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アルタリア大陸編
21話 かしましい未満
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「この度は誠にお世話になりました」
深々と頭を下げる村長に頭を上げてもらい、涙を堪えているココナに再会を約束して村を後にした。
テオロさんが馬車で送ろうかと聞いてくれたが断ってしまった。
しばらく仕事どころではなかった上、今回の騒動で村の蓄えも大きく減っているだろう。
彼だって暇ではないのだ。
井戸の水の安全は確認したし、村人が集めた薬草と交換に簡単な薬の作り方を教えたりもした。
名残惜しくもあるがいつまでも村に居る訳にはいかない。
私には世界中を見て回ると言う目的があるのだ。
一晩の野営を挟んで久し振りにダラスの街へと帰ってきた。
「おお、久し振りだな。
大活躍だったと聞いているぞ?」
ヨルムさんがニヤリと笑いながら声を掛けて来た。
「随分とお喋りな人がいるのね」
「ははは、で?何を倒したんだ?」
「キングポイズンスライムよ」
「キングか……しかもポイズン。
冒険者ギルドならBランクに分類される魔物だな」
「そうなの?」
「ああ、ソロだと麻痺毒を受ければ終わりだし、腐食攻撃は肉を焼くだけではなく武器や防具に致命的なダメージを与えるからな。
その上、物理攻撃は効果が薄いと来ている。
普通の駆け出し冒険者ならまず命はないレベルの強敵だ」
「私は魔法が得意だから、相性が良かったのよ」
「それにしても大したもんさ」
ヨルムさんから手続きを済ませたギルドカードを受け取る。
「よし、入って良いぞ」
「どーも、あ、そうだ。これ、お土産です」
私は小樽に入った蜂蜜酒を手渡した。
「おお、有り難く頂くよ」
一応言っておくが、これは賄賂ではない。
私は既に街に入っているからね。
ヨルムさんと別れた私はギルドで依頼達成の報告を済ませて報酬を受け取った。
流石にそのまま次の依頼を受ける気力は無いので軽くクエストボードを確認するだけにする。
「発火草の採取……衛兵隊への傷薬調合、商家の子供の家庭教師……特に良さそうな依頼はないわね」
そのまま医療ギルドを出た私は街の中心部へと向かうことにした。
時刻は昼少し前、宿に引っ込むにはまだ早い。
市場を冷やかしながら歩いていると見覚えのある姿が目に入った。
「ソニア」
「え?あ、リン!
久し振りね、最近見なかったけど?」
「ええ、依頼で近くの村に滞在してたのよ」
「そうだったの」
聞けばソニアもお昼はまだらしいので連れ立って近くの定食屋に入った。
「ええ⁉︎キングポイズンスライム⁉︎」
「そう、しかも洞窟に入った瞬間入り口を毒煙で塞がれてね。
大変だったわ」
「いや、いくらハーフエルフで魔法が得意とは言ってもなかなか倒せる相手じゃないわよ」
呆れ顔でこちらを見てくるソニアの視線から可能な限り目を逸らした私は、そこでお土産を持っていた事を思い出した。
「それとこれ、お土産ね」
私が取り出しのは蜂蜜の小瓶だ。
ちゃんと3つある。
しかし、ソニアが驚いたのは蜂蜜の方ではなかった。
「リン!あなた【トレジャーボックス】まで使えるの?」
「え、ま、まぁね」
しまった!
つい、【アイテムボックス】から直接出してしまった。
「良いわね、ギフトなんて冒険者の夢よ。
生まれつき?」
「う、うん」
まて、落ち着くんだ私!
ギフトって言うのは聞いたことがある。
確か街の図書館でスキルに関する情報を集めていた時に見たはずだ。
確かスキルとは別の神に与えられた不思議な能力だったかな。
【トレジャーボックス】はソニアの反応から【アイテムボックス】の様なものだろう。
確か【トレジャーボックス】のギフトは生まれつき持っている人がけっこういるらしい。
「私も欲しーなーギフト。何処かの迷宮にでも潜ろかしら?」
「やめときなさい。命がいくつあっても足りないわ」
ギフトを手に入れる方法は大きく分けて3種類ある。
1、生まれつき
これは本当に才能の問題だ。
後からどうこうと言うものではない。
2、神の気まぐれ
神(あの残念イケメンと同一人物かは定かでは無い)には基準などはなく、本当に適当にその辺にいる者に与えられる。
そして、3がダンジョン攻略。
ダンジョンの中でも神創のダンジョンと呼ばれる種類のダンジョンは攻略することにより、財宝やギフトを得る事ができるそうだ。
これが唯一能動的にギフトを修得できる方法らしい。
何だかんだと騒がしく食事を終えた私達は女2人、ウインドウショッピングへと洒落込んだのだった。
まぁ、窓はないけどね。
深々と頭を下げる村長に頭を上げてもらい、涙を堪えているココナに再会を約束して村を後にした。
テオロさんが馬車で送ろうかと聞いてくれたが断ってしまった。
しばらく仕事どころではなかった上、今回の騒動で村の蓄えも大きく減っているだろう。
彼だって暇ではないのだ。
井戸の水の安全は確認したし、村人が集めた薬草と交換に簡単な薬の作り方を教えたりもした。
名残惜しくもあるがいつまでも村に居る訳にはいかない。
私には世界中を見て回ると言う目的があるのだ。
一晩の野営を挟んで久し振りにダラスの街へと帰ってきた。
「おお、久し振りだな。
大活躍だったと聞いているぞ?」
ヨルムさんがニヤリと笑いながら声を掛けて来た。
「随分とお喋りな人がいるのね」
「ははは、で?何を倒したんだ?」
「キングポイズンスライムよ」
「キングか……しかもポイズン。
冒険者ギルドならBランクに分類される魔物だな」
「そうなの?」
「ああ、ソロだと麻痺毒を受ければ終わりだし、腐食攻撃は肉を焼くだけではなく武器や防具に致命的なダメージを与えるからな。
その上、物理攻撃は効果が薄いと来ている。
普通の駆け出し冒険者ならまず命はないレベルの強敵だ」
「私は魔法が得意だから、相性が良かったのよ」
「それにしても大したもんさ」
ヨルムさんから手続きを済ませたギルドカードを受け取る。
「よし、入って良いぞ」
「どーも、あ、そうだ。これ、お土産です」
私は小樽に入った蜂蜜酒を手渡した。
「おお、有り難く頂くよ」
一応言っておくが、これは賄賂ではない。
私は既に街に入っているからね。
ヨルムさんと別れた私はギルドで依頼達成の報告を済ませて報酬を受け取った。
流石にそのまま次の依頼を受ける気力は無いので軽くクエストボードを確認するだけにする。
「発火草の採取……衛兵隊への傷薬調合、商家の子供の家庭教師……特に良さそうな依頼はないわね」
そのまま医療ギルドを出た私は街の中心部へと向かうことにした。
時刻は昼少し前、宿に引っ込むにはまだ早い。
市場を冷やかしながら歩いていると見覚えのある姿が目に入った。
「ソニア」
「え?あ、リン!
久し振りね、最近見なかったけど?」
「ええ、依頼で近くの村に滞在してたのよ」
「そうだったの」
聞けばソニアもお昼はまだらしいので連れ立って近くの定食屋に入った。
「ええ⁉︎キングポイズンスライム⁉︎」
「そう、しかも洞窟に入った瞬間入り口を毒煙で塞がれてね。
大変だったわ」
「いや、いくらハーフエルフで魔法が得意とは言ってもなかなか倒せる相手じゃないわよ」
呆れ顔でこちらを見てくるソニアの視線から可能な限り目を逸らした私は、そこでお土産を持っていた事を思い出した。
「それとこれ、お土産ね」
私が取り出しのは蜂蜜の小瓶だ。
ちゃんと3つある。
しかし、ソニアが驚いたのは蜂蜜の方ではなかった。
「リン!あなた【トレジャーボックス】まで使えるの?」
「え、ま、まぁね」
しまった!
つい、【アイテムボックス】から直接出してしまった。
「良いわね、ギフトなんて冒険者の夢よ。
生まれつき?」
「う、うん」
まて、落ち着くんだ私!
ギフトって言うのは聞いたことがある。
確か街の図書館でスキルに関する情報を集めていた時に見たはずだ。
確かスキルとは別の神に与えられた不思議な能力だったかな。
【トレジャーボックス】はソニアの反応から【アイテムボックス】の様なものだろう。
確か【トレジャーボックス】のギフトは生まれつき持っている人がけっこういるらしい。
「私も欲しーなーギフト。何処かの迷宮にでも潜ろかしら?」
「やめときなさい。命がいくつあっても足りないわ」
ギフトを手に入れる方法は大きく分けて3種類ある。
1、生まれつき
これは本当に才能の問題だ。
後からどうこうと言うものではない。
2、神の気まぐれ
神(あの残念イケメンと同一人物かは定かでは無い)には基準などはなく、本当に適当にその辺にいる者に与えられる。
そして、3がダンジョン攻略。
ダンジョンの中でも神創のダンジョンと呼ばれる種類のダンジョンは攻略することにより、財宝やギフトを得る事ができるそうだ。
これが唯一能動的にギフトを修得できる方法らしい。
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まぁ、窓はないけどね。
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