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マーリンさんの学業奮闘記

マーリンさん、卒業する

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  ユウ先生が王都を去ってから半年が経ち、とうとう、私達は卒業を迎えた。
  学院の講堂で、今年度の首席であるシアの挨拶が終わると、私達は寮に戻る。
  あとはもう、寮の部屋を片付ければ、学院を出て行くだけだ。
  ようやく師匠のところに戻る事が出来る。
  この学院で、魔法技術はあまり伸びたとは言えないが、それ以外の学問、1年生のときにアルの妹さんの病気について調べた時に読んだ本の知識、ユウ先生に教わった薬草学や戦闘術、冒険者としての知識など、多くの事を学ぶ事が出来た。
  そして、何より大切な友人が出来たのだ。
  学院に来る前の私は魔法さえ習得すれば良いと考えていた。
  学院に来た当初はなぜ3年もの間、魔法以外に時間を使わなければならないのかと疑問に思ったものだ。
  まぁ、早々に切り替えて学院の生活を楽しんでいた私は、自分が思っているよりも適応力が有ったのだろう。
  仲間と共に数々の事件を乗り越えた私は、仮に3年間、篭って魔法の勉強を続けていた私より、遥かに強いと言えるだろう。
  しかし、そんな仲間とも今日でお別れだ。
  私は師匠のところに戻るし、レオとシアは王宮に、アルは領地に戻るだろう。
  クルスは卒業後の進路はどうするのだろうか?
  彼は飛び抜けた所は無いが、平均的に高い能力を持っている。
  恐らく、引く手数多に違いない。

「ふっ! こんなものかな」

  3年間暮らした寮の部屋は、私が来る前と同じ状態に戻っている。
  部屋の片付けを終えた私が談話室に行くとシアとクルスが居た。

「2人とも、もう片付けは終わったの?」

「はい、わたくしは少しづつ片付けて居ましたから、レオ様は昨日から慌てて片付けている様ですわ」

「はは……僕は元からあまり荷物は無かったからね。
  マーリンさんに貰ったマジックバックも有ったし、すぐに終わったよ」

  私達が3人でお茶を飲みながら話をしていると、レオとアルがやって来た。

「は~、やっと終わった」

「もう、レオ様がギリギリまで片付けないからですわ」

「うぅっ」

「ぼ、僕は違うよ。
  レオに手伝わされていたんだ」

  どうやらアルはレオを手伝っていたらしい。
  そして、シアはレオを完全に尻に敷いている様だ。
  それもそうか、シアは今や王国トップクラスの大商会を率いる大商人だ。
  シアの商会はまだまだ大きくなるだろう。
  ユウ先生と取り引きして、新しい調味料の製造もしているらしい。
  ユウ先生の送別会で、私もその調味料を口にしたが、アレは売れる!

「そう言えばクルスは卒業後の進路、どうするんだ?」

  シアにお説教されていたレオが、露骨に話題を逸らした。
  すると、ため息1つ着くと、シアは勘弁してやったのかお説教をやめる。

「僕は冒険者として、1度世界を見て回ろうと思うんだ」

「冒険者! お前は色々と誘われていたと思うだが、冒険者になるのか?」

「ずっとじゃないよ。
  この世界には僕の知らない事が沢山あると言う事が分かったからね。
  旅をして、自分の目で世界を見たいんだ」

「そうか、旅に満足したら言えよ。
  仕事を斡旋するぞ」

「ありがとう。
  その時はレオくんを頼るよ」

  私達はお茶を飲み終わると、校門まで移動する。
  校門にはレオとシア、アルを迎えに来た馬車がすでに停まっていた。
  
「じゃあ、ココでお別れね」

「寂しくなりますわ」

「なに、もう2度と会えない訳じゃない」

「そうだね、また会おう」

「あれ? みんな、何かくるよ」

  私達がクルスが指差す方へと視線を向けると空から魔物がこちらに向かって飛んで来た。
  しかし、その魔物には、従魔の証が付けられている。
  誰かが使役している魔物だ。
  この魔物は確か、Eランクのビッグクロウだ。
  大きなカラスの魔物だが、この魔物はまだ子供なのか普通のカラスくらいの大きさだ。
  その魔物は私の隣りの石柱に降り立つと、私に脚に付けられた手紙を差し出した。

「え、私?
  あ! 師匠からの手紙だ!」

ビッグクロウは私が手紙を受け取ると飛び去って行った。
  それを見送った私は、師匠からの手紙を読む。

「ふっ!ふざけんな~‼︎」

「ど、どうしたのですかマーリンさん!」

「何が書かれていたんだ?」

  私は無言で手紙をレオに渡す。

「よ、読んで良いのか?」

『親愛なる我が弟子  マーリンへ
  
  卒業おめでとう。
  3年間、よく頑張ったね。
  君はこの3年間で、沢山の事を学び、大きく成長した事と思う。
  友人と共に多くの困難を乗り越えて来た事だろう。
  なので、君の成長を見せて貰う為、試練を与える事にした。
  君は王都から旅立ち、世界を回り、私を探し出してみなさい。
  コレを成した時、君に魔導の奥義を授けよう。
  

                                 大賢者 イナミ   』


「「「「………………」」」」

「………………どう思う?」

「た、大変だな」

「大賢者になる為の試練ですわ」

「応援するよ」

「頑張って下さい!」

「見つけたら絶対一発ぶん殴ってやる!」

  こうして私の、師匠を探す長い旅が始まったのだ












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