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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

164話 串焼きとわたし

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  王都までの旅の間に血抜きしておいたバイコーンの肉を串に刺して行きます。
  肉は昨日の昼から、わたし特製の醤油ダレに漬け込んであります。
  何をしているかと言うと模擬戦の授業の準備です。
  場所は第3訓練場の端です。
  Sクラスの皆さんにはここに来るように伝えてあります。
  わたしはアイテムボックスから取り出した竃に火を入れると串焼きを焼き始めました。
  いい感じに焼けて来た頃、皆さんがやって来ました。

「あ、皆さん、こちらですよ」

「あの、ユウ先生…………何してるんです?」

  マーリンさんがわたしに問いかけて来ました。

「見ての通り、串焼きを焼いているんですよ」

「いえ、何故、串焼きを焼いているのかを聞きたいのですが」

「お腹が空いたので………………なんちゃって。
  いや、ちゃんと訳が有るんですよ。
  まぁ、お腹も空いているんですが」

  朝はマーサさんのご飯を食べて来たのですが料理をしている内にお腹がすいて来ました。

「それで今日の訓練は何をするのですか?」

  気を取り直した様にレオさんが言いました。
  わたしは頷きを返して訓練の説明を始めます。

「取り敢えず今日は皆さんの戦闘力を見せて貰います。
  今からこの円の中にわたしが入ります」

  わたしは足元に描かれた円を指差しました。
  円は直径1メートル程の小さな物です。

「そして、串焼きを食べます」

「「「「なんでだよ(ですか)」」」」

  おぅ…………息の合ったツッコミです。

  「まあまあ、最後まで聞いてください。
  ここに砂時計が有ります。
  これは5分で砂が落ち切ります。
  皆さんには5分間、攻撃して、わたしが串焼きを食べるのを阻止して貰います。
  わたしが円から出るか、5分以内に串焼きを食べきれなかったらクリアです。
  先ずはレオさんから始めましょうか」

  わたしは串焼きを1本持ち、円の中に入ります。
  
「では、始め」

  わたしは「始め」と言うと同時に串焼きの1番上の肉にかぶりつきました。
  レオさんは少し戸惑った様な表情を浮かべましたが、直ぐに顔を引き締めると、斬りかかってきました。
  
「はぁ!」

  なかなか鋭い斬撃を串焼きの串で受け止めます。
  ただの串ですが魔力を層にして纏わせている為、問題なく剣を受け止めます。

「なに⁉︎」

「え、ど、どうなっているんですか⁉︎」

「なぜ、あんな細い串で剣を止められるんだ⁉︎」

「落ち着いて! アレは魔力強化よ。
  串に魔力を込めて強化しているのよ」

「しかし、強化しているとはいえ、あの細い串で剣を受け止める事なんて出来るのでしょうか?」

「出来てるんだから仕方ないじゃない」

  ふふふ、驚いていますね。
  層にした魔力の組み方によって強度を跳ね上げる事ができるのですよ。
  ヒントは『ハニカム構造』です。

「はぁぁあ!」

  レオさんの剣は所謂ところの教科書剣術ってやつです。
  串で剣戟を受け流し続けます。
  そして、肉が残り一切れになった時、レオさんの剣を絡め取り、空高く跳ね上げました。
  
「はい。 そこまで」

  最後の肉を飲み込んでだわたしは、終わりを告げました。
  すでに疲労困憊だったレオさんは膝をつき荒い息を整えようとしています。
  おっと、どうやら威圧の魔眼が少し発動していた様ですね。
  まだコントロールが難しいのです。

「剣術は綺麗に習得出来てますね。
  しかし、それだけでは実戦で勝つ事は出来ません。
  ただ、型通りに剣を振るうのではなく、相手の呼吸を乱す様に、相手の行動を遮る様に剣を振わなくてはなりませんよ」

  わたしはレオさんの剣術についての評価を告げると砂時計を元に戻し、2本目の串焼きを手に取りました。

「では次は、クルスさん」

  わたしは青くなっているプルプルしているクルスさんに声を掛けるのでした。
 









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