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1人と1振り
ヴァインとアーク
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ヴァインはエールを一息に飲み干して杯を机の上に戻した。
「はっはっは、やはりこの一杯は美しい、それはまさに命の花に降り注ぐ生命の雫の様だ!」
「いや、黙って飲めよ」
ヴァインは呆れ顔で宿屋の食事を大袈裟に賛美しながら大騒ぎで食事をする連れにツッコミを入れた。
あの日、盗賊を皆殺しにしたアークを警戒したヴァインだったが、流れで行動を共にする内に、なんとなく馬が合ったのかそのまま一緒に旅をして来た。
あの時の変貌は、遺跡の中で見つけた呪いの剣によるものだと判明した後、ヴァインは教会で浄化して貰うべきだと言ったのだか、なんとアークは『はっはっは、なに、話せば分かるさ!』と言って呪いの意思と対話を始めたのだ。
しかも、数時間が経ち、ヴァインが教会に神父を呼びに行くべきかと考え始めた時、閉じていた目を『カッ!』と見開き、呪いの意思と和解したと宣ったのだ。
実際に呪いの意思と自在に入れ替わって見せて、ヴァインも呪いの意思と会話を交わしたりもした。
『いひひひ、アークの奴はなかなかおもしれー奴だよな!』とか言っていた。
全く、本当にとんでもない奴だ。
そんな呪いの意思の力もあり、アークはDランク冒険者と成っていた。
ヴァインとアークは討伐系の依頼を中心にこなしながらミルミット王国の端にある街まで来ていた。
「さて、明日はどうする?」
「そうだな、一応、ギルドのクエストボードを確認して、特に美しい依頼が無ければ休みにすると言うのはどうだい?」
「…………何だよ美しい依頼って?
まぁ、そうだな。
割りのいい依頼があれば受ければいいか」
俺達は割とゆっくりと体を休めるのだった。
特に軋む訳でもなく、スムーズに開く訳でもないスイングドアを開けて、特に大きな訳でも小さな訳でもないギルドへと足を踏み入れる。
クエストボードにはいくつかの依頼書が貼られている。
「特に目を惹く依頼は無いな」
「ならば、今日は休日だな。
街にでも繰り出すか?」
「何をするんだ?」
「なに、この僕を待っているこの街の子猫ちゃんへのサービスさ」
「ああ、そう」
アークは最近見慣れたヴァインの呆れ顔を軽く受け流す。
そんな2人がギルドを出ようとした時だった。
ギルドの職員がギルドホールに聞こえる様に声を上げる。
「緊急依頼です。
定員は30名、依頼内容は貴族の屋敷の警備。
実力より、信頼を優先する為、受注には審査が有ります」
「「?」」
この時間に新たしい依頼が出るとは珍しい。
ヴァインとアークは職員が持って来た依頼内容を確認し、依頼を受ける事に決めた。
「ベテランの稼いでいる冒険者には割に合わない依頼かも知れないが、俺達みたいな中堅にはなかなか条件の良い依頼だよな」
依頼の内容は怪盗に狙われている貴族の屋敷の警備の手伝いで有り、例え怪盗に負けたとしても依頼は達成となるらしい。
更に依頼主はなんとミルミット王国の第1王女様だ。
「そうだね、それに噂に聞く怪人108面相とこの僕、どちらが美しいがはっきりさせて貰うとしよう」
「はい、はい」
「はっはっは、やはりこの一杯は美しい、それはまさに命の花に降り注ぐ生命の雫の様だ!」
「いや、黙って飲めよ」
ヴァインは呆れ顔で宿屋の食事を大袈裟に賛美しながら大騒ぎで食事をする連れにツッコミを入れた。
あの日、盗賊を皆殺しにしたアークを警戒したヴァインだったが、流れで行動を共にする内に、なんとなく馬が合ったのかそのまま一緒に旅をして来た。
あの時の変貌は、遺跡の中で見つけた呪いの剣によるものだと判明した後、ヴァインは教会で浄化して貰うべきだと言ったのだか、なんとアークは『はっはっは、なに、話せば分かるさ!』と言って呪いの意思と対話を始めたのだ。
しかも、数時間が経ち、ヴァインが教会に神父を呼びに行くべきかと考え始めた時、閉じていた目を『カッ!』と見開き、呪いの意思と和解したと宣ったのだ。
実際に呪いの意思と自在に入れ替わって見せて、ヴァインも呪いの意思と会話を交わしたりもした。
『いひひひ、アークの奴はなかなかおもしれー奴だよな!』とか言っていた。
全く、本当にとんでもない奴だ。
そんな呪いの意思の力もあり、アークはDランク冒険者と成っていた。
ヴァインとアークは討伐系の依頼を中心にこなしながらミルミット王国の端にある街まで来ていた。
「さて、明日はどうする?」
「そうだな、一応、ギルドのクエストボードを確認して、特に美しい依頼が無ければ休みにすると言うのはどうだい?」
「…………何だよ美しい依頼って?
まぁ、そうだな。
割りのいい依頼があれば受ければいいか」
俺達は割とゆっくりと体を休めるのだった。
特に軋む訳でもなく、スムーズに開く訳でもないスイングドアを開けて、特に大きな訳でも小さな訳でもないギルドへと足を踏み入れる。
クエストボードにはいくつかの依頼書が貼られている。
「特に目を惹く依頼は無いな」
「ならば、今日は休日だな。
街にでも繰り出すか?」
「何をするんだ?」
「なに、この僕を待っているこの街の子猫ちゃんへのサービスさ」
「ああ、そう」
アークは最近見慣れたヴァインの呆れ顔を軽く受け流す。
そんな2人がギルドを出ようとした時だった。
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「緊急依頼です。
定員は30名、依頼内容は貴族の屋敷の警備。
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「「?」」
この時間に新たしい依頼が出るとは珍しい。
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「ベテランの稼いでいる冒険者には割に合わない依頼かも知れないが、俺達みたいな中堅にはなかなか条件の良い依頼だよな」
依頼の内容は怪盗に狙われている貴族の屋敷の警備の手伝いで有り、例え怪盗に負けたとしても依頼は達成となるらしい。
更に依頼主はなんとミルミット王国の第1王女様だ。
「そうだね、それに噂に聞く怪人108面相とこの僕、どちらが美しいがはっきりさせて貰うとしよう」
「はい、はい」
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