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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

129話 撃退とわたし

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  わたしの戦斧が逃げ惑う盗賊の背中を捉えます。

「ぐぁぁあ!」

  こいつらが商人さんを襲っているところを見つけて襲撃したのです。
  わたしとオリオンが不意打ちで頭目と弓持ちを殺したため、指揮と援護を失った盗賊団が壊滅するは早かったです。
  ガストから旅立ってからいくつ目になるのかも分からない盗賊団を潰し、商人さんからの勧誘を断ったわたしはまた、オリオンと空を飛んでいます。
  今朝早くに村を出発したわたしは、昼前に盗賊団を潰しました。
  旅路は順調です。
  街道をノロノロと進んでいては、まだミルミット王国の王都にもたどり着いていないでしょう。
  しかし、空を行くわたしはもう少しで王国領を抜け、帝国の領土に入ります。
  


  2日後、王国との国境に流れる川を渡り、帝国領に入りました。
  唯一、川に架かる橋が両国の関所です。
  冒険者は各国の間を自由に行き来ができますが、流石に国境を越えるには数時間のチェックが必要です。
  しかし、わたしはここで竜騎士のシグルさんから渡された書状を取り出し関所の責任者さんに渡す事でノーチェックで即座に国境をこえたのです。
  帝国に入ってから数時間、暗くなる前に野営場所か村を探したいです。
  関所で聞いた情報ですが、国境から帝都までは半月くらいらしいので、オリオンなら数日で着くはずです。
  野営に適した場所を探しながら飛んでいると、どこからか剣戟の音が聞こえて来ました。
  それと共に風に乗って血の匂いもして来ました。

「オリオン、血の匂いのする方に飛んでください」

「キュっ!」

  オリオンは眼下にあった大きな街道を外れると森の上を進みます。
  数分後、山奥の小さな村が見えて来ました。
  村からは黒い煙が何本か上がっています。
  
「魔物の襲撃ですね」

  村はオークの群れに襲われているようです。
  崖を背にする様に作られたその村は、よく言えば背後の心配が無い、悪く言えば逃げ場がない立地をしています。 
  村の正面には村の男衆が鍬や鎌を狩猟用であろう弓を持ち戦っています。
  中には数人、剣を持った者も居ます。
  わたしは村人達の上を掠める様に飛んだオリオンから飛び降り、オークを両断しながら降り立ちました。

「な、なんだ君は⁉︎」

  素人の村人達くらべて、明らかに強そうな20歳くらいの剣と大きな盾を持った青年がわたしに問いかけます。

「冒険者です、助太刀します」

「…………そうか、助かる」

  青年はわたしの力量を推し量る様な目を向けた後、わたしの参戦を認めました。
  わたしを加えた村人達は、オークの群れを押し返して行きます。
  30分程でようやくオークの群れを倒しました。
  数匹のオークが逃げ出しましたが、仕方ないでしょう。
 しかし、あの大きな盾を持った青年はとても強かったです。
  冒険者で言うとBランク並みの強さだと思います。
  こんな山奥の村にこんなに強い人が居るとは少し意外です。
  彼ほどの強さが有れば帝都で、冒険者になれば、十分稼いで行けるはずです。
  まぁ、この村の出身とかかも知れませんね。
  
「ダン! しっかりしろダン!」

  お⁉︎
  どうやら村人に重傷者が出たらしいですね。
  急いで治療しなければ!

「通して下さい、通して下さい!」

  わたしが人だかりに向かっていると、村人達をかき分けて女性がこちらに駆け寄って来ます。

「ローザ様だ! おい、道を開けろ!」

「ローザ様、ダンを助けて下さい!」

「見せて下さい!」

  重傷を負った男性に駆け寄った女性は傷に手をかざし呪文を唱えます。

「癒しを司る者よ 慈悲の光を ヒール」

  女性の治癒魔法は初級のヒールでありながら重傷を負った男性の傷を瞬く間に癒して行きます。
  相当な練度ですね。
  相当な治療魔法の使い手であろう女性は肩まである輝く銀髪で右腕が肩から有りません。
  また、右目に眼帯をつけています。
  わたしとお揃いです。
  
「ローザ!」

  男性の治療を終えた女性に先ほどの青年が駆け寄ります。

「レイン、怪我は有りませんか?」

「ああ、僕は大丈夫だ、危ないところを彼女が助太刀してくれたおかげでね」

  青年が視線でわたしを示します。

「主人と村人達をお守り下さり、ありがとうございます」

  女性は深々と頭を下げました。
  どうやらあの青年の奥さんの様です。

  その後、わたしは村長さんの家に招かれ、村はオーク撃退を祝して、大宴会となりました。


  

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