234 / 241
第二百三十四話 公爵になったけど……事件です!
しおりを挟む俺はついに公爵へと上り詰めた。
正直爵位なんてどうでもよかったんだけど、一度なったら一番上にまで上がりたい欲がふつふつと沸き上がり、密かに目指していたりする。
王都の城に呼ばれ、城の中庭でこれまた豪勢に爵位を与えてくれて、しかも平民でも見れるように城を解放していた。
何でもクーデターを食い止めた功績がでかかったのだとか。
そこまでしてもらわなくてもよかったんだけど、有名税だという事で仕方なく受けた。
公爵になった瞬間、拍手喝采が巻き起こり、様々な貴族から「自分の娘は如何でしょうか?」とお勧めされまくる。
鬱陶しい事この上なかったのだが、久々に隊長さんやらニトスさんと話が出来たから楽しかったなぁ。
隊長さんは、今城の兵をまとめる総隊長という立場にいるようだ。
給料も上がったらしく、以前よりふっくらとしている気がした。
ニトスさんと一緒に隊長さんをいじりまくったせいか、俺は痩せてやると宣言をしていた。
まぁ現場より事務仕事の方が増えたみたいだし、とりあえず頑張ってほしい。
そしてヨールデンとの戦争の際に軍師として、俺と一緒に戦ったニトスさん。
職は軍師をまとめる長という事で前回と変わっていないものの、最近結婚したようだ。
奥さんは何と、十七歳!
日本じゃ犯罪レベルだ! ……まぁ十二歳で結婚している俺が言えた口じゃないな。
この世界が十二歳で成人ってしているのが悪いのだ!
決して俺が悪い訳じゃない!
さて、この新婚ほやほやのニトスさん、盛大にのろけてくる。
まさかこの人がこんなにのろけるとは思わなくて、思わず口から砂糖がマーライオンの如く出るのではないかと錯覚してしまった程だった。
相当ラブラブなご様子で、最近は仕事を定時で切り上げて奥さんと一緒にいる時間を増やしているらしい。
そして胸ポケットには、小さな絵がしまってある。
これは奥さんとニトスさんが寄り添っている絵だ。
模写絵師に小さな絵が可能か確認したら、特別料金で随分金を持っていかれたそうだが可能だとの事。
仕事に嫌気が差した時、この絵を見て元気を補充しているのだとか。
ふむ、でもいい事聞いたな。
俺もちょっと頼んでみようかな、俺とレイ、リリル、アーリアが写っている絵を描いてもらって、遠征している時でも元気を補充できるようにさ。
よし、帰ったら頼もう!
そんな風に二人と会話を楽しんでいると、血相をかいてセバスチャンが俺に向かって走ってきていた。
見た目は初老なんだけど、走るスピードはとんでもない。
今の俺とほとんど大差ないんだ。
それはさておいて、どうしたんだろう?
「だ、旦那様! 大変でございます!」
「ど、どうしたんだよ、セバスチャン」
王様である親父の《影》として働いていたセバスチャン。
ちょっとやそっとでは動揺しない彼が、こんなに焦っている。
なにかあったのだろうか?
「り、リリル奥様が、産気づいているとの情報が入りました!!」
「な、なにぃ!?」
うっそ、マジか!?
予定より早い気がするぞ!
そしたら、こんなパーティなんてどうでもいい!
「セバスチャン、準備はできてるんだろうな!?」
「はっ! 滞りなく!」
「うっし、俺も帰る! その準備を今すぐしてくれ!!」
「旦那様!? 今貴方のパーティですよ!!」
「妻より大事な事なんてあるかよ!! 帰るぞ!!」
周囲の事なんて気にしない、大声でセバスチャンに指示を出す。
俺とセバスチャンの会話を聞いていた周囲もざわつき始める。
まさか、今度はパーティを蹴るのか? と。
ニトスさんと隊長さんはまたかって表情をしている。
そうだよ、まただよ!
すると、王太子である兄貴が近寄ってきた。
「全く、ハルの為に用意したパーティなのに、どうするんだい?」
「わりぃ、後で穴埋めするよ! 親父にも伝えておいてくれ」
「仕方ないな。ただし、私の穴埋めは少々値が張るよ?」
「財政破綻しない範疇であれば、いくらでも!」
「うん、楽しみにしておこう」
俺は全速力で中庭を抜けて城門まで走る。
門前に置かれていた俺の馬車に急いで乗り込んで、セバスチャンに指示を出す。
「セバスチャン、俺の事は気にしないで全速力で戻ってくれ!」
「畏まりました! 後で怒らないで頂きますよう!」
「わーってる! 今は俺の事よりリリルの方が大事だ!」
「はっ!!」
豪勢な馬車が、暴走気味で王都を駆け抜けてウェンブリーの街を目指した。
当然ながらガクガク揺れる馬車に盛大に酔った俺は、計四回も嘔吐した。
でもこれも愛しいリリルの為だ。
とにかく早く着いてほしいという気持ちしかなかったんだ。
0
お気に入りに追加
2,372
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる