32 / 36
アルタリア大陸編
32話 第2階層『遺跡』②
しおりを挟む
カチ
「あっ!」
ドアに仕掛けられていた罠を解除していたソニアから不吉な声が上がった。
「やばっ!みんな、伏せて!」
ソニアの指示に従い私達は一斉に地に伏せる。
岩壁の隙間から飛び出した鋭い刃が頭上を高速で過ぎる。
横を見てみると青い顔をした3人が居た。
「みんな……生きてるか?」
「な、なんとか……」
「取り敢えず、罠が停止するまで待ちましょう」
ソニアの罠解除の成功率は7割から8割くらいだろう。
何度か罠を発動させてしまったけれど今のコレはかなり危なかった。
横薙ぎの刃は矢や槍と比べると殺傷力が高い。
刃が止まった事を確認してゆっくりと立ち上がった。
「危なかったな」
「うぅ……ご、ごめん」
「仕方ないわよ、ソニアは本職の斥候じゃないんだから」
「そうだぜ、俺やモルドがやってたらもうとっくに死んでるしな」
「…………(コクリ)」
私達は、テンション下がりまくりのソニアを励まして扉の先へと進んだ。
それから3日間(時間が分からないから体感だけど)もの間、迷路のような遺跡を彷徨った。
どうやらこの階層は不死者が住み着いているらしく、スケルトンを始め、ゾンビやゴーストなどもわらわらと現れた。
ゲームでは対して強くないゾンビだけれど、リアルでは最悪だ。
キモい上に臭い。
精神的な疲労が半端無いのだ。
それと、やはりこの遺跡風のダンジョンは罠だらけだった。
落とし穴や毒矢が飛び出す宝箱(マルクが引っかかったが私が解毒した)のような古典的な罠から、通路いっぱいの大岩が転がって来たり、部屋の左右の壁が迫ってくるなどのインディーでジョーンズな罠まで満載だった。
ただ、おかげでソニアの罠解除の技術はかなり上達し、私やマルク、モルドも最低限の罠解除くらいは出来る様になった。
人間、必要に迫られれば出来るものだ。
そんな私達がたどり着いたのは今までの部屋とは明らかに違う大きな部屋だ。
バスケットコート2面分程の広さがあり、部屋の入り口から最も遠い奥の壁には大きな石像が有った。
6枚の翼を持った天使の様な石像は黒板の様な黒いボードを抱えている。
「女神様……天使様の石像か?」
「何でこんな所に……いや、ここが神様が造ったダンジョンならおかしくはないのかな?」
その石像以外には特に目を惹くものもない様なので私達は自然と石像の前に集まった。
「「「「⁉︎」」」」
すると、それを見計らっていたかの様に石像が抱えていたボードに文字が浮かび上がって来た。
『よくぞここまでたどり着きました、力を求めし者よ。
我は問いかけし者。
汝らが力を得るに相応しい者かを測る者。
我のすべての問いに答えし時、最後の試練へ扉が開かれるであろう』
問いかけし者を名乗る石像、多分中ボス的な奴だと思う。
問題に正解すれば先に進めるのだろう。
マルク達も状況を理解したのか真剣な顔で問いかけし者のボードを見ている。
大丈夫かな?
正直マルクは戦力になりそうに無いし、モルドやソニアだって貴族の様にしっかりと教育を受けた訳じゃない。
私だって神様がくれた最低限の知識はあるけど、この世界の事についてはまだまだ勉強中だ。
場合によってはここで撤退するべきかも知れない。
『1つ目の問い。
汝は燃え盛りし炎である。
汝が囚われし籠には風の精すら這い入る隙すらない。
汝に訪れし逃れ得ぬ未来を述べよ』
「な、なんだ?どう言う事だ?
そんなの火種が尽きるまで燃え続けるに決まってるだろ?」
「そ、そうよね。
でもそんな簡単な問題を出すからしら?」
「…………まだ、1問目だからではないか?」
おぅっ!
まさか1問目からこの世界では非一般的な知識を問われる問題が出るとは……
「答えは『炎は消える』よ」
「「「え?」」」
『然り。
炎とは強大な力を秘めしもの。
しかし、その力が存在できるのは支える者が居ればこそ。
如何なる強者も孤独に生きる事は叶わない』
問いかけし者のボードの文字が消え去り、新しい問題が浮かび上がる。
『2つ目の問い。
リコラの実、サシャの花弁、月光石、フレイムベアーの胆嚢。
これらから作られる物を述べよ』
これは簡単だ。
マルク達は頭上にハテナマークを浮かべているが、私は【薬師】のジョブをもらった時にその手の知識を得ている。
普通はジョブを得てもそこから熟練して行く物だけれど、私のは神特性のチート性能らしく、ジョブに必要な知識や技術を完全に習得した状態になっているみたいだ。
「『滅炎薬』よ」
『然り。
知恵と知識、それは時に剣や魔法をも凌ぐ武器となる。
力を求めるならば知識を蓄えよ』
「おお!」
「凄いわ、リン!」
「ふっふっふ、任せて頂戴」
思っていたよりも簡単で良かった。
現代日本の一般知識と神様製のチート知識でクリア出来そうだ。
『最後の問い。
朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足……』
あ!
これ知ってる。
あれだ!
スフィンクスの問題だ。
「答えは『人げ……』」
『……翌日は7本足、翌週は1本足、翌月は6本足、翌年は12本足の生物を述べよ』
「『……ん』…………なんじゃそりゃ!!!」
「ああ、そりゃ『ファボリャン』だな」
「ええ『ファボリャン』ね」
「…………『ファボリャン』」
『然り』
ファボリャンって何なのよ!
「ねえ、ソニア。
ファボリャンって何?」
「え?ああファボリャンって言うのは……」
「おい!見ろ!石像の横に扉が現れたぞ!」
「本当だ!見てリン!いつの間に現れたのかしら?」
「ええ、不思議ね。
それよりファボリャンって……」
「敵襲!スケルトンだ!」
「数が多いわね。リン、魔法で支援をお願い」
「…………ファボリャンって何なのよぉ!!」
謎の生物『ファボリャン』の正体が気になる中、私はスケルトンに魔法を放つのだった。
「あっ!」
ドアに仕掛けられていた罠を解除していたソニアから不吉な声が上がった。
「やばっ!みんな、伏せて!」
ソニアの指示に従い私達は一斉に地に伏せる。
岩壁の隙間から飛び出した鋭い刃が頭上を高速で過ぎる。
横を見てみると青い顔をした3人が居た。
「みんな……生きてるか?」
「な、なんとか……」
「取り敢えず、罠が停止するまで待ちましょう」
ソニアの罠解除の成功率は7割から8割くらいだろう。
何度か罠を発動させてしまったけれど今のコレはかなり危なかった。
横薙ぎの刃は矢や槍と比べると殺傷力が高い。
刃が止まった事を確認してゆっくりと立ち上がった。
「危なかったな」
「うぅ……ご、ごめん」
「仕方ないわよ、ソニアは本職の斥候じゃないんだから」
「そうだぜ、俺やモルドがやってたらもうとっくに死んでるしな」
「…………(コクリ)」
私達は、テンション下がりまくりのソニアを励まして扉の先へと進んだ。
それから3日間(時間が分からないから体感だけど)もの間、迷路のような遺跡を彷徨った。
どうやらこの階層は不死者が住み着いているらしく、スケルトンを始め、ゾンビやゴーストなどもわらわらと現れた。
ゲームでは対して強くないゾンビだけれど、リアルでは最悪だ。
キモい上に臭い。
精神的な疲労が半端無いのだ。
それと、やはりこの遺跡風のダンジョンは罠だらけだった。
落とし穴や毒矢が飛び出す宝箱(マルクが引っかかったが私が解毒した)のような古典的な罠から、通路いっぱいの大岩が転がって来たり、部屋の左右の壁が迫ってくるなどのインディーでジョーンズな罠まで満載だった。
ただ、おかげでソニアの罠解除の技術はかなり上達し、私やマルク、モルドも最低限の罠解除くらいは出来る様になった。
人間、必要に迫られれば出来るものだ。
そんな私達がたどり着いたのは今までの部屋とは明らかに違う大きな部屋だ。
バスケットコート2面分程の広さがあり、部屋の入り口から最も遠い奥の壁には大きな石像が有った。
6枚の翼を持った天使の様な石像は黒板の様な黒いボードを抱えている。
「女神様……天使様の石像か?」
「何でこんな所に……いや、ここが神様が造ったダンジョンならおかしくはないのかな?」
その石像以外には特に目を惹くものもない様なので私達は自然と石像の前に集まった。
「「「「⁉︎」」」」
すると、それを見計らっていたかの様に石像が抱えていたボードに文字が浮かび上がって来た。
『よくぞここまでたどり着きました、力を求めし者よ。
我は問いかけし者。
汝らが力を得るに相応しい者かを測る者。
我のすべての問いに答えし時、最後の試練へ扉が開かれるであろう』
問いかけし者を名乗る石像、多分中ボス的な奴だと思う。
問題に正解すれば先に進めるのだろう。
マルク達も状況を理解したのか真剣な顔で問いかけし者のボードを見ている。
大丈夫かな?
正直マルクは戦力になりそうに無いし、モルドやソニアだって貴族の様にしっかりと教育を受けた訳じゃない。
私だって神様がくれた最低限の知識はあるけど、この世界の事についてはまだまだ勉強中だ。
場合によってはここで撤退するべきかも知れない。
『1つ目の問い。
汝は燃え盛りし炎である。
汝が囚われし籠には風の精すら這い入る隙すらない。
汝に訪れし逃れ得ぬ未来を述べよ』
「な、なんだ?どう言う事だ?
そんなの火種が尽きるまで燃え続けるに決まってるだろ?」
「そ、そうよね。
でもそんな簡単な問題を出すからしら?」
「…………まだ、1問目だからではないか?」
おぅっ!
まさか1問目からこの世界では非一般的な知識を問われる問題が出るとは……
「答えは『炎は消える』よ」
「「「え?」」」
『然り。
炎とは強大な力を秘めしもの。
しかし、その力が存在できるのは支える者が居ればこそ。
如何なる強者も孤独に生きる事は叶わない』
問いかけし者のボードの文字が消え去り、新しい問題が浮かび上がる。
『2つ目の問い。
リコラの実、サシャの花弁、月光石、フレイムベアーの胆嚢。
これらから作られる物を述べよ』
これは簡単だ。
マルク達は頭上にハテナマークを浮かべているが、私は【薬師】のジョブをもらった時にその手の知識を得ている。
普通はジョブを得てもそこから熟練して行く物だけれど、私のは神特性のチート性能らしく、ジョブに必要な知識や技術を完全に習得した状態になっているみたいだ。
「『滅炎薬』よ」
『然り。
知恵と知識、それは時に剣や魔法をも凌ぐ武器となる。
力を求めるならば知識を蓄えよ』
「おお!」
「凄いわ、リン!」
「ふっふっふ、任せて頂戴」
思っていたよりも簡単で良かった。
現代日本の一般知識と神様製のチート知識でクリア出来そうだ。
『最後の問い。
朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足……』
あ!
これ知ってる。
あれだ!
スフィンクスの問題だ。
「答えは『人げ……』」
『……翌日は7本足、翌週は1本足、翌月は6本足、翌年は12本足の生物を述べよ』
「『……ん』…………なんじゃそりゃ!!!」
「ああ、そりゃ『ファボリャン』だな」
「ええ『ファボリャン』ね」
「…………『ファボリャン』」
『然り』
ファボリャンって何なのよ!
「ねえ、ソニア。
ファボリャンって何?」
「え?ああファボリャンって言うのは……」
「おい!見ろ!石像の横に扉が現れたぞ!」
「本当だ!見てリン!いつの間に現れたのかしら?」
「ええ、不思議ね。
それよりファボリャンって……」
「敵襲!スケルトンだ!」
「数が多いわね。リン、魔法で支援をお願い」
「…………ファボリャンって何なのよぉ!!」
謎の生物『ファボリャン』の正体が気になる中、私はスケルトンに魔法を放つのだった。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる