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1人と1振り

手にした物は

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  とある丘の上にある遺跡群、その中に大きな穴が開いていた。
  そして、崩れ落ちた穴の中には赤い革鎧を身に付けた冒険者アークの姿がある。
  盗賊の頭目の戦鎚を受けて吹き飛ばされたアークは、古びた遺跡に叩きつけられた。
  その時、遺跡の石畳が崩壊し、アークは地下にあったこの空間へと落下して来たのだった。

「う……くぅ……」

  全身の痛みに耐えてなんとか身を起こす。

「は、早く戻らなければ……人々がこの僕の助けを……待っているんだ!」

  心意気だけは立派である。
  
「くっ、武器が……」

  アークはそこで己の愛用のレイピアが刃の中程で砕けている事に気がついた。
  何か武器の代わりになる物は無いかと辺りを見回す。

「な⁉︎」

  するとアークの目に驚愕の光景が飛び込んで来た。
  そこは古代の地下神殿だったのか、祭壇の様に高くなっている場所に薄っすらと発光する光の魔法陣があった。
  そして、その魔法陣の中心には一振りの細剣が置かれている。
  アークが使っていたレイピアは突きに特化した細い剣だが、その細剣も細い刃を持っている。
  しかし、アークの剣よりも刃は厚く、また幅も広めだ。
  おそらく、突きが主体ではあるが、ある程度斬りつけたりも出来る様に作られているのだろう。
  ダンジョンや遺跡などで発見されたアイテムの所有権は基本的には発見した冒険者に有る。
  つまり、この剣は発見したアークの物だという事だ。
  武器を無くした時にたまたま遺跡に落ちて、たまたま武器を発見、しかもその武器は、自分が得意(自称)な細剣だった。
  そんな偶然が有るだろうか?
  そんな状況にアークは……

「おお、流石は僕、なんと言う幸運!」

  …………まったく疑問に思うことは無かった。
  スタスタと近き、剣を拾い上げる。

「ぐ、ぐぁぁあ!」

  剣に触れた瞬間、アークの頭に割れんばかりの激痛が走る。
  そして次第にアークの思考力は低下して行く。
  アークの自我が消えて行く事に比例する様に、アークの輝く様な金髪から色が抜けて白へと変わって行く。

「くひぃ、いひひひ」

  まるで剣から流れ込むかの様な殺意と破壊衝動に最後まで残っていたアークの意識も精神の奥深くへと追いやられてしまった。
  アークは剣を装備した。
  しかし、剣は呪われていた。

「いひひ、なんて馬鹿な人間ダ。
  こんなあからさまに怪しい剣を手にするとハ。
  だが、おかげで俺様は自由の身って奴ダ。
  手始めに外で騒いでる奴らを殺すカ。
  久し振りに人間の血を味わうとしよウ」

  アークだった白髪の男は禍々しい気配を放つ細剣を手に、光が降り注ぐ大穴から外へと飛び出して行くのだった。
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