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迷宮都市の盾使い

降霊石

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  みんながアンデットドラゴンの骨や牙などを物色する中、私はアンデットドラゴンの背後に有った台座に置かれた宝石を手にする。
  この宝石、伝説級レジェンドのマジックアイテム『降霊石』は私が貰える様に交渉済みだ。

「ソフィア、目的の物は手に入ったのか?」

「はい、ありがとうございます。
  みなさんのおかげです」

「ははは、気にするなよ。
  俺達だってアンデットドラゴンの素材を多めに貰えるんだからな。
  しかし、本当にいいのか?
  別に山分けでも良いんだぞ」

「いえ、この降霊石も売却すればとんでもない値段に成りますからね。
  それを譲って貰うのですから、私の取り分は少しで構いません」

  そう、私が本当に求めていた物はこのマジックアイテムだったのたから。



  転移魔法陣で迷宮を脱出した翌日、私は迷宮都市ダイダロスの郊外にある少し開けた場所に来て居る。
  邪魔が入らない場所で降霊石を使いたかったのだ。
  本当ならば天海の大迷宮を脱出して、直ぐに降霊石を、使いたかったがこのマジックアイテムは呼び出す魂の数に応じた魔力が必要だ。
  疲弊した私では誰1人呼び出す事も出来ず、降霊石が砕け散ってしまうかも知れない。
  なので、休憩を取り、魔力を回復させてからここにやって来た。
  私は呼び出したい人物を強くイメージしながら降霊石に魔力を込める。
  イメージしたのは母上と父上、そして兄上だ。
  彼らと話すことが出来れば私は自分の人生を生きて行ける気がする。
  魔力が溜まったのだろう。
  降霊石から霧のような靄が吹き出し人の形を作る。

「は、母上…………」

  靄は母上の形となった。

『ソフィア…………コレは……降霊石の力ですか。
  ソフィア、大きくなりましたね』

  私の目から熱い雫がこぼれ落ちて行く。
  母上に会った時に伝えようと思っていた言葉など、何1つ出てこなかった。
  
「は、母上、私は、うっく、私は……」

『ソフィア、稀少なマジックアイテムである降霊石を手に入れたと言うことは貴女はとでも強くなったのでしょうね。
  それに心強い仲間も居るのではないですか?』

「は、はい。
  とても、とても強い仲間が居ます」

『そうですか、よい人々と共にあるようで母は安心しました。
  幼い頃の貴女は少し人見知りな所が有ったので母と父上は心配していたのですよ?』

「そうだ、母上!父上と兄上はいらっしゃらないのですか?
  私は降霊石をを使用する時に3人を、イメージしたのですが……」

『父上と兄上は一緒では無いのですか?』

「はい、あの日、イザール神聖国は滅亡しました。
  父上と兄上も帰っては来ませんでした……」

『ソフィア、諦めてはいけません。
  降霊石は母の魂を呼び出し、貴女と話す時間をくれました。
  この降霊石は本物です。
  なら、父上と兄上が現れなかった理由は1つです』

「現れなかった理由……ですか?」

『はい、降霊石で魂が呼べなかった理由、それは恐らく父上と兄上は生きているのでしょう』


「なっ!  ほ、本当ですか⁉︎」

『全ては予想に過ぎません。
  しかし、それが最も可能性が高いのです』

「……………………分かりました。
  私は必ず父上と兄上を探し出して見せます。
  ですから母上、どうかご安心下さい」

『私は成長した貴女を見た時から何も心配は要らないと思っていましたよ。
  …………どうやらそろそろ時間のようですね。
  ソフィア、貴女に会えて本当に嬉しかったわ。
  ソフィア……愛しているわ』

「母上……私も、私も、母上を愛しています。
  母上が命を捨て私を守ってくれた事は一生忘れません!
  母上…………ありがとうございます」

  私は涙で滲む視界で、必死に母上の顔を目に焼き付けた。
  母上は愛おしいそうに微笑むと静かに消えていった。
  私はしばらくの間、砕けた降霊石を握り締め泣き続けたのだった。



  母上と再会して数日、私は旅の用意をして迷宮都市ダイダロスの門の前に居た。
  父上と兄上を探す為、旅に出る事にしたのだ。
  母上の形見の全身鎧とキマイラの素材で作った獣王の大楯はマジックバッグに仕舞い、身体の要所を鉄製の防具で守る部分鎧を付け、ラウンドシールトとショートソードを装備している。
  流石に全身鎧で長旅は不可能だ。
  ダンジョン内で強力な魔物を相手にしていた時なら良かったが、盗賊などを相手にするならば小回りの効く装備の方が有効だとカムイからアドバイスを受けたのだ。

「ソフィア、気を付けてな」

「偶には帰って来いよ」

「ソフィアちゃん、元気でね」

  みんなが見送りに来てくれた。

「ええ、みなさん、本当にありがとうございます。
  また、お会いしましょう」

  私は1人ずつ握手をして行く。

  今回の旅は商人の護衛として出発する。
  その商人はミルミット王国の村々を回り、半年程掛けてゆっくり王都に向かうらしい。

「おーい、ソフィアちゃん。
  出発するよ~」

「はい、今行きます」

  一緒に商人の護衛をする冒険者パーティ《輝く刃》の治癒魔法使い、ティナさんが呼びに来てくれた。

  私は新たな仲間である彼女達と家族を探す為、迷宮都市ダイダロスを旅立ったのだ。



          迷宮都市の盾使い  完
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