飴と薬と鎖鎌

はぐれメタボ

文字の大きさ
上 下
22 / 36
アルタリア大陸編

22話 ソニアの誘い

しおりを挟む
「それじゃあ、これが私の買い取りで、こっちが薬の調合、こっちは売却でいいわね?」

「ああ、頼む」

  私が尋ねると《大樹の雫》のリーダー、マルクはそう答えた。
   
  今日は何度目かになる合同の薬草採取を行っていた。
  《大樹の雫》の3人は私に雇われている訳ではない。
  護衛の必要も無いのに報酬なんか貰えないと言われたのだ。
  ただ一緒に採取に来ただけだ。
  彼らの採取した薬草を優先的に売ってもらい、代金でポーションなどを調合してあげる。
  とてもwin-winな取引だ。
  

「ねぇ、リンはずっとダラスの街で暮らすの?」

  そんな小さな冒険の帰り道、辺りを警戒しながらソニアが話を振ってきた。

「いつまでとは決めてないけどその内旅に出るつもりよ。
  自分の目で世界を見てから気に入った場所に根を下ろそうかと思っているわ」

「そう……」

「?」

  ソニアはマルクとモルトに素早く視線をやり、なにやら無言のやり取りの後、全員が頷いた。

「リン、もし良かったら私達と一緒にダンジョンに行かない?」

「ダンジョン?」

「ああ、ダラスの街から王都に向かう途中に神創のダンジョンがあるんだ」

「え、でも神創のダンジョンなんて危険でしょ?」

  たしか、神創のダンジョンは難易度が高いと何かに書いていたと思う。

「いや、そこは神創のダンジョンとしては珍しいDランクダンジョンなんだ」

  マルスとソニアの説明によると、ダンジョンにはダンジョンランクと言う物があるらしい。
  そしてダンジョンランクはそのまま冒険者の攻略適正ランクとなる。
  そのダンジョンがDランクダンジョンだと言うなら適正ランクはDランクだ。
  そして《大樹の雫》はついこの前Dランクに上がったばかりだったはず。
  そこで活動の拠点を王都に移すついでに神創のダンジョンに挑戦しようか、となったらしい。

「それでなんで私に声をかける事になったのよ?」

「いや、ほら、私達って魔法が使えないじゃない?
  本格的なダンジョンは初めてだし強い魔法使いに助っ人を頼みたいのよ」

「頼むリン!王都までの野営の見張りは俺たちが引き受けるし、馬車のレンタル代も俺たちが持つ。
  後は~、え~と……」

「もういいわよ。
  分かったわ、一緒にダンジョンに行きましょ」

「おお!」

「やった!」

「…………(こくん)」
  
  いや、モルドも喋りなさいよ。

「それで、そのダンジョンは何処にあるの?」

「王都に近いアルリカの街よ」

「アルリカ?」

「ええ、勇者生誕の地、アルリカよ」

  勇者……そう、この世界には勇者が存在する。
  ただし、勇者がいたのは数百年前の話だ。
  なんでも数百年前、人類は人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、その為の種族を含め数多くの勢力が争う時代があったらしい。
  その時代にある1人の魔族が名を上げる。
  【魔王】のクラスを持っていたその魔族は、瞬く間に一大勢力を築き上げた。
  魔王の勢力に脅威を感じた人々は団結し、魔王を打ち倒す事に成功した。
  その中心となったのが勇者と3人の勇士らしい。
  つまり、昔の英雄だね。
  坂本龍馬とか織田信長的な存在よ、勇者って。

  どうもその勇者の誕生の地に行く事になりそう。
  
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...