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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》
159話 手合わせとわたし
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辺境伯邸の中庭に移動したわたしとアルベルトさんは、シルバさんが持って来てくれた模擬戦用に刃を潰した武器を手に取り、距離を開けて向かい合っています。
アルベルトさんは1メートルちょいくらいの短槍、わたしはショートソードです。
流石に模擬戦用の戦斧は有りませんでした。
「では、始めましょうか」
「は、はい。
よろしくお願いします」
アルベルトさんは短槍を構え、わたしの様子を伺っています。
「お先にどうぞ」
アルベルトさんに先手を譲ってあげましょう。
大人の余裕ってやつです。
「は、はい…………行きます!」
アルベルトさんは深く腰を落とすと一足飛びに間合いを詰め短槍を突き出しました。
「なかなか鋭い突きですね」
わたしは軽くズラし短槍を躱します。
「は!」
アルベルトさんは槍を手元に戻したかと思うと上段、中段、下段と連続で槍を突き出してきます。
カン!
キン!
ガッ!
ショートソードを振り、短槍を弾きます。
「くっ!」
ん?
動きが、少し荒くなりましたね。
動きに焦りがあります。
さっきの三段突きは取って置きだったみたいですね。
ギギギィィイ!
アルベルトさんの短槍を全てたたき落します。
「ばかな⁉︎」
攻撃を全て防がれた事に驚愕の声を上げたアルベルトさんは後ろに跳び距離を取ると魔法を詠唱します。
「切り裂け 烈風 エアカッター」
いくつもの風の刃がわたしに殺到します。
わたしはショートソードに軽く魔力を込めて風の刃を形成している魔力の中心を叩き切ります。
風の刃は魔法としての形を保てなくなり霧散しました。
「そんな⁉︎」
またもや驚愕しています。
ワンパターンですよ。
「ふっ!」
わたしのショートソードの切っ先がアルベルトさんの喉元で止まります。
「ま、まいりました。」
そう言うとアルベルトさんは尻餅をつき、息を整えようとしています。
「ははは、手も足も出ないか。
流石だなユウ殿」
フレイド様はアルベルトさんに手を貸しながら笑います。
「ユウ殿、どうだった、私の息子は?」
「なかなか強いですね。
少なくともそこらへんのチンピラと区別がつかない様な冒険者よりは強いです。
しかし、残念ながら戦い方を知りませんね。
実戦での立ち回りを習得すればもっと強くなれますよ」
「そうか、ユウ殿に鍛えて貰うのが楽しみだな」
「ふふふ、そうですね。
取り敢えず、今軽く戦った限りだと魔法の使い方がよくないですね」
「魔法がですか? 確かにユウ殿に簡単に打ち消されてしまいましたが……」
わたしの言葉にアルベルトさんは、魔法の練度を指摘されたと勘違いしているようですね。
「いえ、魔法の練度は十分実戦で使用できるレベルでしたよ」
「え、じゃあ一体何がいけなかったのでしょうか?」
「使い方ですよ。
アルベルトさんは槍がダメだと判断した時、わたしから距離を取って魔法を打ち込んで来ましたよね?」
「はい、詠唱の隙を突かれないように距離を取るのは魔法戦闘の基本だと習いました」
「確かにその考えは正しいです。
しかし、それは魔法使いの話です。
わたしやアルベルトさんの様に武器が主体ですが魔法も使える人間なら、武器や体術に魔法を組み合わせる戦い方がおすすめです」
「武器と魔法を……」
「ふふ、詳しくは学院で教えます。
それまでに自分の戦い方を良く考えておいて下さい」
わたしは何故か疲れ切っているアルベルトさんにそう告げると汗を流すために中庭を後にするのでした。
アルベルトさんは1メートルちょいくらいの短槍、わたしはショートソードです。
流石に模擬戦用の戦斧は有りませんでした。
「では、始めましょうか」
「は、はい。
よろしくお願いします」
アルベルトさんは短槍を構え、わたしの様子を伺っています。
「お先にどうぞ」
アルベルトさんに先手を譲ってあげましょう。
大人の余裕ってやつです。
「は、はい…………行きます!」
アルベルトさんは深く腰を落とすと一足飛びに間合いを詰め短槍を突き出しました。
「なかなか鋭い突きですね」
わたしは軽くズラし短槍を躱します。
「は!」
アルベルトさんは槍を手元に戻したかと思うと上段、中段、下段と連続で槍を突き出してきます。
カン!
キン!
ガッ!
ショートソードを振り、短槍を弾きます。
「くっ!」
ん?
動きが、少し荒くなりましたね。
動きに焦りがあります。
さっきの三段突きは取って置きだったみたいですね。
ギギギィィイ!
アルベルトさんの短槍を全てたたき落します。
「ばかな⁉︎」
攻撃を全て防がれた事に驚愕の声を上げたアルベルトさんは後ろに跳び距離を取ると魔法を詠唱します。
「切り裂け 烈風 エアカッター」
いくつもの風の刃がわたしに殺到します。
わたしはショートソードに軽く魔力を込めて風の刃を形成している魔力の中心を叩き切ります。
風の刃は魔法としての形を保てなくなり霧散しました。
「そんな⁉︎」
またもや驚愕しています。
ワンパターンですよ。
「ふっ!」
わたしのショートソードの切っ先がアルベルトさんの喉元で止まります。
「ま、まいりました。」
そう言うとアルベルトさんは尻餅をつき、息を整えようとしています。
「ははは、手も足も出ないか。
流石だなユウ殿」
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「ユウ殿、どうだった、私の息子は?」
「なかなか強いですね。
少なくともそこらへんのチンピラと区別がつかない様な冒険者よりは強いです。
しかし、残念ながら戦い方を知りませんね。
実戦での立ち回りを習得すればもっと強くなれますよ」
「そうか、ユウ殿に鍛えて貰うのが楽しみだな」
「ふふふ、そうですね。
取り敢えず、今軽く戦った限りだと魔法の使い方がよくないですね」
「魔法がですか? 確かにユウ殿に簡単に打ち消されてしまいましたが……」
わたしの言葉にアルベルトさんは、魔法の練度を指摘されたと勘違いしているようですね。
「いえ、魔法の練度は十分実戦で使用できるレベルでしたよ」
「え、じゃあ一体何がいけなかったのでしょうか?」
「使い方ですよ。
アルベルトさんは槍がダメだと判断した時、わたしから距離を取って魔法を打ち込んで来ましたよね?」
「はい、詠唱の隙を突かれないように距離を取るのは魔法戦闘の基本だと習いました」
「確かにその考えは正しいです。
しかし、それは魔法使いの話です。
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「武器と魔法を……」
「ふふ、詳しくは学院で教えます。
それまでに自分の戦い方を良く考えておいて下さい」
わたしは何故か疲れ切っているアルベルトさんにそう告げると汗を流すために中庭を後にするのでした。
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