上 下
4 / 66
マーリンさんの学業奮闘記

マーリンさん、王都に行く

しおりを挟む
「マーリン、君には次の修行として王都の学院に入学し3年間の学生生活をして貰う」

「は?」

  私は師匠から唐突に告げられた言葉を直ぐに理解出来なかった。
  魔導の真髄を極め、次代の大賢者と成るべく修行を積んでいた私がなぜ王都の学院などに通わなければならないのか?
  そもそも学院とは貴族や大商人の子供が顔を繋ぎ、知己を得る為に通う場所で、学問や武術などはお飾りだと聞いた事がある。
  そんな場所で一体何をしろと言うのか?
  学院などに通っている時間が有れば魔法の1つでも習得するべきである。
  例え師匠の命令だとしても軽々しく首を縦に振る訳には行かない。
  私は断固抗議する!


「そう思っていた時が私にも有りました」

  結局、師匠に言いくるめられた私は王都へ向かう乗り合い馬車の中で大きなため息を吐くのだった。
  乗り心地最悪な馬車に詰め込まれ早4日、漸く王都に着いた。
  王都には師匠に連れられて何度か来た事が有る。
  学院の場所もその時、物のついでの様に教わった。
   
「すみません。学生管理室はこちらですか?」

「はい。そうですよ。入学希望ですか?」

「はい。あ、これを学生管理室で渡す様に言われているのですが」

  私は師匠から預かった手紙を差し出した。

「はい。拝見します」

  師匠の手紙に目を通した受付の女性は何度か頷き、奥にいた人に手紙を渡した。

「ナミヤ様のお弟子さんのマーリンさんですね。
  お話は聞いております。直ぐに案内の者が来ますのでそちらにお掛けになってお待ち下さい」

  言われた通り、椅子に座って案内の人を待つとしよう。
  すると奥の廊下から女性が歩いて来た。
  良く言えば凛々しい、悪く言えばきつそうな雰囲気だ。

「あなたがマーリンさんですね。
  私は学生寮の寮監、サマンサです。
   生徒たちの寮での生活を監督しています。
  王国法により、この学院では全ての生徒の身分は平等です。
  貴族だろうと平民だろうと王族だろうと皆平等です。
  例え貴方が大賢者ナミヤ様の弟子であろうとそれは同じです。
  くれぐれも問題など起こさない様に」

「は、はい」

  開口一番に怒涛の自己紹介を頂いた。
  なかなか強烈な性格のおば「ギロリ」
……お姉さんだ。

  サマンサさんに着いて学生寮に向かった。
  学生寮はかなり大きな建物だ。学院に通う全ての生徒が暮らす建物なのでこれくらいの大きさが必要なのだろう。
  
「ここが貴方の部屋です。制服と教本は机の上に有ります。
  クラス分けの試験までに不備が無いよう確認して置くように。
  食事は決められた時間に食堂で取って下さい。
  ではわたしはまだ仕事が有りますので、何か問題が有りましたら生徒管理室に来て下さい」

「はい。ありがとうございました」

  私に与えられた部屋は手狭たが1人で暮らすには十分な広さだった。
  簡素なベッドと机と椅子が有るだけだ。
  机の上には教本と制服が置いてある。
  3日後に有るクラス分けの試験までは特にすることは無いので、私はどう時間を潰すべきか悩むのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

紅雨 サイドストーリー

法月
ファンタジー
『紅雨-架橋戦記-』のサイドストーリー置き場です。 本編何話読了後推奨なのかはタイトルの数字を参考にしてください✍🏻 タイトルの横に⚠︎︎がある回は人を選ぶ描写を含みます。(こちらはグロが多いかもしれない) 本編⇨ https://www.alphapolis.co.jp/novel/343632491/962298600

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

私は普通を諦めない

星野桜
ファンタジー
前世で日本の大学生(アイドルオタク)だった佐藤瑠奈は、強い魔力を持った王族が治める王国の小さな村で生まれた。初めて見た魔法に感動して、期待に胸膨らませていたけど、現実を知る。平民に対するひどい差別と偏見、厳しい暮らし、保証のない生活、こんなのいや! 私、自分にとっての普通を取り戻したい! そんな不満をぶつけるように、数ヶ月だけ一緒にいたなんか偉そうな男の子にいろいろ言った結果、その子は実は王太子だった。 昔出会った偉そうなお坊ちゃんが王子様系王太子殿下となって再び現れ、王太子妃になって欲しいと言われる。普通の生活を手に入れるために婚約者となった瑠奈と、そんな瑠奈をどうしても手に入れたい最強王太子。 前世の知識を武器に世界の普通を壊していく。 ※小説家になろう様で公開中の作品です。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

処理中です...