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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

130話 帝都とわたし

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「ユウ殿のおかげで村人に死者が出ず済みました。
  ありがとうございます」

  そう言ってわたしに笑いかけるのは年の頃70歳くらいのお婆さんです。
  彼女がこの村の村長さんだそうです。
  現在、村はオークを撃退した事で宴会が行われています。
  村長さんの家には村長さんとわたし、隻腕の治癒術師のローザさん、ローザさんの旦那さんのレインさんの4人です。

「いえいえ、村人に死者が出なかったのはローザさんが直ぐに治癒魔法を掛けて治療したからですよ」

「いえ、わたしはそんな……」

「もちろんローザ様にも感謝しております。
  ローザ様とレイン殿が居て下さらなければこの村は遠に滅びております」

  村長さんはローザさんとレインさんにも深々と頭を下げました。
  
「お顔を上げて下さい村長様」

「そうです。
  行き場のなかった私たちを受け入れてくれたご恩をお返ししただけです」

  ローザさんが村長さんの肩に優しく触れます。

「お二人はこの村の出身ではないのですか?」

「はい、私たちはイザール神聖国の出身なんです」

「イザール神聖国といえばたしか……」

「ああ、6年ほど前に魔物のスタンピートで滅びてしまった国だ」

「6年前、私たちは魔物の侵攻に敗れこの国に逃げ延びました。
  私の腕と目もその時に魔物にやられてしまったのです」

「…………俺が付いていながら!」

「レイン、貴方が居てくれたからこの程度で済んだのです」

「ローザ……」

  むむむ、わたしと村長さんが居るというのに何だかピンクな空気です。

「おっほん!」

「おっと、これは失礼」

「す、済みません」

  わたしの咳払いにレインさんは飄々とローザさんは顔を真っ赤にして反応します。

「さて、取り敢えず話はこの辺にしておくかの……ユウ殿、今日は是非、我が家に泊まって行って下され」

「ありがとうございます」

  こうしてわたしは今晩の宿を得ました。
  オーク肉を使ったこの村の郷土料理はなかなか美味しかったです。



  翌日、わたしは朝早くに村を出ます。
  村の入り口には村長さんとレインさん、ローザさんが見送りに来てくれました。

「ユウ殿、本当にオークを全て貰っても良いのかの?」

「はい、構いませんよ。
  わたしは急ぎの依頼を受けて居るので解体している時間がないのですよ。
  それにオーク料理を分けて貰いましたからね」

「ユウさん、是非またこの村に寄って下さい」

「また会おう」

「はい、お二人もお元気で」

  わたしは別れを告げるとオリオンと飛び立ちました。
  村長さんに聞いた話では大きな街道こそ無いもののこの村から帝都までは10日程の距離らしいです。
  オリオンのスピードなら明日には帝都に着くと思います。


  野営を挟んだ翌日、遠目に帝都が見えて来ました。
  帝国は300年前に邪神を封印した勇者の仲間だった剣聖と呼ばれた剣士が邪神によって壊滅してしまった小国を纏め上げて建国された大国です。
  そして、驚くべき事は勇者の仲間だった初代皇帝は未だに存命であるらしいのです。
  なんでもハーフエルフなのだとか。
  もしかしたら勇者の話とかを聞けるかも知れませんね。
  楽しみです。
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