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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

124話 足止めとわたし

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  わたしの戦斧と怪人108面相のステッキが打ち合います。
  パワーはわたしの方が上ですが、スピードは怪人108面相の方が上です。
  わたしはゲームならスピードは捨てて攻撃力と防御力にステータスを振るのですが、現実であるこの世界ではスピードは重要です。
  どれ程強力な攻撃でも当たらなければどうと言う事は無いのですよ。
  すでに何度目か分からない程の打ち合いを重ねています。

「むむ、これでは本当に予告の時間に遅れてしまうのである」

「まあまあ、お気になさらずに」

「そう言う訳には行かないのである。
  仕方ない、こればかりは使いたくは無かったのであるが我輩は魔法を使わせて貰うのである」

「魔法?」

「うむ、これは、巨大な城すら一撃で粉々にする魔法、これを受ければいくらお嬢さんでも無事では済まないだろう」

「ブラフでは?」

「試してみると良いのである」

  怪人108面相はステッキをアイテムボックスに入れ、両手を胸の前で構えました。
  怪人108面相の両手の間に魔力が集まって行きます。
  
「こ、こんな所でそんな魔法を使う気ですか⁉︎」

「ふふふ、食らうのである!」

  ん? 城すら粉々にする強力な魔法の割りには集めた魔力が少ないですね。
  アレではせいぜい効果を強化した生活魔法くらいしか使えませんよ?

灯りバ○ス‼︎」

「ギャァア、目が、目がぁぁあ!」

  怪人108面相の放ったのは、生活魔法の1つ灯りライトの魔法です。
  しかし、かなりの魔力を込めていたため、そこそこ強力な光です。
  眩しいですが、目潰しと言う程ではありません。
  わたしが目を、抑え悶えて居るのはただの美学です。

「って何をやらせ、うぉっ⁉︎」

「ぬ! これも避けるのであるか」

  目を開けた瞬間、目の前に迫ったステッキをギリギリの所で躱わします。

「ふ、不意打ちとは、卑怯ですよ!」

「戦闘中に目を瞑る者が悪いのである」

  くっ、正論です。
  ですが、わたしにも良い考えが浮かびました。
  目には目を、歯に歯を、と言うやつです。
  わたしは戦斧をアイテムボックスに入れると両手を額に構えます。

「む、何をする気であるか」

灯り太○拳!」

「………………」

「………………」

「食らうのである!」

  怪人108面相は、わたしの灯りライトを無視して殴り掛かって来ました。
  その攻撃を躱わし、ノリの悪い怪人108面相にクレームを付けます。

「ひ、卑劣な!」

「灯りの生活魔法程度で目をくらませる訳ないのである!」

「この!」

  わたしは攻撃の威力を落としてでもスピードと、手数を増やす為、水龍の戦斧から雷鳴の鉈と影縫いのヤイバへと持ち替えます。

「ぬ、速いのである」

「そこだ!」

  わたしは怪人108面相の隙をつき影縫いの刃を投擲しました。

「甘いのである!」

  なんと怪人108面相は完璧なタイミングで投げた影縫いの刃を躱したのです。
  とても、人間の反射神経とは思えません。
  しかし、躱されたからと言ってわたしの策が失敗した訳ではありません。
  避けられた影縫いの刃は、怪人108面相の背後に有った奴の影に深々と突き刺さっています。

「これで、貴方の動きは封じましたよ」

「……………………それはどうであるかな?」

  怪人108面相がニヤリと笑います。

「この様な小細工は我輩には通用しないのである」

「なに⁉︎」

  なんと怪人108面相はなんの問題もないとばかりに普通に動き始めたのです。
  ばかな、影縫いの刃はしっかりと起動してた筈なのに!

「くっ!」

  怪人108面相の得体の知れない能力にわたしは距離を取ると、アイテムボックスから大量のナイフと取り出し、牽制にでもなればと次々に投擲して行きます。
  怪人108面相の技量であればコレくらいは難なく撃ち落とせる筈です。

「む、コレは不味いのである」

  怪人108面相の振るうステッキにナイフが撃ち落とされると思った時です。
  なんとナイフがステッキをすり抜けました。
  そしてナイフは、ステッキだけでなく、怪人108面相の身体までもすり抜け、背後の地面に突き刺さりました。

「まさか!」

  わたしは目を瞑り、魔力を体の中で練り上げます。

「はっ!」

  練り上げた魔力を一気に体外に放出しました。
  これは、ザジさんに教わった戦技アーツの技術の1つ、浄心じょうしんと言う技です。
  魔力を放出する事で、寄生タイプの精神系の魔法を回復する技です。
目を開けるとそこには地面に刺さったナイフと影縫いの刃、気絶している冒険者が居るだけです。

「くっ、幻影魔法ですか!」

  初めは、わたしと武器の打ち合いをしていましたので、実体が有った筈です。
  わたしの攻撃を受け止めず、避けるのみになったのは灯りの魔法をくらい、わたしが目を瞑った後からです。
  恐らくあの時、幻影魔法を、掛けられたのでしょう。
  わたしの異常状態耐性を貫いて幻術をかけてくると言うことは彼が神様から貰った固有魔法ユニークは間違いなく『幻影魔法』ですね。
  どうやら、足止めを食らってしまったようです。
  わたしは、急いで怪人108面相が向かったであろう宝物庫に向かって駆け出しました。










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