飴と薬と鎖鎌

はぐれメタボ

文字の大きさ
上 下
33 / 36
アルタリア大陸編

33話 第2階層『遺跡』③

しおりを挟む
  頭上から振り下ろされるサビの浮いた蛮刀を、両の手の間に張った鎖で受け止めると同時に、左腕を引き衝撃を受け流す。
  するとスケルトンは蛮刀を振る下ろした格好のまま姿勢を崩した。

「はっ!」

  私は不用心にも目の前に晒された頸椎を目掛けて右手の鎌を一閃する。
  それでもなお、蛮刀を振るおうとするスケルトンだったが、足下に落ちて来た髑髏を踏み抜くとガラガラと音を立てて崩れて行った。

「あと何体くらいだ?」

「4~5体ってところね」

  息も絶え絶えに問うマルクに代わり、数を数えてあげた。

「…………⁉︎」

「モルド⁉︎」

  突然、モルドが私達の前に飛び出すと腰を落として盾を構える。
  直後、モルドの前方から大きな爆発音と激しい熱風が私達の方へと押し寄せて来た。

「ぐっ!」

「な、なに?」

「これは……魔法?」

  見れば残りのスケルトンの中心に杖を構えたスケルトンが居る。

「何だ?魔法を使うスケルトンなんて聞いたことないぜ?」

「まさか……死の魔術師レッサーリッチ⁉︎」

「…………Dランクダンジョンで……あり得ない」

  ソニア達が驚愕の声を上げる。
  リッチと言えば、魔法を使うアンデットと言われて1番初めに思い浮かぶものだろう。
  リッチとは高位の魔術師が死霊術ネクロマンシーの禁術や邪悪な呪いなどで不死者へと堕ちた存在だ。
  それは、例え“下位レッサー”であったとしても駆け出しに毛の生えた程度の冒険者が勝てる相手ではない。
  
  しかし……私にはいた。

「落ち着いて!アレはリッチなんかではないわ!
  “聖なる光ホーリーライト”」

  ホーリーライトに照らされてスケルトンは動きを止める。
  だが、その光の中であって、中央の杖持ちのスケルトンはガタガタと震え出していた。
  そして、杖持ちのスケルトンはとうとう崩れ落ちてしまった。

「あ、あれは!」

「あいつが魔法を使った正体よ!」

『ウィル・オ・ウィスプ 』
○クラス
【魔法使い】
○スキル
騒霊ポルターガイスト

  ホーリーライトでスケルトンの骨から引き剥がされたのは青白く燃える火の玉、ウィル・オ・ウィスプ だった。
  おそらく【騒霊】とか言うスキルでスケルトンの骨を操っていたのだろう。
  ウィル・オ・ウィスプ の種族固有のスキルかも知れない。
  
  私は【鑑定】で見抜く事が出来たが、冒険者の中にはDランクダンジョンである《始まりの洞窟》でリッチと遭遇したと勘違いしてパニックに陥る者も居るのではないかと思う。
  如何にも最終関門然とした問題を正解した直後、大量のスケルトンの襲撃に加えて偽リッチとは、実に嫌らしい。
  このダンジョンを創った神とやらは性格が悪いに違いない。

  ウィル・オ・ウィスプ は怪しく揺らめくその身を翻して先程のダメージが残るモルドへと襲い掛かった。

「モルド!」

「不味い!」

  ソニアとマルクがモルドのカバーへと走る。

防壁ウォール

  私は地面に手を置くと魔力を込めてモルドとスケルトンの間に土壁を作り上げる。

「うぉぉお!」

  マルクはモルドの盾を足場に跳躍するとウィル・オ・ウィスプ を真っ二つに斬りつける。
  しかし、ウィル・オ・ウィスプ は一度霧のように霧散したかと思うと、何事も無かったかのように再び現れる。

「だ、ダメだ。効いてねぇ!」

  それでもマルクは剣を振りモルドがポーションを飲む時間を稼ぐ。

「マルク!ウィル・オ・ウィスプ に物理攻撃は効かないわ!
  私が倒すから3人はスケルトンをお願い!」

「わかった!」

「気を付けて!」

「…………」

  3人は壁の向こう側のスケルトンを倒しに行ってもらう。
  向こうはスケルトンが4体、3人なら問題なく倒せる相手だろう。

「さて、私は火の玉退治と行きましょうか」

  まさか異世界でゴーストバスターをする事になるとは予想外だったわ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...