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アルバートの事情
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「どうしたんだい?僕のかわいい弟君。そんなに難しい顔をしているなんて珍しいね。」
そう言ってテラスに出てきたのはこのカルスト国王太子であるマクミラン王子だった。
このカルスト国には絶世の美女と名高い王妃の美貌を受け継いだ三人の王子がいる。
宵闇の君こと第一王子のマクミラン、朝焼けの君こと第二王子ヘンドリック、そして月光の君こと第三王子のアルバートだ。
三人とも母から受け継いだ漆黒の髪を持つ美丈夫で、瞳の色はマクミランがオキニスのような黒、ヘンドリックがルビーのような赤、アルバートがエメラルドのような緑をしていた。
三人とも幼少から優秀でマクミランは内政をヘンドリックが経済をアルバートは外交を担ってこの山に囲まれた小国であるカルスト国を少しずつ改革し豊かに発展させてきた。
今年22歳となるアルバートは特に優秀で他国の海千山千の大使たちを相手取り、軽く手のひらで転がして自国に有利な条約をいくつも結んできたのだった。
そのアルバートがテラスで一人ため息をついているとなると一大事と侍従達から呼び出されてマクミランがやってきたのだ。
「兄上、、、まぁ月光の君と呼ばれているのだから少し月夜に出ているだけですよ。兄上こそこんな時間にどうしたんですか?」
「それは皆がお前を心配しているからだろうが。こんな時間に呼び出された私の気持ちも考えてはくれないか?」
アルバートの隣に立ったマクミランはほぼ同じ高さエメラルドの瞳を見つめた。
「お前が王子として以上にこの国の将来を見ているのは理解しているつもりだよ。何が問題なのかきちんと話してみなさい。」
兄の真剣味を帯びた視線を感じ普段めっきり見せなくなった末弟の甘えから自身の悩みを打ち明ける。
「兄上には敵いませんね。実は先日発掘された鉱山を有効に使う為に街道の整備が必要なのですが、それには隣国のサンディール王国の協力が必要不可欠です。ですが、、、彼の国は大国ですし、足元を見られてこちらの利にならないようなら新鉱山を秘匿した方が良いのではないかと思いまして、、、。そうすると我が国の発展が10年は遅れてしまいます。」
憂い顔に溜息をつくアルバートはある意味妖艶で兄であるマクミランでさえ一瞬息を止めた。
「お、お前らしくないではないか!今まで小国と馬鹿にしていた各国の大使達を丸め込み同等の条約を結び我が国の地位を引き上げたのは他ならぬおまえだぞ!グタグタ悩むなら早々にサンディール王国に行って確かめてくれば良いのだよ。最悪採掘権を取られても街道整備が叶えば御の字だと私は思うよ。」
「そうですね。彼の国の王は聡明で中々難しい交渉になるかもしれませんが、行ってみます。兄上に聞いて頂けてスッキリしました。」
アルバートはもう既に普段の不遜な微笑みを浮かべて伸びをした。
マクミランはいくつになっても末の弟は可愛いものだと笑みを深め最近入手したサンディール王国の内情を明かした。
「そう言えば、サンディール王国では今次期女王の王配選びが佳境らしい。上手く使えるかもしれないな。新鉱山の件はお前に一任するからそちらも上手く使うといい。父上には私から伝えておこう。」
「はい。ありがとうございます。」
そうしてアルバートは運命のサンディール王国に旅立ったのだった。
そう言ってテラスに出てきたのはこのカルスト国王太子であるマクミラン王子だった。
このカルスト国には絶世の美女と名高い王妃の美貌を受け継いだ三人の王子がいる。
宵闇の君こと第一王子のマクミラン、朝焼けの君こと第二王子ヘンドリック、そして月光の君こと第三王子のアルバートだ。
三人とも母から受け継いだ漆黒の髪を持つ美丈夫で、瞳の色はマクミランがオキニスのような黒、ヘンドリックがルビーのような赤、アルバートがエメラルドのような緑をしていた。
三人とも幼少から優秀でマクミランは内政をヘンドリックが経済をアルバートは外交を担ってこの山に囲まれた小国であるカルスト国を少しずつ改革し豊かに発展させてきた。
今年22歳となるアルバートは特に優秀で他国の海千山千の大使たちを相手取り、軽く手のひらで転がして自国に有利な条約をいくつも結んできたのだった。
そのアルバートがテラスで一人ため息をついているとなると一大事と侍従達から呼び出されてマクミランがやってきたのだ。
「兄上、、、まぁ月光の君と呼ばれているのだから少し月夜に出ているだけですよ。兄上こそこんな時間にどうしたんですか?」
「それは皆がお前を心配しているからだろうが。こんな時間に呼び出された私の気持ちも考えてはくれないか?」
アルバートの隣に立ったマクミランはほぼ同じ高さエメラルドの瞳を見つめた。
「お前が王子として以上にこの国の将来を見ているのは理解しているつもりだよ。何が問題なのかきちんと話してみなさい。」
兄の真剣味を帯びた視線を感じ普段めっきり見せなくなった末弟の甘えから自身の悩みを打ち明ける。
「兄上には敵いませんね。実は先日発掘された鉱山を有効に使う為に街道の整備が必要なのですが、それには隣国のサンディール王国の協力が必要不可欠です。ですが、、、彼の国は大国ですし、足元を見られてこちらの利にならないようなら新鉱山を秘匿した方が良いのではないかと思いまして、、、。そうすると我が国の発展が10年は遅れてしまいます。」
憂い顔に溜息をつくアルバートはある意味妖艶で兄であるマクミランでさえ一瞬息を止めた。
「お、お前らしくないではないか!今まで小国と馬鹿にしていた各国の大使達を丸め込み同等の条約を結び我が国の地位を引き上げたのは他ならぬおまえだぞ!グタグタ悩むなら早々にサンディール王国に行って確かめてくれば良いのだよ。最悪採掘権を取られても街道整備が叶えば御の字だと私は思うよ。」
「そうですね。彼の国の王は聡明で中々難しい交渉になるかもしれませんが、行ってみます。兄上に聞いて頂けてスッキリしました。」
アルバートはもう既に普段の不遜な微笑みを浮かべて伸びをした。
マクミランはいくつになっても末の弟は可愛いものだと笑みを深め最近入手したサンディール王国の内情を明かした。
「そう言えば、サンディール王国では今次期女王の王配選びが佳境らしい。上手く使えるかもしれないな。新鉱山の件はお前に一任するからそちらも上手く使うといい。父上には私から伝えておこう。」
「はい。ありがとうございます。」
そうしてアルバートは運命のサンディール王国に旅立ったのだった。
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