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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

114話 死闘とわたし

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  振り回されるグランアイズの腕を避けていると、攻撃が当たらない事にイラついたのか、身体を大きく沈めたと思うと、身体を勢いよく降り、右回りに回転し、尻尾を叩きつけて来ました。
  尾斬では無く、普通の身体強化された打撃です。
  まぁ、普通のストーンドレイクは身体強化なんて出来ないのですが……
  コレもわたしが戦った影響でしょうか?
  身を屈めて尻尾の薙ぎ払いをやり過ごしたわたしは、グランアイズの左の膝裏に狙いを定めて、水龍の戦斧を振りかぶります。
  
「魔装《鱗戦斧スケイルアックス》」

  わたしの周りに漂っていた光の鱗の内の3分の1程が水龍の戦斧に殺到します。
  あらかじめ小さく凝縮しておいた魔力を集める方が、1から魔力を凝縮するよりも精神的な負担が少なく、タメも短く済むのです。
  膝裏の皮の薄い場所に、5層の魔力を纏った戦斧を叩きつけます。
  水龍の戦斧は弾かれる事無く、グランアイズの膝裏に傷を付ける事が出来ました。

「ぐるるるぅ!」

  何度も有効打を与えたわたしを、獲物では無く、排除するべき敵であると認識したのでしょう。
  魔力を凝縮し、淡く光る爪をただわたしを殺す為だけに振るいます。
  魂を刈り取る死神の大鎌の如き爪の一薙ぎを後方に跳び、紙一重で躱すと、爪の一振りの勢いのまま左に回転し、尾斬を繰り出して来ました。 
  速いですね。
  まだ、空中に居るわたしはかわす事が出来ません。
  狙ってやっているのならとんでも無く頭が良いです。
  
「魔装《鱗盾スケイルシールド》」

  光の鱗が集り、わたしの前に輝く盾を形作ります。
  光の盾は、膨大な魔力が凝縮された尾斬を受けると砕け散ってしまいました。
  しかし、尾斬もかなり勢いを殺され、金剛の剣を使い、防御力を上げる事で何とか耐える事が出来ました。
  ダメージはあまり有りませんが、大きく弾き飛ばされました。
  これは体格差からくる物です。 
  流石にあれ程の質量のある攻撃をその場で受け止める事は出来ません。

「光鱗」

  残り僅かになっていた光鱗を補充します。
  精神的な負担が少ないとは言え、長時間は無理ですね。
  修行中は半日くらいは特に気にせずに維持出来ましたが、戦闘で激しく動いたり、光鱗を消費したりすると、思ったよりも消耗が激しいです。
  やはり、短期決戦は避けられません。
  そもそも、長期戦は不利です。
  スタミナが違い過ぎます。
  水龍の戦斧を双斧に持ち替えると、グランアイズの攻撃を避けながら懐に潜り込みます。
  
「魔装《鱗戦斧スケイルアックス》」

  両手の戦斧で、グランアイズの腹に裂傷を量産して行きます。

「ぐるらぁぁあ!」

「くっ!」

  大ダメージを受けたグランアイズが身体を捩り、わたしを振り払おうとします。
  特に強化された攻撃では有りませんでしたが、グランアイズの巨体からの一撃は人間から見ればその全てが必殺技です。
  夜天のローブと光鱗鎧のお陰で、耐えられますが、その衝撃はわたしの体力をガンガン削ります。
  周囲の光鱗が集り、先程、砕けてしまった光鱗鎧を修復して行きます。
  わたしの体力も減って来ましたが、グランアイズの方もかなりのダメージを受けている様です。
  
「ぐるらあっ!」

「今です!」

  グランアイズが威嚇の咆哮を上げた時に見せた僅かな隙に、魔力を込めて影縫いの刃を投擲します。
  影縫いの刃はグランアイズの身体を外れ、後ろの岩山に突き立ちます。
  外れた訳では有りません。
  わたしの狙いは、初めから背後の岩山に写っていたグランアイズの影です。
  影を固定されたグランアイズは動きを止めます。
  長くは持ちませんね。

「魔装《鱗戦斧スケイルアックス》」

  もう1度、双斧の連撃をグランアイズのボディに叩き込みます。
  影縫いの刃の効果が消える直前、水龍の戦斧の1撃で大きな傷を作っていた左の膝裏に右手の灰被りシンデレラを叩き付け、魔力を込めます。
  灰被りシンデレラから生み出された炎がグランアイズの脚を焼きます。
  わたしには火属性の適性が無い為、焼き払うと言う程の威力は有りませんが、それでも与えたダメージは小さくは有りません。

「ぐぉお!」

「あだだだ!」

  グランアイズが魔力を纏った爪を地面に思いっきり叩きつけました。
  砕けた地面は、無数の石飛礫となりわたしのなけなしの体力を削って行きます。
  グランアイズは全身から血を流し、満身創痍と言った様子です。
  対するわたしも体力も魔力も殆ど残っていません。
  光鱗の負担はわたしの予想より重かった様です。
  
「ぐぉぉぉぉおん!」

  グランアイズの右の爪に魔力が凝縮されて行きます。
  輝きが今までの物と違います。
  グランアイズの残りの魔力の大半をつぎ込んだのでしょう。
  まさに全力の1撃を放とうとしている様です。
  
「いいでしょう、受けて立ちます!」

  わたしも残りの魔力を水龍の戦斧に集めます。
  周囲の光鱗だけでなく、光鱗鎧も分解して全魔力を注ぎ込みます。
  恐らくこの攻撃を放つとわたしは魔力切れで倒れるでしょう。
  後の事はオリオンに任せます。
  わたしは上空を飛んで様子を伺っているオリオンの姿をチラリと見ると、グランアイズに向けて水龍の戦斧を構えます。
  魔力は今までで最高の11層です。

「さぁ、これが最後の「ぐるらぁぁあ!」です!」

  最後の最後まで…………許しません!
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