55 / 66
1人と1振り
少女の救世主
しおりを挟む
「はぁはぁはぁ」
薄暗い林の中を少女が必死で走る。
一角うさぎやスライムくらいしか出ない安全な林は、村人がよく薬草や山菜を採りにくる場所だった。
少女も怪我をした弟の為に薬草を採りに来たのだが、安全なはずの林には薄汚れた服を着た3人の男達が居た。
少し離れた山にアジトを構えていた盗賊団が冒険者の襲撃により壊滅し、命からがら逃げ出した3人の盗賊が林に身を隠していたのだった。
「ひゃっはははぁ~!」
「ほらほらお嬢ちゃん、捕まえちゃうよぉ」
「ひ、ひひ久し振りの女だ、ひひ」
下品な笑みを浮かべた3人の盗賊は少女に追いつかない様に後を追っている。
このまま、付かず離れずで追いかけて少女が疲れ切った所で捕まえるつもりだ。
これまで何度も行った行為だ。
弱い者をいたぶるのが好きな3人はこの行為が、お気に入りだった。
「はっはっはっ、あ⁉︎」
必死で逃げていた少女は、張り出していた木の根に躓いて転んでしまう。
地面に打ち付けられた身体が痛み、その痛みがコレから自分の身に起こる事への恐怖を増加させる。
「あれ~転んじゃったんだ~」
「大丈夫ぅ?ひひ」
「ほら、こっちにおいでよ、気持ちよくしてやるからよ」
ニヤニヤと笑いながら盗賊達は少女へと近づいてくる。
「いや!来ないで!」
少女が必死に叫んでも盗賊達は更にニヤニヤと笑うだけだった。
そして、盗賊の1人が少女の服に手を掛けようとした時だった。
「その辺にしておけ」
盗賊達に声をかける者がいた。
盗賊達か声の主の姿を確認する。
そいつは冒険者の様だった。
盗賊達は3人、相手は1人だ。
しかし、冒険者を相手にするには単純な数の差では考えられない。
当然だ。
わざわざ自分からこちらに声を掛けて来たのだ。
当然、冒険者は盗賊達が3人居る事を理解した上で声を掛けてたと言う事だ。
冒険者と盗賊なら冒険者の方が強い。
冒険者に簡単に勝てるくらい強ければ盗賊なんてやってはいないだろう。
それこそ、冒険者や兵士しでもなれば、街中で人並みの暮らしが出来るのだから当然だ。
冒険者はゆっくりと盗賊達に近づいて行く。
腰のレイピアに手を掛けてはいるが、抜いてはいない。
それは、己の強さへの自信故の物だろう。
「……………………ちっ、ずらかるぞ」
盗賊達は急ぎ足で立ち去って行った。
冒険者はレイピアの柄から手を離し、その手を少女へと差し伸べる。
「大丈夫かい?」
「は、はい。
ありがとうございます。
なんとお礼を言っていいか」
「礼なんていらないさ、僕は当然の事をしたまでだからね」
「あ、あの、お名前をお聞きしても良いですか?」
「ああ、僕の名はアーク、戦場に咲く美しき赤き薔薇、全ての女性の守り人、アークとは僕の事だよ、子猫ちゃん」
赤く染め抜いた皮鎧と白いマントを身に付けた金髪の男はアークと名乗ると前髪を搔き上げる謎のポーズをとった。
「は、はあ」
その行動の意味が理解出来ず、少女は曖昧な笑みを浮かべるのだった。
薄暗い林の中を少女が必死で走る。
一角うさぎやスライムくらいしか出ない安全な林は、村人がよく薬草や山菜を採りにくる場所だった。
少女も怪我をした弟の為に薬草を採りに来たのだが、安全なはずの林には薄汚れた服を着た3人の男達が居た。
少し離れた山にアジトを構えていた盗賊団が冒険者の襲撃により壊滅し、命からがら逃げ出した3人の盗賊が林に身を隠していたのだった。
「ひゃっはははぁ~!」
「ほらほらお嬢ちゃん、捕まえちゃうよぉ」
「ひ、ひひ久し振りの女だ、ひひ」
下品な笑みを浮かべた3人の盗賊は少女に追いつかない様に後を追っている。
このまま、付かず離れずで追いかけて少女が疲れ切った所で捕まえるつもりだ。
これまで何度も行った行為だ。
弱い者をいたぶるのが好きな3人はこの行為が、お気に入りだった。
「はっはっはっ、あ⁉︎」
必死で逃げていた少女は、張り出していた木の根に躓いて転んでしまう。
地面に打ち付けられた身体が痛み、その痛みがコレから自分の身に起こる事への恐怖を増加させる。
「あれ~転んじゃったんだ~」
「大丈夫ぅ?ひひ」
「ほら、こっちにおいでよ、気持ちよくしてやるからよ」
ニヤニヤと笑いながら盗賊達は少女へと近づいてくる。
「いや!来ないで!」
少女が必死に叫んでも盗賊達は更にニヤニヤと笑うだけだった。
そして、盗賊の1人が少女の服に手を掛けようとした時だった。
「その辺にしておけ」
盗賊達に声をかける者がいた。
盗賊達か声の主の姿を確認する。
そいつは冒険者の様だった。
盗賊達は3人、相手は1人だ。
しかし、冒険者を相手にするには単純な数の差では考えられない。
当然だ。
わざわざ自分からこちらに声を掛けて来たのだ。
当然、冒険者は盗賊達が3人居る事を理解した上で声を掛けてたと言う事だ。
冒険者と盗賊なら冒険者の方が強い。
冒険者に簡単に勝てるくらい強ければ盗賊なんてやってはいないだろう。
それこそ、冒険者や兵士しでもなれば、街中で人並みの暮らしが出来るのだから当然だ。
冒険者はゆっくりと盗賊達に近づいて行く。
腰のレイピアに手を掛けてはいるが、抜いてはいない。
それは、己の強さへの自信故の物だろう。
「……………………ちっ、ずらかるぞ」
盗賊達は急ぎ足で立ち去って行った。
冒険者はレイピアの柄から手を離し、その手を少女へと差し伸べる。
「大丈夫かい?」
「は、はい。
ありがとうございます。
なんとお礼を言っていいか」
「礼なんていらないさ、僕は当然の事をしたまでだからね」
「あ、あの、お名前をお聞きしても良いですか?」
「ああ、僕の名はアーク、戦場に咲く美しき赤き薔薇、全ての女性の守り人、アークとは僕の事だよ、子猫ちゃん」
赤く染め抜いた皮鎧と白いマントを身に付けた金髪の男はアークと名乗ると前髪を搔き上げる謎のポーズをとった。
「は、はあ」
その行動の意味が理解出来ず、少女は曖昧な笑みを浮かべるのだった。
0
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
紅雨 サイドストーリー
法月
ファンタジー
『紅雨-架橋戦記-』のサイドストーリー置き場です。
本編何話読了後推奨なのかはタイトルの数字を参考にしてください✍🏻
タイトルの横に⚠︎︎がある回は人を選ぶ描写を含みます。(こちらはグロが多いかもしれない)
本編⇨ https://www.alphapolis.co.jp/novel/343632491/962298600
鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~
月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―
“賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。
だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。
当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。
ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?
そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?
彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?
力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。
傷つけて、傷つけられて……そうして僕らは、大人になっていく。 ――「本命彼女はモテすぎ注意!」サイドストーリー 佐々木史帆――
玉水ひひな
青春
「本命彼女はモテすぎ注意! ~高嶺に咲いてる僕のキミ~」のサイドストーリー短編です!
ヒロインは同作登場の佐々木史帆(ささきしほ)です。
本編試し読みで彼女の登場シーンは全部出ているので、よろしければ同作試し読みを読んでからお読みください。
《あらすじ》
憧れの「高校生」になった【佐々木史帆】は、彼氏が欲しくて堪まらない。
同じクラスで一番好みのタイプだった【桐生翔真(きりゅうしょうま)】という男子にほのかな憧れを抱き、何とかアプローチを頑張るのだが、彼にはいつしか、「高嶺の花」な本命の彼女ができてしまったようで――!
---
二万字弱の短編です。お時間のある時に読んでもらえたら嬉しいです!
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる