飴と薬と鎖鎌

はぐれメタボ

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アルタリア大陸編

17話 スライムスレイヤー・リン

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  ボッ!

  突如、キングポイズンスライムの体から何かが飛ばされて来た。
  私は【危機察知】に頼るまでもなく、全力で身を投げ出した。

  ドッ!ジュ~

  そっと伺うと私が立っていた入り口付近が煙を上げながら溶けている。
  
「溶解液……エグいわ!」

  煙から逃げるように洞窟の中へ駆けて行く。
  あんな物をまともに受けてはたまらない。
  幸い煙は洞窟内に充満する事なく入り口から外へと流れていた。
  まぁ、そのせいで外に逃げるとこが出来なくなってしまったのだけれど。

  しかし、スライムか……
  物理攻撃は効果が薄く、核以外にはあまりダメージが通らない。

「しかし、今の私はあの時の私ではないわ!“氷槍アイスジャベリン”」

  氷でできた槍をキングポイズンスライムの胴体に叩きつける。しかし……

  ジュ~
  
  キングポイズンスライムの体に触れた瞬間、氷の槍は溶解し、すぐに溶けてしまった。

  ボッ!

  お返しとばかりに、キングポイズンスライムは毒弾を飛ばして来た。

「くっ!」

  慌てて躱すが、キングポイズンスライムは正確に私を狙って攻撃を繰り返す。  
 
「なんでこんなに正確に……【魔力感知】の所為か!」 
 
  つまりキングポイズンスライムは私の魔力を感知して攻撃しているって事ね。

「“デコイ”」

  魔力を込めたデコイを創り、自身は魔力を抑えて岩陰に潜伏する。
  すると予想通りキングポイズンスライムは囮に向けて毒弾を撃ち続ている。

「今の内に……」

  溶解されてしまうなら溶けるよりも早く核を撃ち抜くしかない。

「“岩槍ストーンジャベリン”“錬金アルケミー”」

  岩の槍を造り出し、錬金で材質を鋼に変える。

「“風撃エアショット”!」

  それを突風で射出する。
  魔法を会得したことで可能となった強力な攻撃だ。

  ガズン!

  鋼の槍はキングポイズンスライムへと突き刺さった。

  シ~、ガラッ!

  だが、鋼の槍は瞬く間に錆びて崩れ落ちてしまった。

「【腐食】か……なら“岩槍ストーンジャベリン”“錬金アルケミー”!」

  もう一度槍を造り出す。
  しかし、今度はただの鋼ではない。
  鉄にクロムやニッケルを加えた合金、サビに強い事で御馴染みのステンレス鋼だ。
  因みにクロムやニッケルが何処から現れたかは気にしてはいけない。
  きっとマジカルでファンタジーな何かなのだ。

「“風撃エアショット”」

  新しく造った槍は腐食される事なくキングポイズンスライムにダメージを与える。

  おそらく怒っているのだろう。
  スライム故、咆哮を上げる事はないがそれでも2本の触手を伸ばして振り回している。
  
  ダム!ダム!

  まるで鞭のように繰り出される触手。
  強化された身体能力で軽業師のようにアクロバティックに避ける。

  ガシッ!

「しまっ……」

  キングポイズンスライムの猛攻にとうとう右足首を掴まれてしまった。

「くっ!」

  洞窟の天井付近まで吊り上げられ、そのまま地面に叩きつける。

「“風塊エア”」

  咄嗟に風のクッションを作り直撃を避ける。
  イメージしたのはエアバッグ。
  お陰で即死は免れたけど肋骨が数本折れたと思う。

「いっつ⁉︎」

  突如、足首に激痛が走った。

「“風刃エアスラッシュ”」
 
  足首を掴んでいた触手を切り落とし投げ出される様に着地する。

「うわ……」

  痛む足首を見れば触手に触れていた場所が焼け爛れて血が滲んでいる。
  直ぐにポーションを振りかけて傷を治し立ち上がると再びキングポイズンスライムと対峙する。
  
  ヒュン!

「“氷柱アイスピラー”」

  触手を氷の柱で受け止める。

「“氷結フリージング”」

  柱に触れた触手を伝ってキングポイズンスライムの身体を凍結させて行く。
  しかし、スライムの身体のほとんどは魔力で出来ている。
  凍らせられる時間は長くはない。

「ここだ!」

  この隙を逃さない様に飛び出す。

  空中で足下に魔力を集める。
  その魔力を足場に更に跳躍。
  それを数度繰り返し、半氷になったキングポイズンスライムの上に到達した。

「“岩塊ロック”」

  分銅の投擲と同時に魔法を発動させる。
  分銅に岩が纏わりつき巨大な岩となる。

  ドガッ!

  岩は狙い通りステンレス鋼製の槍に直撃し、槍をキングポイズンスライムの核へと押し込んだ。

  核を砕かれたキングポイズンスライム直ぐに溶けて消えてしまった。
  後に残ったのは大きな魔石と焼け焦げた地面だけだった。
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