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アルタリア大陸編
36話 最下層『闘技場』②
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「“風刃”」
走りながら風の刃をゴブリンナイトへと打ち込む。
鋭い斬撃がゴブリンナイトの周囲に降り注ぎ、砂塵を巻き上げる。
だがゴブリンナイトはその砂塵を突き破り飛び出す。
私も流石にこの攻撃で倒せるとは思っていない。
案の定、ゴブリンナイトは腕や足に多少の傷を負ってはいるようだが、行動には支障がない様だ。
それでも風刃を避ける為、ゴブリンナイトはゴブリンジェネラルから離れざる負えなかった。
「“風壁”」
その隙を逃さずに、ゴブリンナイトとゴブリンジェネラルの間に風の障壁を作り出して分断する。
風の障壁は、土の障壁に比べると強度は数段落ちる。
しかし、地面に魔力を流し、土を操作する必要が無いので、展開の速さでは風の障壁の方が勝る。
ゴブリンジェネラルはマルクとモルドが抑えてくれると信じて、私は1番厄介な敵の回復手段を潰さなければならない。
「はっ!」
ゴブリンナイトに向けて分銅を投擲しながら駆け寄る。
だが、それに素早く反応したゴブリンナイトは、手にしていたショートソードで分銅を打ち払った。
しかし、すでに私はゴブリンナイトを鎌の間合いに捉えている。
「ギィ!」
ゴブリンナイトの首を狙ってふるった鎌だったが、ゴブリンナイトは分銅を打ち払ったショートソードを巧みに引き戻し、鎌の刃と首の間に滑り込ませた。
「くっ!器用な事を!」
やはり、強い。
強力な職業スキルを持つ魔物は、持たない魔物とは別物だ。
私は鎌を引き、後ろに退がりながら分銅を大きく振る。
分銅は遠心力を破壊力に変えながら弧を描く様に空を切り、ゴブリンナイトを横から奇襲する。
ゴブリンナイトは再び分銅を打ち払おうとショートソードを薙ぐが、私が少し力の入れ方を変えると、鎖は蛇の様に刃に絡みつく。
私は鎖を引きながら一気に踏み込み、逆手に持った鎌で打ち上げる様にゴブリンナイトの顎を狙ったが、ゴブリンナイトはとっさに体を逸らす事で刃の直撃を避けた。
「グギィ」
「しまった!」
ゴブリンナイトが何事かを呟くと風刃で傷ついていた手足の出血が止まる。
【治癒師】のスキルだろう。
あまり効果は高くはないみたいだけれど、治癒魔法を使えるようだ。
ゴブリンナイトは鎖が絡まったショートソードを手放すと腰から短剣を抜き放ち、突き出して来る。
「わわ⁉︎」
私は慌てて飛び退くと同時に、ショートソードが絡まったままの分銅を手元に引き寄せてゴブリンナイトのショートソードをアイテムボックスに回収する。
折角奪い取ったのに拾われたは堪らないからね。
ドゴっ!
「ぐぁぁあ!」
改めて攻め込もうとした時、不意に風壁を突き破ってモルドが吹き飛ばされて来た。
「モルド!」
しまった!時間をかけ過ぎた!
見れば風壁は勢いを弱め、その先から多少の手傷を負ったゴブリンジェネラルと額から血を流したマルクの顔が見えたら。
背後のソニアも弓での牽制に限界が来たのか、既に弓を捨て短剣を手にゴブリンナイトとやり合っている。
「不味い!回復させるな!!」
マルクの叫びに意識を目の前の【治癒師】持ちのゴブリンナイトへ戻すとゴブリンジェネラルとゴブリンナイトに治癒魔法を掛けるべく魔力を練っている。
「くっ!」
私はそれを妨害しようと人の頭程もある火球を作る。
しかし、それを見たゴブリンナイトは重心を爪先に乗せて腰を落とした。
私の放った魔法の軌道を見て素早く避ける構えだ。
あの【治癒師】持ちのゴブリンナイトは【疾走】のスキルを持っている。
このまま火球を放ってもや避けられるどろう。
私は躱されないよう火球から火炎の魔法へと変更しようとした。
これもウィル・オ・ウィスプの時に使ったホーリーライトからホーリーランスに変えるのと同じだ。
難しくはないが、魔力を操作して形を変える分、僅かに時間が掛かる。
それもゴブリンナイトに利する事ではあるが仕方のない事だろう。
「おぉぉお!」
すると、その時だった。
恐怖を吹き飛ばそうとする様に雄叫びを上げながらゴブリンナイトへと飛び掛かったモルドが、背後から組みつき、羽交い締めにしたのだ。
「リン!今だ!」
モルドが叫ぶ。
私としても『でも、それじゃモルドが!』と行きたい所だが、残念ながらそんな余裕は無い。
ゴブリンナイトを盾にする形だし、大丈夫だろう。
「“火球”」
私が放った火球はモルドに身動きを封じられたゴブリンナイトへと直撃した。
「ギィィ……」
全身に火傷を負い、膝をつくゴブリンナイト。
そして、そのゴブリンナイトの背後で所々に焼け焦げた革鎧を身につけたモルドが剣を振り、【治癒師】持ちのゴブリンナイトの首を落とした。
「やった……」
一瞬、モルドの肩から力が抜ける。
「モルド!!」
そう叫びながらマルクがモルドを突き飛ばした。
走りながら風の刃をゴブリンナイトへと打ち込む。
鋭い斬撃がゴブリンナイトの周囲に降り注ぎ、砂塵を巻き上げる。
だがゴブリンナイトはその砂塵を突き破り飛び出す。
私も流石にこの攻撃で倒せるとは思っていない。
案の定、ゴブリンナイトは腕や足に多少の傷を負ってはいるようだが、行動には支障がない様だ。
それでも風刃を避ける為、ゴブリンナイトはゴブリンジェネラルから離れざる負えなかった。
「“風壁”」
その隙を逃さずに、ゴブリンナイトとゴブリンジェネラルの間に風の障壁を作り出して分断する。
風の障壁は、土の障壁に比べると強度は数段落ちる。
しかし、地面に魔力を流し、土を操作する必要が無いので、展開の速さでは風の障壁の方が勝る。
ゴブリンジェネラルはマルクとモルドが抑えてくれると信じて、私は1番厄介な敵の回復手段を潰さなければならない。
「はっ!」
ゴブリンナイトに向けて分銅を投擲しながら駆け寄る。
だが、それに素早く反応したゴブリンナイトは、手にしていたショートソードで分銅を打ち払った。
しかし、すでに私はゴブリンナイトを鎌の間合いに捉えている。
「ギィ!」
ゴブリンナイトの首を狙ってふるった鎌だったが、ゴブリンナイトは分銅を打ち払ったショートソードを巧みに引き戻し、鎌の刃と首の間に滑り込ませた。
「くっ!器用な事を!」
やはり、強い。
強力な職業スキルを持つ魔物は、持たない魔物とは別物だ。
私は鎌を引き、後ろに退がりながら分銅を大きく振る。
分銅は遠心力を破壊力に変えながら弧を描く様に空を切り、ゴブリンナイトを横から奇襲する。
ゴブリンナイトは再び分銅を打ち払おうとショートソードを薙ぐが、私が少し力の入れ方を変えると、鎖は蛇の様に刃に絡みつく。
私は鎖を引きながら一気に踏み込み、逆手に持った鎌で打ち上げる様にゴブリンナイトの顎を狙ったが、ゴブリンナイトはとっさに体を逸らす事で刃の直撃を避けた。
「グギィ」
「しまった!」
ゴブリンナイトが何事かを呟くと風刃で傷ついていた手足の出血が止まる。
【治癒師】のスキルだろう。
あまり効果は高くはないみたいだけれど、治癒魔法を使えるようだ。
ゴブリンナイトは鎖が絡まったショートソードを手放すと腰から短剣を抜き放ち、突き出して来る。
「わわ⁉︎」
私は慌てて飛び退くと同時に、ショートソードが絡まったままの分銅を手元に引き寄せてゴブリンナイトのショートソードをアイテムボックスに回収する。
折角奪い取ったのに拾われたは堪らないからね。
ドゴっ!
「ぐぁぁあ!」
改めて攻め込もうとした時、不意に風壁を突き破ってモルドが吹き飛ばされて来た。
「モルド!」
しまった!時間をかけ過ぎた!
見れば風壁は勢いを弱め、その先から多少の手傷を負ったゴブリンジェネラルと額から血を流したマルクの顔が見えたら。
背後のソニアも弓での牽制に限界が来たのか、既に弓を捨て短剣を手にゴブリンナイトとやり合っている。
「不味い!回復させるな!!」
マルクの叫びに意識を目の前の【治癒師】持ちのゴブリンナイトへ戻すとゴブリンジェネラルとゴブリンナイトに治癒魔法を掛けるべく魔力を練っている。
「くっ!」
私はそれを妨害しようと人の頭程もある火球を作る。
しかし、それを見たゴブリンナイトは重心を爪先に乗せて腰を落とした。
私の放った魔法の軌道を見て素早く避ける構えだ。
あの【治癒師】持ちのゴブリンナイトは【疾走】のスキルを持っている。
このまま火球を放ってもや避けられるどろう。
私は躱されないよう火球から火炎の魔法へと変更しようとした。
これもウィル・オ・ウィスプの時に使ったホーリーライトからホーリーランスに変えるのと同じだ。
難しくはないが、魔力を操作して形を変える分、僅かに時間が掛かる。
それもゴブリンナイトに利する事ではあるが仕方のない事だろう。
「おぉぉお!」
すると、その時だった。
恐怖を吹き飛ばそうとする様に雄叫びを上げながらゴブリンナイトへと飛び掛かったモルドが、背後から組みつき、羽交い締めにしたのだ。
「リン!今だ!」
モルドが叫ぶ。
私としても『でも、それじゃモルドが!』と行きたい所だが、残念ながらそんな余裕は無い。
ゴブリンナイトを盾にする形だし、大丈夫だろう。
「“火球”」
私が放った火球はモルドに身動きを封じられたゴブリンナイトへと直撃した。
「ギィィ……」
全身に火傷を負い、膝をつくゴブリンナイト。
そして、そのゴブリンナイトの背後で所々に焼け焦げた革鎧を身につけたモルドが剣を振り、【治癒師】持ちのゴブリンナイトの首を落とした。
「やった……」
一瞬、モルドの肩から力が抜ける。
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そう叫びながらマルクがモルドを突き飛ばした。
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