上 下
172 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

162話 自己紹介とわたし

しおりを挟む
  国王様とお話しした翌日、わたしは学院の廊下を歩いています。
 これから半年程、戦い方を教える生徒達に会いに行くところです。
  わたしを案内してくれているのは魔道工学を教えているサマリオ先生です。
  話した感じはとても生徒思いのいい先生なのですが……なんと言いますか……こう……暗いです。
  漫画に出て来る悪い魔法使いの要素を凝縮するとサマリオ先生の様な見た目になるでしょう。

「ユウ先生に訓練して貰うのはSクラスの5人です。
  皆、優秀な生徒なのですが色々と話題の絶えない者達でして……」

「フレイド辺境伯様から聞いています。
  かなりの無茶をしている様ですね」

「確かに無茶ばかりです。
  我々、教師の中に邪教徒が紛れ込んでいた事に気付いた彼らは自らの手で邪教徒を倒そうとしたりしましたからね」

  サマリオ先生は悪巧みをしている悪役にしか見えない苦笑いを浮かべると教室の前で足を止めました。
  
「ここがSクラスの教室です。
  今日は模擬戦の実習は有りませんが1限目をホームルームにして有りますので生徒達と自己紹介などを済ませて下さい」

「分かりました」

  サマリオ先生が扉を開けて教室の中に入って行きます。
  わたしも遅れないようにサマリオ先生の後に続きます。
  広めの教室には5つの机と教卓が1つ有ります。
  5つの机にはそれぞれ生徒達が座っています。
  女性2人と男性が3人です。
  男性の内1人はアルベルトさんですね。
  生徒達の視線がわたしに注がれます。

「え~すでに知っていると思うが君達Sクラスは特別に、しばらくの間、Aランク冒険者の方に指導して貰えることになった。
  ガスト辺境伯様が依頼し、来て頂いた方だ。
  失礼のないように」

  それだけ言うとサマリオ先生は踵をかえしました。
  不祥事を起こし、教師が減った今、サマリオ先生はとても忙しいのです。

「では、後はよろしくお願いします」

「はい、お任せください」

  わたしはサマリオ先生と言葉を交わすと教卓の前に立ちました。
  机が高いようで、胸の位置まであります。
  わたしは肩から掛けたバックから取り出した様に見えるようにアイテムボックスから木箱を取り出しました。
  なんで木箱なんて入っているのでしょうか?
  今度、1度、アイテムボックスの中を整理しなければいけませんね。
  盗賊の死体とか出て来たらいやですね。
  わたしは木箱を足元に置くと、それを踏み台にして教卓の前に立ちました。

「今日からしばらくの間、皆さんに戦い方と薬草学を教えます。
  冒険者のユウと言います。
  よろしくお願いします」

  わたしに向けられてる視線に込められているのは、興味、困惑、好機、怯えと様々です。
  わたしは生徒の皆さんに端から自己紹介をお願いしました。

「レブリック公爵家の長女、シンシア・フォン・レブリックです。
  ユウ先生、よろしくご指導下さいまし」

  ん?
  シンシア・フォン・レブリックですか…………何処かで聞いた事のある名前ですね?
  ああ!
  色々と噂を聞いたAランク商人ですか!
  まさか学院で出会うとは驚きです。
  シンシアさんは綺麗な銀髪を赤い髪留めで纏めた美少女です。
  わたしといい勝負ですね。

「ミルミット王国、第1王子のレオンハルト・フォン・ミルミットだ。
  よろしく願う」

  彼が国王様の息子さんですか。
  レオンハルトさんも豹変したりするのでしょうか?

「アルベルト・フォン・ガストです。
  よろしくお願いします」

  アルベルトさんです。
  何故かわたしを見る目に恐れが含まれています。
  解せぬ。

「マーリンです、よろしくお願いします」

  簡潔に自己紹介したのは、所々に金が混ざった赤い髪を持つ、少し気の強そうな少女でした。
  たしか、大賢者とか言われている人の弟子だとかサマリオ先生が言っていました。
  わたしはじっと彼女を観察します。

「な、なんでしょうか、先生?」

「いえ、なんでもありませんよ」

  なんだか彼女とは仲良くなれそうです。

「僕はクルスです。
  よろしくお願いします」

  最後はわたしを見てずっとビビっていた中肉中背の男性です。
  彼にはなんとなく違和感を感じます。
  なんでしょうか?
  わたしはクビを捻りますがよく分かりませんでした。

  その後、ホームルームが終わったので教室を後にします。
  本格的に教えるのは明日、模擬戦の授業からです。
  まぁ、ホームルームで貴族の3人をシア、レオ、アルと言う愛称で呼ぶ事になったので、出会いとしてはまずまずですね。









 
  







しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...