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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》
123話 交渉とわたし
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「では、私はテレサ様へ報告に参ります」
マリルさんはわたしに軽く頭を下げるとテレサ様が待機する高級宿へと向かって行きました。
怪人108面相はと言うと、庭で警備していた冒険者達に群がられています。
ド派手な登場をしたのですから当然です。
捕まえなくても報酬は貰えますが、捕まえれば特別報酬が貰えます。
当然、駄目元で挑むでしょう。
怪人108面相は、ステッキで次々と冒険者達を打ち倒して行きます。
「はっ!」
「む、なかなかやるのであるな!」
《遥かな大地》の3人が連携を駆使して攻撃し、初めて、怪人108面相の足を止める事が出来ました。
「しかし、我輩を捕らえるにはまだまだ実力不足である!」
怪人108面相は、リーナさんの弓の射線上にジークさんやガイルさんが入る様に、巧みに誘導しています。
リーナさんの弓の援護が無くなったジークさんとガイルさんは、ステッキの一撃を受けて意識を刈り取られてしまいました。
そして、リーナさんも弓を捨て、ナイフを抜きますが、ステッキで殴られ、意識を失います。
これで冒険者側は、わたし以外全滅です。
「さて、後はお嬢さんだけだが……どうだね、我輩を通してはくれないか?」
「面白いジョークです」
「お嬢さんはたしか、あの日、お姫様の隣にいた子だな。
なるほど、お嬢さんが噂のAランク冒険者だね。
たしかに、今までの者達とは格が違うな」
フランクに話しながら近づいて来ていた怪人108面相がピタリと足を止めます。
わたしの間合いのギリギリ外です。
怪人108面相は当然それを把握しているのでしょう。
「投降する気はありませんか?
テレサ様は悪い様にはしないと思いますよ?」
「そうであるな、恐らく、表向きには処刑されたと発表し、子飼いの隠密として、好遇して貰えるだろうな」
「そうですね。
悪い話ではないと思いますよ?」
「だが断る!」
こ、こいつ、いきなりぶっ込んで来ました。
「たしかに悪い話ではない様だが、我輩は誰かに縛られるのは御免である。
我輩は自由を愛するのだよ。
同郷であるお嬢さんなら我輩の気持ちも分かって貰えると思うのだがな」
「同郷……やはり貴方も日本人でしたか」
「肯定である。
怪人108面相と名乗っていたのだから、この世界に来ている我輩以外の2人の日本人に気づかれていると考えるのが当然である。
そして、日本人の容姿は目立つので丸わかりである」
「わたし達以外のもう1人は知っているのですか?」
「うむ、接触はしていないが、知っている」
「 どこに居るのですか?」
「それは……自分で探すのである!」
そう言うと怪人108面相はステッキをレイピアの様に鋭く突き出してきました。
「わっと⁉︎」
「そろそろ、予告の時間なのである。
お嬢さんには悪いが、お話はここまでである」
「いえいえ、遠慮する事はないですよ。
ゆっくりとお話しましょう、領主様の屋敷の地下牢で。
カツ丼……は無理ですがお刺身ならわたしのアイテムボックスに魚が沢山ありますし、わたしの手製のお醤油とお味噌も有りますよ?」
「なんと⁉︎
醤油と味噌を自作したのであるか!」
おお、この衝撃の事実を受けてもキャラを崩さずに口調を維持するとは、なかなかやりますね。
彼のあの変態的な口調や性格は恐らく演技です。
普段からアレでは正体がバレバレで仮面で顔を隠している意味がないのである……いえ、ないのです!
わたしが彼の正体を暴こうと推理していると、衝撃から戻った怪人108面相がステッキを突き出しながら交渉して来ます。
ガキン
「我輩にも醤油と味噌を分けて貰えないか?」
キキン
「それが攻撃しながら言うセリフですか⁉︎」
ゴッ
「時間が無いのである。
故に交渉と戦闘を同時に進めるのである」
キン
「斬新な考え方ですね」
ガス
「先進的と言って欲しいのである」
会話を続けながらも繰り出される激しい突きを避け、反撃の隙を伺います。
突きの中に時折混ぜられる横薙ぎや無詠唱のファイアーボールがいやらしいです。
ヒュッ
「いくらで売ってくれるかね?」
ボッ
「ん~お金には困っていないのですよね」
「ならばコレならどうだ?」
「何ですか、それ?」
わたしから距離を取った怪人108面相がアイテムボックスからひと抱え程ある水晶があしらわれた置物を取り出しました。
「コレは高級品のマジックアイテム、《安らぎの水晶》である」
「安らぎの水晶?」
「このマジックアイテムの効果を一言で説明するとエアコンである」
「なるほど、分かりやすいですね」
「この水晶を起動すると、温度、湿度などを快適な状態にしてくれるのである」
「おお、凄いです!」
なんて素晴らしいマジックアイテムなのでしょう。
「この安らぎの水晶と醤油、味噌を交換して欲しいのである」
「いいでしょう、では現在わたしが作った醤油と味噌の半分と新しく作った物を1樽でどうでしょう?
新しく作った樽はあと半年くらいで完成します」
「うむ、交渉成立である」
わたし達は武器をアイテムボックスに収めた後、マジックアイテムと醤油、味噌を交換しました。
そして、また距離を取ると武器を取り出し構えます。
「これで心置き無くお嬢さんを倒せるのである」
「こちらのセリフですよ」
第2ラウンド開始です!
マリルさんはわたしに軽く頭を下げるとテレサ様が待機する高級宿へと向かって行きました。
怪人108面相はと言うと、庭で警備していた冒険者達に群がられています。
ド派手な登場をしたのですから当然です。
捕まえなくても報酬は貰えますが、捕まえれば特別報酬が貰えます。
当然、駄目元で挑むでしょう。
怪人108面相は、ステッキで次々と冒険者達を打ち倒して行きます。
「はっ!」
「む、なかなかやるのであるな!」
《遥かな大地》の3人が連携を駆使して攻撃し、初めて、怪人108面相の足を止める事が出来ました。
「しかし、我輩を捕らえるにはまだまだ実力不足である!」
怪人108面相は、リーナさんの弓の射線上にジークさんやガイルさんが入る様に、巧みに誘導しています。
リーナさんの弓の援護が無くなったジークさんとガイルさんは、ステッキの一撃を受けて意識を刈り取られてしまいました。
そして、リーナさんも弓を捨て、ナイフを抜きますが、ステッキで殴られ、意識を失います。
これで冒険者側は、わたし以外全滅です。
「さて、後はお嬢さんだけだが……どうだね、我輩を通してはくれないか?」
「面白いジョークです」
「お嬢さんはたしか、あの日、お姫様の隣にいた子だな。
なるほど、お嬢さんが噂のAランク冒険者だね。
たしかに、今までの者達とは格が違うな」
フランクに話しながら近づいて来ていた怪人108面相がピタリと足を止めます。
わたしの間合いのギリギリ外です。
怪人108面相は当然それを把握しているのでしょう。
「投降する気はありませんか?
テレサ様は悪い様にはしないと思いますよ?」
「そうであるな、恐らく、表向きには処刑されたと発表し、子飼いの隠密として、好遇して貰えるだろうな」
「そうですね。
悪い話ではないと思いますよ?」
「だが断る!」
こ、こいつ、いきなりぶっ込んで来ました。
「たしかに悪い話ではない様だが、我輩は誰かに縛られるのは御免である。
我輩は自由を愛するのだよ。
同郷であるお嬢さんなら我輩の気持ちも分かって貰えると思うのだがな」
「同郷……やはり貴方も日本人でしたか」
「肯定である。
怪人108面相と名乗っていたのだから、この世界に来ている我輩以外の2人の日本人に気づかれていると考えるのが当然である。
そして、日本人の容姿は目立つので丸わかりである」
「わたし達以外のもう1人は知っているのですか?」
「うむ、接触はしていないが、知っている」
「 どこに居るのですか?」
「それは……自分で探すのである!」
そう言うと怪人108面相はステッキをレイピアの様に鋭く突き出してきました。
「わっと⁉︎」
「そろそろ、予告の時間なのである。
お嬢さんには悪いが、お話はここまでである」
「いえいえ、遠慮する事はないですよ。
ゆっくりとお話しましょう、領主様の屋敷の地下牢で。
カツ丼……は無理ですがお刺身ならわたしのアイテムボックスに魚が沢山ありますし、わたしの手製のお醤油とお味噌も有りますよ?」
「なんと⁉︎
醤油と味噌を自作したのであるか!」
おお、この衝撃の事実を受けてもキャラを崩さずに口調を維持するとは、なかなかやりますね。
彼のあの変態的な口調や性格は恐らく演技です。
普段からアレでは正体がバレバレで仮面で顔を隠している意味がないのである……いえ、ないのです!
わたしが彼の正体を暴こうと推理していると、衝撃から戻った怪人108面相がステッキを突き出しながら交渉して来ます。
ガキン
「我輩にも醤油と味噌を分けて貰えないか?」
キキン
「それが攻撃しながら言うセリフですか⁉︎」
ゴッ
「時間が無いのである。
故に交渉と戦闘を同時に進めるのである」
キン
「斬新な考え方ですね」
ガス
「先進的と言って欲しいのである」
会話を続けながらも繰り出される激しい突きを避け、反撃の隙を伺います。
突きの中に時折混ぜられる横薙ぎや無詠唱のファイアーボールがいやらしいです。
ヒュッ
「いくらで売ってくれるかね?」
ボッ
「ん~お金には困っていないのですよね」
「ならばコレならどうだ?」
「何ですか、それ?」
わたしから距離を取った怪人108面相がアイテムボックスからひと抱え程ある水晶があしらわれた置物を取り出しました。
「コレは高級品のマジックアイテム、《安らぎの水晶》である」
「安らぎの水晶?」
「このマジックアイテムの効果を一言で説明するとエアコンである」
「なるほど、分かりやすいですね」
「この水晶を起動すると、温度、湿度などを快適な状態にしてくれるのである」
「おお、凄いです!」
なんて素晴らしいマジックアイテムなのでしょう。
「この安らぎの水晶と醤油、味噌を交換して欲しいのである」
「いいでしょう、では現在わたしが作った醤油と味噌の半分と新しく作った物を1樽でどうでしょう?
新しく作った樽はあと半年くらいで完成します」
「うむ、交渉成立である」
わたし達は武器をアイテムボックスに収めた後、マジックアイテムと醤油、味噌を交換しました。
そして、また距離を取ると武器を取り出し構えます。
「これで心置き無くお嬢さんを倒せるのである」
「こちらのセリフですよ」
第2ラウンド開始です!
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