飴と薬と鎖鎌

はぐれメタボ

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アルタリア大陸編

31話 第2階層『遺跡』①

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  長い階段を降りた先に有った扉を開いた私達は《始まりの洞窟》の第2階層へと足を踏み入れた。
  第2階層は、広大なジャングルだった第1階層とは打って変わって薄暗く圧迫感の石造りの通路だった。
  ギリギリ武器を振り回せるくらいの広さの通路が伸びており、誰が置いたのかも解らない松明が頼りなく道を照らしていた。

「遺跡……みたいね」

  私の呟きがやけに大きく聞こえる。

「兎に角、第3階層に続く扉を探そう」

  そう言ってマルクは進み始める。
  そして五分もしないうちに私達の前に扉が現れた。

「なんだ?もう見つけたぞ?」

「本当に第3階層への扉なの?ただの部屋じゃない?」

「開けてみれば分かるさ」

  マルクが何気なくドアノブを回し扉を押し開けた。

「⁉︎」

  途端に背筋をゾワリとした嫌な感覚が通り過ぎる。
  私は反射的にマルクをモルドの方に蹴り飛ばし、ソニアの腕を掴んで身を投げ捨てる様に飛んだ。
  すると、先ほど開いた扉の前の壁から五本もの槍が飛び出していた。

  唖然とする私達の目の前で槍はスルスルと壁へ戻って行き、石壁の中に収まると、もう既にそこから槍が飛び出してきたなんて解らないくなっていた。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………罠ね」

「き、気をつけて進むぞ」

  ソロリソロリと立ち上がった私達は、開けっ放しになっていた部屋の中をそっと伺った。

「…………宝箱だぜ」

「怪しいわ」

「…………怪しい」

「罠よ」

  部屋の中心には絵に描いたような宝箱が無造作に設置されていた。

「どうする?」

「危険よ」

「…………」

斥候スカウト系の技能は持ってないの?」

「…………一応ギルドの新人向けの講習会で習ったんだけどな……俺とモルドは向いていなかった」

「私は一応そこそこってとこね……実践は初めてだけど」

  マルクとモルドはダメ、ソニアはペーパーかぁ。

「リンはどうなんだ?」

「出来るわけないでしょ。私は薬師よ?」

  結局、この階層ではソニアが先行して罠を警戒しながら進む事になった。
  その為、移動速度は激減したが、安全には変えられない。

「 止まって!」

  先頭を進んでいたソニアが警告する。

「また罠か?」

「多分落とし穴、解除するから時間を頂戴」

「わかった、俺たちは周囲を警戒するぞ」

  マルクは頷くと手早く支持を飛ばす。
  こう言う所も段々と手馴れてきている。
  “始まり”の洞窟とはよく言った物だ。
  森で野営術や探索の基本、遺跡で罠やマッピングを習得する……神が人間の為に与えた試練と言うのは本当かも知れない。


「敵襲!スケルトン5!」

  ソニアの罠解除を待っていると、モルドが魔物の出現告げる。

「5体か……ソニアは罠解除を続行、モルドはソニアの護衛だ。
  スケルトンは俺とリンだけで十分だ」

  私たちはマルクの指示で素早く隊列を変える。
  5体のスケルトンは剣を装備している奴が3体、弓と盾持ちが1体づつだ。

「リン、そっちを頼む!」

「わかった」

  私はマルクとは別のスケルトンに狙いを定める。
  
「ふっ!」

  スケルトンは剣で私の鎌を受け止めた。
  しかし、左手で回していた鎖を手早く剣に巻き付ける。
  そのまま剣を足場に宙返り、後方に跳びながらスケルトンの剣を奪い取る。

聖なる光ホーリーライト

  頭上に出現した聖なる光を浴びたスケルトン達は動きを止めて苦しむ様に身を捩り出した。
  聖属性をイメージしたのだけれど、意外と上手く行った。
  ……所で聖属性って何だろう?
  まぁ、効いているみたいだからいいか。
  
  スケルトンとの間合いを詰め、鎖を巻き付ける。
  それを強く引くと、締め付けられたスケルトンの全身にヒビが走る。
  そこに鎌を振り抜く。
  不死者アンデットであるスケルトンは多少傷付けたとしても復活してしまう。
  完全に倒すには聖なる力や炎の力を帯びた武器を使うか、魔法による破壊、又は粉々になるまで粉砕するのが効果的らしい。
  私のホーリーライトによって粉砕されたスケルトンが瞬時に灰へと変わる。
  
火球ファイアーボール

  後続のスケルトンを魔法で焼き払う。
  アンデットの中でも下位の存在であるスケルトンの再生力は大したものではなく、ホーリーライトの効果もあり、早々に討伐することが出来た。


「ふぅ、解除出来たわ」

  それと時を同じくしてソニアも落とし穴の解除を終えた見たいだ。
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