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アルタリア大陸編
29話 第1階層『森』③
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森から現れたのは猿だった。
焦げ茶色の毛に長い腕、その手には棍棒や錆びたナイフを持っている者もいる。
「アーミーエイプだ!」
マルクは切り上げるように剣を振ると、アーミーエイプのナイフを持つ腕ごと斬りとばす。
「16匹って事は分隊、サージェントエイプかサージェントメイジャーエイプが統率しているはずよ」
これは戦闘後にソニアから聞いた話なのだが、アーミーエイプは群には厳格な階級制度があるらしい。
そして群の規模は率いるボスの強さに比例して大きくなり、1~10匹の『班』、11~30匹の『分隊』、31~60匹の『小隊』、61~250匹の『中隊』、251~1000匹の『大隊』、更に『連隊』『旅団』『師団』と変化して行く。
連隊以上ともなると単独のパーティで対処することは難しく、歴史上には最上位種であるマーシャルエイプに率いられた師団規模のアーミーエイプに滅ぼされた国も存在する。
「風散弾」
飛び掛かってくるアーミーエイプに風の弾丸を浴びせて撃ち落とす。
するとすかさずマルクが駆け寄り、体勢を立て直す前に急所を斬りつける。
「‼︎」
モルドが私の前に飛び出すと盾を構えて腰を落とす。
隊列を組むアーミーエイプの背後から人の頭程もある火球が打ち出され、モルドの盾に直撃する。
「【魔法使い】が居るぞ!」
「任せて!」
珍しく大声を出したモルドにソニアが答える。
ソニアは、弓を引き絞ると少し上を狙って放つ。
山なりに飛ぶ矢は、全面を固めるアーミーエイプを飛び越える。
「ギャア!」
ソニアの矢は、魔法を放ったアーミーエイプを正確に射抜く。
背後の仲間を射殺されて一瞬、浮き足立つアーミーエイプ。
そこに風を纏った分銅が飛び込み、先頭に居たアーミーエイプの胴体の中心を貫く。
「グゲ?」
自らの胸に突き刺さる鎖を不思議そうに見るアーミーエイプを鋭い風の刃が切り裂いた。
私は風の刃によって小さな台風の様に成っているアーミーエイプを分銅に引っ掛けたまま、他のアーミーエイプに叩きつける。
「グギャァァア!!!」
半数程のアーミーエイプを倒した頃、森の中から身のすくむ様な雄叫びが轟いた。
「ギィ⁉︎」
「ギギィ!」
するとアーミーエイプ達は素早く隊列を組み直して森の中へと撤退して行った。
2匹のアーミーエイプを殿に残す徹底ぶりだ。
私達は、殿のアーミーエイプに手を出す事はせず、警戒しながら距離を保つ。
「……行った見たいね」
数を大幅に減らしたアーミーエイプの群れが【索敵】の範囲から離脱したのを確認して臨戦体勢を解いた。
私に続き他の3人も武器を下ろした。
「分隊規模で良かったわ。
もし、小隊や中隊規模だったら全滅も有ったかも知れないし」
「全くだ。
半数がやられた時点で撤退を選択するってのはかなり慎重なボスだ。
2度目は無いだろう」
「だからって油断はダメよ。
他の群れや魔物に襲撃されるかも知れないんだから」
「わ、わかってるさ」
空は既に白んでいた為、早めの食事を済ませた後、マルクとモルドに仮眠を取ってもらい、昼前に出発する事に決まった。
焦げ茶色の毛に長い腕、その手には棍棒や錆びたナイフを持っている者もいる。
「アーミーエイプだ!」
マルクは切り上げるように剣を振ると、アーミーエイプのナイフを持つ腕ごと斬りとばす。
「16匹って事は分隊、サージェントエイプかサージェントメイジャーエイプが統率しているはずよ」
これは戦闘後にソニアから聞いた話なのだが、アーミーエイプは群には厳格な階級制度があるらしい。
そして群の規模は率いるボスの強さに比例して大きくなり、1~10匹の『班』、11~30匹の『分隊』、31~60匹の『小隊』、61~250匹の『中隊』、251~1000匹の『大隊』、更に『連隊』『旅団』『師団』と変化して行く。
連隊以上ともなると単独のパーティで対処することは難しく、歴史上には最上位種であるマーシャルエイプに率いられた師団規模のアーミーエイプに滅ぼされた国も存在する。
「風散弾」
飛び掛かってくるアーミーエイプに風の弾丸を浴びせて撃ち落とす。
するとすかさずマルクが駆け寄り、体勢を立て直す前に急所を斬りつける。
「‼︎」
モルドが私の前に飛び出すと盾を構えて腰を落とす。
隊列を組むアーミーエイプの背後から人の頭程もある火球が打ち出され、モルドの盾に直撃する。
「【魔法使い】が居るぞ!」
「任せて!」
珍しく大声を出したモルドにソニアが答える。
ソニアは、弓を引き絞ると少し上を狙って放つ。
山なりに飛ぶ矢は、全面を固めるアーミーエイプを飛び越える。
「ギャア!」
ソニアの矢は、魔法を放ったアーミーエイプを正確に射抜く。
背後の仲間を射殺されて一瞬、浮き足立つアーミーエイプ。
そこに風を纏った分銅が飛び込み、先頭に居たアーミーエイプの胴体の中心を貫く。
「グゲ?」
自らの胸に突き刺さる鎖を不思議そうに見るアーミーエイプを鋭い風の刃が切り裂いた。
私は風の刃によって小さな台風の様に成っているアーミーエイプを分銅に引っ掛けたまま、他のアーミーエイプに叩きつける。
「グギャァァア!!!」
半数程のアーミーエイプを倒した頃、森の中から身のすくむ様な雄叫びが轟いた。
「ギィ⁉︎」
「ギギィ!」
するとアーミーエイプ達は素早く隊列を組み直して森の中へと撤退して行った。
2匹のアーミーエイプを殿に残す徹底ぶりだ。
私達は、殿のアーミーエイプに手を出す事はせず、警戒しながら距離を保つ。
「……行った見たいね」
数を大幅に減らしたアーミーエイプの群れが【索敵】の範囲から離脱したのを確認して臨戦体勢を解いた。
私に続き他の3人も武器を下ろした。
「分隊規模で良かったわ。
もし、小隊や中隊規模だったら全滅も有ったかも知れないし」
「全くだ。
半数がやられた時点で撤退を選択するってのはかなり慎重なボスだ。
2度目は無いだろう」
「だからって油断はダメよ。
他の群れや魔物に襲撃されるかも知れないんだから」
「わ、わかってるさ」
空は既に白んでいた為、早めの食事を済ませた後、マルクとモルドに仮眠を取ってもらい、昼前に出発する事に決まった。
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