15 / 66
マーリンさんの学業奮闘記
マーリンさん、お姉さんの話を聞く
しおりを挟む
「さっきから何を読んでいるんだ?」
寮の談話室で本を読んでいた私にレオが問いかけてきた。
「コレよ」
私は、タイトルがレオに見える様に、自分が読んでいた本を掲げる。
「ん? 『邪神崇拝と狂信者』か。
例の黒幕について調べてるのか?」
「まぁね。一応、調べられるだけ調べようかなって思ってさ。
今の所、過去の邪教徒が起こした事件やテロなんかを当たってるんだけど、特に手掛かりになりそうな物は無いわ」
「わたくしも不可解な事件だと思いますが、カイトが犯人ではないと決まったわけではないですからね」
「そうだね、全てカイトの犯行で、王太子であるレオを狙ったりしたのは邪教徒故の狂った思想、と言って仕舞えばそれまでだからね」
「別にそれならそれで良いのよ」
「でも、カイトの死亡時刻の謎が残りますよ?」
「それこそ、単なる診断ミスと言う可能性だってあるじゃない」
「まぁ、診断スキルも完璧では有りませんからね」
「これは単なる私の自己満足よ」
私はそう言うとまた読書に戻るのだった。
翌日の昼休み、私達は食堂で昼食を食べた後、食後のお茶を飲みながら無駄話に華を咲かせていた。
「昨日の夜に手紙が来たんだけど先週、妹が産まれたらしいんだ」
「あら、おめでとう」
「おめでとうございます、アルさん」
「うむ、目出度いな」
「おめでとう、アルくん」
「はは、まるで僕の子が産まれたみたいな扱いだね。
ありがとう」
「妹には優しくしないと駄目よ」
「そうだぞ、兄として妹を守らなければならないぞ。
上が奔放だと下が苦労するからな」
「「「ははは」」」
「あら、その言い方だと私が奔放で貴方に苦労を掛けている様に聞こえるわよ」
突如、声を掛けられ、振り向くと、美しい金髪をセミロングにした美人が立ったてた。
目立たないがよく見るととても上質な生地で出来ている服を着ている。
「あ、姉上、なぜここに⁉︎」
「あら、私はこの学園の出資者よ。
視察のついでに弟の様子を見に来たのよ」
どうやらこの美人はレオのお姉さんらしい…………という事は彼女はこの国の第1王女テスタロッサ様か!
私と同じ思考に至ったのかクルスが緊張で真っ青になっている。
私とアル、そして真っ青になったクルスは起立して、礼を取る。
学院生のレオと違い彼女は正真正銘の王族だ。
いや、レオも王族だけど。
「あぁ、そう言うのは良いわよ。
公の場では無いんだから。
座って頂戴、みんなには弟がお世話になっているわね。
私はレオの姉のテスタロッサよ。
テレサって呼んでね」
「は、はい」
この国の王族はフランクな人が多いのかしら?
テレサ様は後ろにいた無表情なメイドさんが引いた椅子に腰を下ろした。
「お久しぶりですわ、義姉様」
「久しぶりね、シアちゃん、アル君も」
「お久しぶりです、テレサ様」
「先日、例の怪盗にしてやられたとお聞きしましたが、お怪我はありませんか?」
「えぇ、大丈夫よ。
奴は捕まえられなかったけど不正を働いていた貴族は告発できたからね。
怪盗様々ね」
「怪盗?」
「ん? マーリンは知らないか? 最近、王都中心に騒がれている義賊の話だ」
「知らないわね、義賊なの?」
「そうよ、奴は不正を働いて私腹を肥やしていた貴族から不正の証拠と私財を盗み、証拠を公開し、盗み出した財を孤児院や教会などに秘密裏に寄付して回るのよ。」
「孤児院や教会も盗み出された金だと分かっているのだが、まぁ公然の秘密という奴だな」
「私としては不正貴族なんかどうなっても構わないんだけど、クズでも貴族は貴族だからね。
王族としては、庇護しなければいけないのよ。
今回も私が私兵をだして……まぁ雇った冒険者なんだけど警備を手伝ったんだけどね。
まぁ、低ランクの冒険者がほとんどだったから簡単に蹴散らされちゃったのよ。
1人だけ、唯一のAランク冒険者がかなり粘ってくれたけど怪盗の方が1枚上手でね、宿の私の部屋に不正の証拠を投げ込み、姿を消したわ」
「そんなことが有ったのですね」
「マーリンはあまり噂とかに興味が無いからね。
盗みの前に予告状を出したり、盗みの際誰も殺さない様にしたりと、まるで歌劇の主人公の様だと学院でもかなり騒がれていたよ?」
「まったく気づかなかったわ」
「まぁ、まんまとしてやられて悔しいからね。
今度は必ず捕まえて見せるわ。
あの怪盗……《怪人108面相》を」
テレサ様の決意を聴きながら私達の昼休みは過ぎていった。
寮の談話室で本を読んでいた私にレオが問いかけてきた。
「コレよ」
私は、タイトルがレオに見える様に、自分が読んでいた本を掲げる。
「ん? 『邪神崇拝と狂信者』か。
例の黒幕について調べてるのか?」
「まぁね。一応、調べられるだけ調べようかなって思ってさ。
今の所、過去の邪教徒が起こした事件やテロなんかを当たってるんだけど、特に手掛かりになりそうな物は無いわ」
「わたくしも不可解な事件だと思いますが、カイトが犯人ではないと決まったわけではないですからね」
「そうだね、全てカイトの犯行で、王太子であるレオを狙ったりしたのは邪教徒故の狂った思想、と言って仕舞えばそれまでだからね」
「別にそれならそれで良いのよ」
「でも、カイトの死亡時刻の謎が残りますよ?」
「それこそ、単なる診断ミスと言う可能性だってあるじゃない」
「まぁ、診断スキルも完璧では有りませんからね」
「これは単なる私の自己満足よ」
私はそう言うとまた読書に戻るのだった。
翌日の昼休み、私達は食堂で昼食を食べた後、食後のお茶を飲みながら無駄話に華を咲かせていた。
「昨日の夜に手紙が来たんだけど先週、妹が産まれたらしいんだ」
「あら、おめでとう」
「おめでとうございます、アルさん」
「うむ、目出度いな」
「おめでとう、アルくん」
「はは、まるで僕の子が産まれたみたいな扱いだね。
ありがとう」
「妹には優しくしないと駄目よ」
「そうだぞ、兄として妹を守らなければならないぞ。
上が奔放だと下が苦労するからな」
「「「ははは」」」
「あら、その言い方だと私が奔放で貴方に苦労を掛けている様に聞こえるわよ」
突如、声を掛けられ、振り向くと、美しい金髪をセミロングにした美人が立ったてた。
目立たないがよく見るととても上質な生地で出来ている服を着ている。
「あ、姉上、なぜここに⁉︎」
「あら、私はこの学園の出資者よ。
視察のついでに弟の様子を見に来たのよ」
どうやらこの美人はレオのお姉さんらしい…………という事は彼女はこの国の第1王女テスタロッサ様か!
私と同じ思考に至ったのかクルスが緊張で真っ青になっている。
私とアル、そして真っ青になったクルスは起立して、礼を取る。
学院生のレオと違い彼女は正真正銘の王族だ。
いや、レオも王族だけど。
「あぁ、そう言うのは良いわよ。
公の場では無いんだから。
座って頂戴、みんなには弟がお世話になっているわね。
私はレオの姉のテスタロッサよ。
テレサって呼んでね」
「は、はい」
この国の王族はフランクな人が多いのかしら?
テレサ様は後ろにいた無表情なメイドさんが引いた椅子に腰を下ろした。
「お久しぶりですわ、義姉様」
「久しぶりね、シアちゃん、アル君も」
「お久しぶりです、テレサ様」
「先日、例の怪盗にしてやられたとお聞きしましたが、お怪我はありませんか?」
「えぇ、大丈夫よ。
奴は捕まえられなかったけど不正を働いていた貴族は告発できたからね。
怪盗様々ね」
「怪盗?」
「ん? マーリンは知らないか? 最近、王都中心に騒がれている義賊の話だ」
「知らないわね、義賊なの?」
「そうよ、奴は不正を働いて私腹を肥やしていた貴族から不正の証拠と私財を盗み、証拠を公開し、盗み出した財を孤児院や教会などに秘密裏に寄付して回るのよ。」
「孤児院や教会も盗み出された金だと分かっているのだが、まぁ公然の秘密という奴だな」
「私としては不正貴族なんかどうなっても構わないんだけど、クズでも貴族は貴族だからね。
王族としては、庇護しなければいけないのよ。
今回も私が私兵をだして……まぁ雇った冒険者なんだけど警備を手伝ったんだけどね。
まぁ、低ランクの冒険者がほとんどだったから簡単に蹴散らされちゃったのよ。
1人だけ、唯一のAランク冒険者がかなり粘ってくれたけど怪盗の方が1枚上手でね、宿の私の部屋に不正の証拠を投げ込み、姿を消したわ」
「そんなことが有ったのですね」
「マーリンはあまり噂とかに興味が無いからね。
盗みの前に予告状を出したり、盗みの際誰も殺さない様にしたりと、まるで歌劇の主人公の様だと学院でもかなり騒がれていたよ?」
「まったく気づかなかったわ」
「まぁ、まんまとしてやられて悔しいからね。
今度は必ず捕まえて見せるわ。
あの怪盗……《怪人108面相》を」
テレサ様の決意を聴きながら私達の昼休みは過ぎていった。
0
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。
初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。
今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。
誤字脱字等あれば連絡をお願いします。
感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。
おもしろかっただけでも励みになります。
2021/6/27 無事に完結しました。
2021/9/10 後日談の追加開始
2022/2/18 後日談完結
無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?
青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。
魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。
※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる