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盃を満たすは神の酒
新たな酒を求めて
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「とまぁコレがあの日アリアドネで起こった事の真実だ」
ジンは静かにグラスを置く。
「なんと、イザール神聖国の聖騎士団長にSランク冒険者、神域の剣士フィルですか。
まさか、そんな事があったなんて……」
商人の男が声をあげる。
その声は驚き半分、疑い半分だ。
「まったく、実際にその場にいたワシらでさえアレは夢か何かだったんじゃ無いかと思うわい」
そう言うとバッカスはジョッキに並々と注がれたエールを一息に飲み干した。
ここはグリント帝国の小さな町の酒場、ジンとバッカスの2人Cランクパーティ《溢れる盃》は商人の護衛としてこの町にやって来た。
そして、町に着いた時に護衛の契約は終了したのだが、商人に誘われて酒場へとやって来たのだった。
そこで、商人にアリアドネでの戦いの様子を語って聞かせていたのだ。
「それで、聖騎士団長と神域の剣士はその後、どうされたのですか?」
「バルの奴は家族の行方を探すと言って旅に出たな。
神域の剣士の方はよく分からん。
築いた時には居なかった」
「ほぅ、流石Sランク冒険者ですね」
妙な所で感心している商人の男は、ふと気が付いた様に訪ねて来た。
「所でジンさんとバッカスさんは何故旅をされているのですか?
Cランクパーティならば迷宮都市アリアドネで何不自由なく暮らせるだけの稼ぎは得られると思うのですが?」
ジンとバッカスは商人の男の言葉に目を合わせてニヤリと笑う。
「なに、ワシらにも目的と言うものがあるんじゃよ」
「目的……ですか?」
「ああ、神酒って知ってるか?」
「たしか、神が醸造したと言われる伝説のお酒ですよね。
現存するものは全てが何れかの国の国宝として保管されているはずです」
「そうだ、その神酒を口にするのが俺達の目的だ」
俺達の目的を聞いた商人の男は驚きの表情を浮かべる。
「そ、それは城から奪うってことですか⁉︎」
「バッカ!そんな訳無いだろ!」
「そんな事をすれば酒を飲む間も無く死罪じゃろうが。
そうではなく、まだ王家の所有となっていない神酒を探し出すと言う事じゃ」
「そ、そんな物が有るのでしょうか?」
「さぁな、でも可能性はゼロじゃない」
表情から俺達の決意を読み取ったのか商人の男はそれ以上追求はしてこなかった。
「そうだ、お二人に是非コレを」
商人はマジックバッグから瓶を1つ取り出すと、カウンターへ行きグラスを貰って戻って来た。
そして、瓶の中身をグラスに注ぐ。
「さぁ、どうぞ」
ジンとバッカスの前にグラスが置かれる。
「なんだ、こりゃ。
見た目は水見てぇだが?」
「しかし、かなり強そうな酒精の匂いがするぞ?」
ジンとバッカスは顔を見合わせ、2人同時にグラスを煽った。
「う、美味い!」
「な、なんじゃこの酒は!」
その酒はまるで果汁の様にフルーティでそれでいて喉の奥を焼き尽くすように強い酒精を持っていた。
まるで、ドワーフの火酒とエルフの果実酒の良いとこ取りをした様な未知の酒だった。
ジンとバッカスはこの酒に付いて商人の男に詰め寄った。
「ロキの旦那、この酒は一体何処で?」
「教えてくれ、ロキ殿」
詰め寄る2人の冒険者の勢いにただの行商人であるロキは押され気味に答える。
「えっと、このお酒は私の知り合いの薬師が醸造したものです。
あくまで、その薬師が個人で消費する為に作っている物ですからね。
でも、交渉次第では譲ってもらえるかも知れませんよ。
私が紹介書を書けば最低でも話くらいは聞いてくれると思います」
「「教えてくれその薬師の居場所を!」」
こうして、《溢れる盃》の2人はミルミット王国を目指し、新たな旅に出るのだった。
盃を満たすは神の酒 完
ジンは静かにグラスを置く。
「なんと、イザール神聖国の聖騎士団長にSランク冒険者、神域の剣士フィルですか。
まさか、そんな事があったなんて……」
商人の男が声をあげる。
その声は驚き半分、疑い半分だ。
「まったく、実際にその場にいたワシらでさえアレは夢か何かだったんじゃ無いかと思うわい」
そう言うとバッカスはジョッキに並々と注がれたエールを一息に飲み干した。
ここはグリント帝国の小さな町の酒場、ジンとバッカスの2人Cランクパーティ《溢れる盃》は商人の護衛としてこの町にやって来た。
そして、町に着いた時に護衛の契約は終了したのだが、商人に誘われて酒場へとやって来たのだった。
そこで、商人にアリアドネでの戦いの様子を語って聞かせていたのだ。
「それで、聖騎士団長と神域の剣士はその後、どうされたのですか?」
「バルの奴は家族の行方を探すと言って旅に出たな。
神域の剣士の方はよく分からん。
築いた時には居なかった」
「ほぅ、流石Sランク冒険者ですね」
妙な所で感心している商人の男は、ふと気が付いた様に訪ねて来た。
「所でジンさんとバッカスさんは何故旅をされているのですか?
Cランクパーティならば迷宮都市アリアドネで何不自由なく暮らせるだけの稼ぎは得られると思うのですが?」
ジンとバッカスは商人の男の言葉に目を合わせてニヤリと笑う。
「なに、ワシらにも目的と言うものがあるんじゃよ」
「目的……ですか?」
「ああ、神酒って知ってるか?」
「たしか、神が醸造したと言われる伝説のお酒ですよね。
現存するものは全てが何れかの国の国宝として保管されているはずです」
「そうだ、その神酒を口にするのが俺達の目的だ」
俺達の目的を聞いた商人の男は驚きの表情を浮かべる。
「そ、それは城から奪うってことですか⁉︎」
「バッカ!そんな訳無いだろ!」
「そんな事をすれば酒を飲む間も無く死罪じゃろうが。
そうではなく、まだ王家の所有となっていない神酒を探し出すと言う事じゃ」
「そ、そんな物が有るのでしょうか?」
「さぁな、でも可能性はゼロじゃない」
表情から俺達の決意を読み取ったのか商人の男はそれ以上追求はしてこなかった。
「そうだ、お二人に是非コレを」
商人はマジックバッグから瓶を1つ取り出すと、カウンターへ行きグラスを貰って戻って来た。
そして、瓶の中身をグラスに注ぐ。
「さぁ、どうぞ」
ジンとバッカスの前にグラスが置かれる。
「なんだ、こりゃ。
見た目は水見てぇだが?」
「しかし、かなり強そうな酒精の匂いがするぞ?」
ジンとバッカスは顔を見合わせ、2人同時にグラスを煽った。
「う、美味い!」
「な、なんじゃこの酒は!」
その酒はまるで果汁の様にフルーティでそれでいて喉の奥を焼き尽くすように強い酒精を持っていた。
まるで、ドワーフの火酒とエルフの果実酒の良いとこ取りをした様な未知の酒だった。
ジンとバッカスはこの酒に付いて商人の男に詰め寄った。
「ロキの旦那、この酒は一体何処で?」
「教えてくれ、ロキ殿」
詰め寄る2人の冒険者の勢いにただの行商人であるロキは押され気味に答える。
「えっと、このお酒は私の知り合いの薬師が醸造したものです。
あくまで、その薬師が個人で消費する為に作っている物ですからね。
でも、交渉次第では譲ってもらえるかも知れませんよ。
私が紹介書を書けば最低でも話くらいは聞いてくれると思います」
「「教えてくれその薬師の居場所を!」」
こうして、《溢れる盃》の2人はミルミット王国を目指し、新たな旅に出るのだった。
盃を満たすは神の酒 完
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