿は我が辺境伯家が懇意にしている薬師殿に何か反意でもあるのかね?」
「め、滅相もございません、お、私は……」
「では貴殿は反意がある訳でも無いのに我が辺境伯家の紋章をはたき落としたと言うのかね?」
「い、いえ、私は……その……」
「先程の貴殿の行いはサマール子爵家の総意だと判断して構わないな?」
「いえ! 私は決っして!」
「我が辺境伯家の誇りたる紋章を侮辱されたのだ。
相応のケジメを付けさせて貰おう。
貴殿では話にならない。
サマール子爵家の当主に合わせて貰う!」
ランスロットさんは真っ青な顔でプルプルと震えています。
「ユウ殿、すまないが私は彼の父と少し話さねばならなくなった。
先に帰っていてくれ」
「分かりました。
お手間を取らせて申し訳ありません」
「いやいや、これは我が辺境伯家の問題だからな」
そう言うとフレイド様はランスロットさんを引き連れて立ち去って行きました。
貴族って面倒ですね。
所々にさり気なく飾られている壺や絵画はなかなかセンスが良いです。
「ユウ殿、時空箱はどうやって持って帰るつもりだ?
オリオンに運ばせるなら木箱か何か用意させるし、陸路を運ばせるなら私が人を出そう」
「そうですね。
オリオンに運んでもらおうと思います」
「そうか、では木箱を用意しよう」
「ありがとうございます」
そうなのです。
わたしが時空箱がハズレだと思うもう1つの理由がコレです。
空間魔法が施された常時起動型のマジックアイテムはマジックバックにしまう事が出来ないのです。
常時起動型とはマジックアイテムの分類の1つです。
マジックアイテムは常時起動型と魔力起動型に分けられます。
常時起動型は空気中の魔力を自動で吸収し、常に起動している物です。
マジックバックなどが常時起動型です。
魔力起動型は魔力を込める事で効果が発動するマジックアイテムでわたしが持っている物だと導きの焔や金剛の剣などですね。
空間魔法が常に起動しているので干渉し合い、マジックバックをマジックバックにしまうことが出来ないのです。
なのでわたしは時空箱を自力で持ち帰らなければいけないのです。
コレがダンジョンで見つけた物などならアイテムボックスに入れてこっそりと運べるのでこんな事をしなくても良いのですが……
「おっと、すまないユウ殿、少し用事を思い出した。
先に馬車まで行ってくれ。
直ぐに戻る」
「分かりました」
何か用事を思い出したらしいフレイド様は、小走りで来た道を引き返して行きました。
直ぐに戻ると言っていたのでわたしは馬車に戻りましょう。
そう思い、王宮の廊下を1人歩いていた時です。
「ん?
おい! なぜ王宮にお前のような平民がいるんだ!」
「わたしは国王様に呼ばれたからですよ。
ランスロットさんこそなんで王宮に?」
「ふん、俺は子爵家の後継だからな。
父上の仕事を手伝っている。
貴様のような下賎な冒険者とはちがうのだよ」
「はぁ、そうですか。
では、わたしはこれで」
「まて」
ん?
前にもこんな事があった気がします。
「貴様はたしか冒険者としてはそこそこの実力があるらしいな」
「まぁ、そう言えなくも無いですね」
「よし、この俺の専属として雇ってやろう。
光栄に思え」
「いえ、結構です」
「な、なんだと!」
面倒ですね。
大体わたしはもう教員じゃないですし、プチっとやっちゃっても…………流石に王宮でそれは不味いですね。
「貴様! この俺はサマール子爵家の後継ランスロット・フォン・サマールだぞ!
貴様のような下賎な冒険者ごときがそのような口を聞いてタダで済むと思っているのか!」
『目には目を』ですね。
ここは権力に頼りましょう。
「わたしを雇いたいならココを通して下さい」
わたしはランスロットさんに見えるように辺境伯家の紋章が入ったメダルを掲げます。
今までわたしの所に来た貴族はこれでイチコロでした。
まさに印籠です。
「フン! なんだ! こんな物!」
バシ
「あっ!」
うぉーい
まさかの展開です。
権力を振りかざすランスロットさんは権力の象徴である貴族家の紋章をはたき落としました。
リィーン
流石辺境伯家の紋章が刻まれたメダルです。
澄んだいい音がします。
ランスロットさんにはたき落とされたメダルは大理石の床をコロコロと転がり、綺麗に磨かれた靴に当たって止まります。
靴の持ち主は腰を折りメダルを拾い上げるとこちらへゆっくり歩いて来ます。
「落としたぞ、ユウ殿」
「ありがとうございます。
早かったですね、フレイド様」
「ああ、大した用ではなかったからな」
フレイド様が拾ったメダルをわたしに手渡してくれます。
「さて、貴殿はたしか…………サマール子爵家の嫡男だったな」
「え、お、あ、はい」
フレイド様、怒ってますね。
貴族オーラ全開です。
「私はフレイド・フォン・ガスト辺境伯である」
「へ、辺きっ……」
「貴殿は我が辺境伯家が懇意にしている薬師殿に何か反意でもあるのかね?」
「め、滅相もございません、お、私は……」
「では貴殿は反意がある訳でも無いのに我が辺境伯家の紋章をはたき落としたと言うのかね?」
「い、いえ、私は……その……」
「先程の貴殿の行いはサマール子爵家の総意だと判断して構わないな?」
「いえ! 私は決っして!」
「我が辺境伯家の誇りたる紋章を侮辱されたのだ。
相応のケジメを付けさせて貰おう。
貴殿では話にならない。
サマール子爵家の当主に合わせて貰う!」
ランスロットさんは真っ青な顔でプルプルと震えています。
「ユウ殿、すまないが私は彼の父と少し話さねばならなくなった。
先に帰っていてくれ」
「分かりました。
お手間を取らせて申し訳ありません」
「いやいや、これは我が辺境伯家の問題だからな」
そう言うとフレイド様はランスロットさんを引き連れて立ち去って行きました。
貴族って面倒ですね。
3
お気に入りに追加
2,349
あなたにおすすめの小説
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる