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炎の継承者
動き出した業火
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「カート、身体に気をつけのよ」
「ああ、分かってるよ母さん」
「カート、あなたは強いから弱い人を守るのよ」
「ああ、任せてよ母さん」
「カート、愛しているわ」
「ああ、俺も愛しているよ母さん」
「カート、ありがとう」
「ああ、ありがとう母さん…………おやすみ」
カートの母はこの日、長い眠りに就いた。
オークから受けた傷が元で父が亡くなってから数年がたった日の事、流行りの病だった。
母が亡くなって数日、カートは村を出る事にした。
実は以前から準備していたのだ。
父から譲られた魔法剣を持ち、母が愛用して居たローブを着込むと村の出口に向かう。
村人達はとても良くしてくれた。
家族を失ったカートを心配して食事などを世話してくれる人もいた。
カートが村を出るのはこの村が嫌いだからではない。
カートは父や母の若い頃の冒険譚を聞きながら育った。
そして、いつか自分も世界を見て回りたいと思う様になったのだ。
「カート」
「リンナねぇさん」
5歳年上の村人、リンナがカートを呼び止める。
リンナは赤ん坊を抱いている。
半年前に産まれた彼女の息子だ。
「カート、気をつけてね。
いつでも帰って来ていいのだからね」
「ああ、行って来るよ」
こうしてカートの旅は始まった。
パーフェの街で冒険者として登録したカートは魔物の討伐を中心に依頼をこなして行った。
「はぁぁあ!」
カートの剣はゴブリンの首を切り落とす。
「紅蓮!」
カートの叫びに呼応する様に魔法剣から炎が吹き出し、2匹のゴブリンを焼き尽くす。
「ふぅ、討伐完了だな」
カートは手早く討伐証明を集めるとギルドに戻る。
この辺りでの依頼もある程度こなしたのでそろそろ別の街に移動したいところだ。
今度は王都の方に行くのも良いかと考えながらギルドのスイングドアを開ける。
カウンターでゴブリン討伐の報酬を受け取り、クエストボードの方に向かうと2人組の冒険者が何やら話している。
「次は王都に行くんでしょ、ならこの護衛依頼を受けたら良いじゃない。
王都の近くの街までの護衛よ」
「よく見ろよ、この依頼の最低人数は3人じゃないか、あと1人足り無いぞ」
「そんなの誰か適当に誘えば良いわよ」
実に好都合な話が聞こえて来た。
カートはクエストボードの前に居た2人組の冒険者に話し掛ける。
「なぁ、お二人さん。
その依頼、俺も交ぜてくれないか?」
カートの冒険はまだ始まったばかりだ。
炎の継承者 完
「ああ、分かってるよ母さん」
「カート、あなたは強いから弱い人を守るのよ」
「ああ、任せてよ母さん」
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「カート、ありがとう」
「ああ、ありがとう母さん…………おやすみ」
カートの母はこの日、長い眠りに就いた。
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母が亡くなって数日、カートは村を出る事にした。
実は以前から準備していたのだ。
父から譲られた魔法剣を持ち、母が愛用して居たローブを着込むと村の出口に向かう。
村人達はとても良くしてくれた。
家族を失ったカートを心配して食事などを世話してくれる人もいた。
カートが村を出るのはこの村が嫌いだからではない。
カートは父や母の若い頃の冒険譚を聞きながら育った。
そして、いつか自分も世界を見て回りたいと思う様になったのだ。
「カート」
「リンナねぇさん」
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「カート、気をつけてね。
いつでも帰って来ていいのだからね」
「ああ、行って来るよ」
こうしてカートの旅は始まった。
パーフェの街で冒険者として登録したカートは魔物の討伐を中心に依頼をこなして行った。
「はぁぁあ!」
カートの剣はゴブリンの首を切り落とす。
「紅蓮!」
カートの叫びに呼応する様に魔法剣から炎が吹き出し、2匹のゴブリンを焼き尽くす。
「ふぅ、討伐完了だな」
カートは手早く討伐証明を集めるとギルドに戻る。
この辺りでの依頼もある程度こなしたのでそろそろ別の街に移動したいところだ。
今度は王都の方に行くのも良いかと考えながらギルドのスイングドアを開ける。
カウンターでゴブリン討伐の報酬を受け取り、クエストボードの方に向かうと2人組の冒険者が何やら話している。
「次は王都に行くんでしょ、ならこの護衛依頼を受けたら良いじゃない。
王都の近くの街までの護衛よ」
「よく見ろよ、この依頼の最低人数は3人じゃないか、あと1人足り無いぞ」
「そんなの誰か適当に誘えば良いわよ」
実に好都合な話が聞こえて来た。
カートはクエストボードの前に居た2人組の冒険者に話し掛ける。
「なぁ、お二人さん。
その依頼、俺も交ぜてくれないか?」
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炎の継承者 完
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