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1人と1振り
美しき乱入者(自称)
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近くの村まで少女を送り届けたアークは、時折謎のポーズをキメながら街道を進む。
この辺りにはあの少女を襲っていた様な盗賊が多い。
元々、盗賊を取り締まる筈の領主が盗賊からの賄賂によって討伐を行わなかった為、多くの盗賊がいた。
更につい最近、王都で革命が起こり、悪政を敷いていた前王は捕らえられ、王都の広場で処刑されたらしい。
新政府はすぐさま盗賊や犯罪兵を討伐する為に動き出したが、それでも現状は手が足りていない。
軽く歩くだけで盗賊に当たるくらいだ。
体感ではあるが魔物に遭遇するよりも、盗賊に出会う方が多い。
小さな丘を越えようとしていたアークの目にも最近見慣れて来た光景が映る。
「またか、まったく。
美しくない奴らだ」
顔をしかめたアークだったが、すぐさま盗賊に襲われている馬車に向かって駆け出して行った。
勿論、馬車を守っている冒険者に加勢する為だ…………いい迷惑である。
「くっ!」
ヴァインは盗賊の剣を左手のサークルシールドを掲げ受け止める。
ヴァインはギルドランクこそはまだDランクであり、高ランク冒険者とは言えないが、家庭の事情で幼い頃から剣術の指南を受けて来た。
その為、落ちぶれて盗賊などになった者達に遅れを取るはずはなかった。
しかし、今回はあまりにも盗賊の数が多い。
近くの街までの短い期間の護衛だからと、1人で護衛を引き受けたのが間違いだった。
小さな丘の上、ボロボロの遺跡の近くの街道を進んでいる時、盗賊の襲撃を受けた。
このまま戦い続けてもジリ貧になるだろう。
せめてあと1人、戦える人間が居れば……
「そこまでだ、盗賊共!」
背後の岩影に身を隠した商人達を背に庇い戦っていたヴァインの耳にそんな声が届いた。
声が聞こえた方に目をやると赤く染め抜いた革鎧を身に付けた冒険者がレイピアを抜きながらこちらに向かってくる姿だった。
「へへ、助かったぜ」
ヴァインは己の幸運に感謝した。
あの冒険者が戦列に加わってくれたのなら盗賊程度に負ける事はないだろう。
「愚かな盗賊共よ、この赤バラのアークの前で罪を犯した己を呪うが良い!」
加勢に来てくれた冒険者は、勇ましく戦闘に加わった。
「喰らえ!荘厳なる薔薇を纏いし真紅の十字架!」
冒険者が技名を叫びながらレイピアを突き出した。
しかし、その突きはあっさりと躱されて反撃を受ける。
「なんだこいつは!」
「ぐぁぁあ!」
盗賊の反撃は、武術などとは言えないただの蹴りだったのだが、レイピアを持った冒険者はもろに受けて吹き飛ばされてしまった。
「てめぇ、何しに来たんだよ!」
それを見たヴァインは思わす叫んでしまった。
弱い、弱すぎる。
あの程度の蹴りも避けられないのか!
蹴った盗賊の方も避ける素振りも見せずにまともに攻撃を受けた事に驚いているくらいだ。
「く、なかなかやるな。
このアークの本気を見せてやろう!」
冒険者はフラフラしながら起き上がるとまたもや盗賊に斬りかかった。
しかし、やはり弱い。
冒険者の攻撃は掠りもぜず、次々と盗賊に殴られて行く。
「雑魚の癖に手間取らせんじゃねぇよ」
そして、盗賊の頭目らしき男がその巨体に見合う大きな戦鎚を振りかぶる。
「ちっ、おいバカ、逃げろ!」
ヴァインの叫びも虚しく、大きな軌道で遠心力の乗った戦鎚の横薙ぎの一撃は、冒険者が手にしていたレイピアをヘシ折り、革鎧へと命中した。
乱入してきた冒険者は、数メートル先の遺跡群の方へと吹き飛ばしてしまった。
革鎧を装備していた様だが、当たりどころが悪ければ即死しているだろう。
しかし、今は他人に気をとられている場合では無い。
今まさに自分も命の危機なのだ。
この辺りにはあの少女を襲っていた様な盗賊が多い。
元々、盗賊を取り締まる筈の領主が盗賊からの賄賂によって討伐を行わなかった為、多くの盗賊がいた。
更につい最近、王都で革命が起こり、悪政を敷いていた前王は捕らえられ、王都の広場で処刑されたらしい。
新政府はすぐさま盗賊や犯罪兵を討伐する為に動き出したが、それでも現状は手が足りていない。
軽く歩くだけで盗賊に当たるくらいだ。
体感ではあるが魔物に遭遇するよりも、盗賊に出会う方が多い。
小さな丘を越えようとしていたアークの目にも最近見慣れて来た光景が映る。
「またか、まったく。
美しくない奴らだ」
顔をしかめたアークだったが、すぐさま盗賊に襲われている馬車に向かって駆け出して行った。
勿論、馬車を守っている冒険者に加勢する為だ…………いい迷惑である。
「くっ!」
ヴァインは盗賊の剣を左手のサークルシールドを掲げ受け止める。
ヴァインはギルドランクこそはまだDランクであり、高ランク冒険者とは言えないが、家庭の事情で幼い頃から剣術の指南を受けて来た。
その為、落ちぶれて盗賊などになった者達に遅れを取るはずはなかった。
しかし、今回はあまりにも盗賊の数が多い。
近くの街までの短い期間の護衛だからと、1人で護衛を引き受けたのが間違いだった。
小さな丘の上、ボロボロの遺跡の近くの街道を進んでいる時、盗賊の襲撃を受けた。
このまま戦い続けてもジリ貧になるだろう。
せめてあと1人、戦える人間が居れば……
「そこまでだ、盗賊共!」
背後の岩影に身を隠した商人達を背に庇い戦っていたヴァインの耳にそんな声が届いた。
声が聞こえた方に目をやると赤く染め抜いた革鎧を身に付けた冒険者がレイピアを抜きながらこちらに向かってくる姿だった。
「へへ、助かったぜ」
ヴァインは己の幸運に感謝した。
あの冒険者が戦列に加わってくれたのなら盗賊程度に負ける事はないだろう。
「愚かな盗賊共よ、この赤バラのアークの前で罪を犯した己を呪うが良い!」
加勢に来てくれた冒険者は、勇ましく戦闘に加わった。
「喰らえ!荘厳なる薔薇を纏いし真紅の十字架!」
冒険者が技名を叫びながらレイピアを突き出した。
しかし、その突きはあっさりと躱されて反撃を受ける。
「なんだこいつは!」
「ぐぁぁあ!」
盗賊の反撃は、武術などとは言えないただの蹴りだったのだが、レイピアを持った冒険者はもろに受けて吹き飛ばされてしまった。
「てめぇ、何しに来たんだよ!」
それを見たヴァインは思わす叫んでしまった。
弱い、弱すぎる。
あの程度の蹴りも避けられないのか!
蹴った盗賊の方も避ける素振りも見せずにまともに攻撃を受けた事に驚いているくらいだ。
「く、なかなかやるな。
このアークの本気を見せてやろう!」
冒険者はフラフラしながら起き上がるとまたもや盗賊に斬りかかった。
しかし、やはり弱い。
冒険者の攻撃は掠りもぜず、次々と盗賊に殴られて行く。
「雑魚の癖に手間取らせんじゃねぇよ」
そして、盗賊の頭目らしき男がその巨体に見合う大きな戦鎚を振りかぶる。
「ちっ、おいバカ、逃げろ!」
ヴァインの叫びも虚しく、大きな軌道で遠心力の乗った戦鎚の横薙ぎの一撃は、冒険者が手にしていたレイピアをヘシ折り、革鎧へと命中した。
乱入してきた冒険者は、数メートル先の遺跡群の方へと吹き飛ばしてしまった。
革鎧を装備していた様だが、当たりどころが悪ければ即死しているだろう。
しかし、今は他人に気をとられている場合では無い。
今まさに自分も命の危機なのだ。
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