飴と薬と鎖鎌

はぐれメタボ

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アルタリア大陸編

32話 第2階層『遺跡』②

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カチ
「あっ!」

  ドアに仕掛けられていた罠を解除していたソニアから不吉な声が上がった。

「やばっ!みんな、伏せて!」

  ソニアの指示に従い私達は一斉に地に伏せる。
  岩壁の隙間から飛び出した鋭い刃が頭上を高速で過ぎる。
  横を見てみると青い顔をした3人が居た。

「みんな……生きてるか?」

「な、なんとか……」

「取り敢えず、罠が停止するまで待ちましょう」

  ソニアの罠解除の成功率は7割から8割くらいだろう。
  何度か罠を発動させてしまったけれど今のコレはかなり危なかった。
  横薙ぎの刃は矢や槍と比べると殺傷力が高い。
  刃が止まった事を確認してゆっくりと立ち上がった。
  
「危なかったな」

「うぅ……ご、ごめん」

「仕方ないわよ、ソニアは本職の斥候じゃないんだから」

「そうだぜ、俺やモルドがやってたらもうとっくに死んでるしな」

「…………(コクリ)」

  私達は、テンション下がりまくりのソニアを励まして扉の先へと進んだ。

  それから3日間(時間が分からないから体感だけど)もの間、迷路のような遺跡を彷徨った。
  どうやらこの階層は不死者アンデットが住み着いているらしく、スケルトンを始め、ゾンビやゴーストなどもわらわらと現れた。
  ゲームでは対して強くないゾンビだけれど、リアルでは最悪だ。
  キモい上に臭い。
  精神的な疲労が半端無いのだ。
  それと、やはりこの遺跡風のダンジョンは罠だらけだった。
  落とし穴や毒矢が飛び出す宝箱(マルクが引っかかったが私が解毒した)のような古典的な罠から、通路いっぱいの大岩が転がって来たり、部屋の左右の壁が迫ってくるなどのインディーでジョーンズな罠まで満載だった。
  ただ、おかげでソニアの罠解除の技術はかなり上達し、私やマルク、モルドも最低限の罠解除くらいは出来る様になった。
  人間、必要に迫られれば出来るものだ。
  

  そんな私達がたどり着いたのは今までの部屋とは明らかに違う大きな部屋だ。
  バスケットコート2面分程の広さがあり、部屋の入り口から最も遠い奥の壁には大きな石像が有った。
  6枚の翼を持った天使の様な石像は黒板の様な黒いボードを抱えている。

「女神様……天使様の石像か?」

「何でこんな所に……いや、ここが神様が造ったダンジョンならおかしくはないのかな?」

  その石像以外には特に目を惹くものもない様なので私達は自然と石像の前に集まった。

「「「「⁉︎」」」」

  すると、それを見計らっていたかの様に石像が抱えていたボードに文字が浮かび上がって来た。

『よくぞここまでたどり着きました、力を求めし者よ。
  我は問いかけし者。
  汝らが力を得るに相応しい者かを測る者。
  我のすべての問いに答えし時、最後の試練へ扉が開かれるであろう』

  問いかけし者を名乗る石像、多分中ボス的な奴だと思う。
  問題に正解すれば先に進めるのだろう。
  マルク達も状況を理解したのか真剣な顔で問いかけし者のボードを見ている。
  大丈夫かな?
  正直マルクは戦力になりそうに無いし、モルドやソニアだって貴族の様にしっかりと教育を受けた訳じゃない。
  私だって神様がくれた最低限の知識はあるけど、この世界の事についてはまだまだ勉強中だ。
  場合によってはここで撤退するべきかも知れない。

『1つ目の問い。
  汝は燃え盛りし炎である。
  汝が囚われし籠には風の精すら這い入る隙すらない。
  汝に訪れし逃れ得ぬ未来を述べよ』

「な、なんだ?どう言う事だ?
  そんなの火種が尽きるまで燃え続けるに決まってるだろ?」

「そ、そうよね。
  でもそんな簡単な問題を出すからしら?」

「…………まだ、1問目だからではないか?」

  おぅっ!
  まさか1問目からこの世界では非一般的な知識を問われる問題が出るとは……

「答えは『炎は消える』よ」

「「「え?」」」

『然り。
  炎とは強大な力を秘めしもの。
  しかし、その力が存在できるのは支える者が居ればこそ。
  如何なる強者も孤独に生きる事は叶わない』

  問いかけし者のボードの文字が消え去り、新しい問題が浮かび上がる。

『2つ目の問い。
  リコラの実、サシャの花弁、月光石、フレイムベアーの胆嚢。
  これらから作られる物を述べよ』

  これは簡単だ。
  マルク達は頭上にハテナマークを浮かべているが、私は【薬師】のジョブをもらった時にその手の知識を得ている。
  普通はジョブを得てもそこから熟練して行く物だけれど、私のは神特性のチート性能らしく、ジョブに必要な知識や技術を完全に習得した状態になっているみたいだ。

「『滅炎薬』よ」

『然り。
  知恵と知識、それは時に剣や魔法をも凌ぐ武器となる。
  力を求めるならば知識を蓄えよ』

「おお!」

「凄いわ、リン!」

「ふっふっふ、任せて頂戴」

  思っていたよりも簡単で良かった。
  現代日本の一般知識と神様製のチート知識でクリア出来そうだ。

『最後の問い。
  朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足……』

  あ!
  これ知ってる。
  あれだ!
  スフィンクスの問題だ。
  
「答えは『人げ……』」

『……翌日は7本足、翌週は1本足、翌月は6本足、翌年は12本足の生物を述べよ』

「『……ん』…………なんじゃそりゃ!!!」

「ああ、そりゃ『ファボリャン』だな」

「ええ『ファボリャン』ね」

「…………『ファボリャン』」

『然り』

  ファボリャンって何なのよ!
  
「ねえ、ソニア。
  ファボリャンって何?」

「え?ああファボリャンって言うのは……」

「おい!見ろ!石像の横に扉が現れたぞ!」

「本当だ!見てリン!いつの間に現れたのかしら?」

「ええ、不思議ね。
  それよりファボリャンって……」

「敵襲!スケルトンだ!」

「数が多いわね。リン、魔法で支援をお願い」

「…………ファボリャンって何なのよぉ!!」

  謎の生物『ファボリャン』の正体が気になる中、私はスケルトンに魔法を放つのだった。
  
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