神々の間では異世界転移がブームらしいです。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

133話 紹介とわたし

  わたしは先ず、ルクスさんの意識を奪っているポイズントレントの毒を解毒する為の薬を調合します。
  悪魔の血の解毒には複数の毒を解毒する必要がある上、解毒する順番も重要です。
  薬には毒との相性も有るのです。
  組み合わせによっては毒が強化され即死させてしまう恐れも有ります。
  ポイズントレントの木の実から作られた毒には人の意識を奪う効果が有るのです。

「ガボンさん、リーネ草とナナの実の粉末を3対2の割合で混ぜて下さい」

「分かった」

  ガボンさんの調合技術は非常に高く、正確な調合が出来ます。
  流石、宮廷薬師長です。

  1時間程して完成した薬を意識のないルクスさんに無理やり飲ませます。
  少々強引ですが仕方がありません。
  ルクスさんが薬を飲み込んだのを確認し、わたしも夕食を頂く事にしました。
  ポイズントレントの毒を治療する解毒薬を飲んだ後は半日程、別の解毒薬を飲む事は避けなければなりません。
  かなり強い薬ですからね。
  休ませないと内臓にダメージを与えてしまいます。
  わたしは執事のヤナンさんに連れられて移動します。
  先程、遠方の領地からルクスさんのご両親であるダイン公爵と公爵夫人が到着されたので挨拶がてら食事を共にする事になったのです。
  領地を離れ帝都にいたルクスさんが暗殺者に襲われたと聞き、急いで帝都に駆けつけたそうです。
  ヤナンさんが扉を開け、部屋の中に招き入れられます。
  落ち着いた調度品とテーブルと言うシンプルな部屋です。
  テーブルには既に4人が座っています。
  2人は当然ダイン公爵と公爵夫人でしょう。
  そしてもう1人はわたしも知っています。
  ハイランド・フォン・グリント皇帝陛下です。
  という事はもう1人の女性は皇妃様でしょうか？
  
「本日はお招きに預かり光栄でございます」

  こんな感じで良いでしょうか？
  
「この場は公の場では無い、過度な儀礼は不要だ、さぁユウ殿も掛けたまえ」

「失礼します」

  そして皇帝陛下から皇妃のイザベラ様、ダイン公爵のルーイド様、公爵夫人のサリナ様を紹介して頂きました。

「それで、倅の容体は如何なのだ？」

「かなり厄介な毒薬を使われていますが毒受けてからずっと治癒魔法をかけ続けていたのが幸いしています。
  時間はかかりますが解毒は可能ですよ」

「そうか、倅の事をよろしく頼む」

「お願いします、ユウ様」

  ルーイド様とサリナ様が揃って頭を下げました。

「あ、頭を上げて下さい。
  勿論、全力で治癒します」

  そして、一通りの話が終わった後食事が運ばれて来ました。
  流石宮廷の料理です。
  高級感が違います。
  わたしは会話と食事を楽しみました。
  サリナ様にフレイド様やミッシェル様、ユーリア様の近況を聞かれミッシェル様の妊娠を教えると驚いていました。
  サリナ様はフレイド様と学院時代、クラスメイトだったそうです。  
  その為、ミッシェル様とも親しく、ユーリア様の病気も心配していた様です。
  美味しい食事を食べ終えた頃、デザートが運ばれて来ました。
  いくつものフルーツにカスタードクリームを乗せグラニュー糖見たいな物を掛けて焼いた物ですね。
  フルーツグラタンの様な感じです。
  スプーンで一口分を持ち上げると甘いクリームと火を通す事で甘味を増したフルーツの香りが…………
  わたしは鋭く他の4人に視線を向けます。
  4人共、フルーツグラタンをスプーンに乗せて今まさに口に運ぼうとしている所でした。

「痺れよ 束縛の枷 パラライズ」

  わたしの魔法により4人の動きが止まり、スプーンを取り落とします。
  背後に控えていたヤナンさんとマリサさんが驚いて咄嗟に武器を手にしています。
  2人ともかなりの強さですね。
  部屋の隅にいた護衛の騎士も抜剣し切っ先をわたしに向けます。
  流石皇帝陛下の護衛を務める騎士です。
  彼らも強いですね。
  部屋の中には緊張した空気が張り詰めるのでした。